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    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

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    よーでる

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    猿の手+聖人の遺骸の部位いっぱい+龍の体をもいで雨乞いをした民話モチーフ。

    #おとぎ話
    fairy-tale
    ##単発ネタ

    □にあらず 昔々、あるところに■■という※の子がいました。
     ■■は神様でした。いえ、本当に。だって人の願いを叶える力があったんですから。そんなのきっと、神様でしょう?
     ■■は優しくて気前が良い※だったので、景気良くみんなの願いを叶えてやりました。

    「神様神様、どうか雨を降らせてください」「はいどうぞ」
    「神様神様、どうかこの子の病を癒してください」「よしきた」
    「神様神様、どうか憎いあいつを殺してください」「これでいい?」

     願いを叶えるには供物を捧げねばなりません。いえ捧げるのは■■の仕事です。■■が体の一部を大地に捧げれば、大地が願いを叶えてくれるのです。
     いつからそうだったかはわかりません。生まれたときから? それともその前から? 覚えていません。わかりません。今日も一房、■■は髪を大地に捧げます。
     けれど人の願いに限りはないのです。

    「神様神様、どうか願いを叶えてください」「いいよ。どんなお願い?」
    「神様神様、もっと願いを叶えてください」「うんうん、落ち着いて」
    「神様神様、出し惜しみしないでください」「いや、ちょっと」
    「神様神様、もっと、もっと」「やめて」

     ──が■■の髪の毛を千切ります。もっと願いを。
     ──が■■の歯を引っこ抜きます。もっと願いを。
     ──が■■の目玉をほじくり返します。もっと願いを。
     ■■はみんなの願いを叶えてやりました。引っこ抜かれた端から歯が生えます。髪が増えます。目玉があふれます。みんなに行き渡るくらいに。みんながお腹いっぱいになるまで。子々孫々に至るまで幸せになれるまで。

     最後に、■■はみんなにお願いをしました。「ねぇみんな、■■の願いを一つ、叶えてほしい」
     みんな気前よく頷きました。「ああいいよ。こんな気前よく叶えてくれたんだ。一つくらいお安い御用さ」
     ■■の髪の毛は、歯は、目玉は、耳は、足は、血は、肉は、指は、にっこり笑って願いました。

    「みんな、一人残らず、不幸になれ」

     これにておしまい、今は遠い昔の物語。
     願いの叶う聖人の骨肉を奪い合って滅びた国の、みんな忘れた物語。
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    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
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