「おやすみ、KK」
KKの頬に軽くキスをして僕は布団を頭まで引っ張り上げる。膝を丸め周りが闇に包まれると僕はようやく安心して眠りにつくことができる。
母さんが亡くなってからだろうか。泣いているのを麻里に気づかれないように堪えているうちに、この姿勢で寝るのが一番楽だということに気づいた。闇の中なら誰にも顔を見られない。誰に同情されることもない。
一度だけKKには窒息していないか心配された。こうしていないと寝れなくて、と伝えたら「…まぁ人それぞれだしな」と若干呆れたような声で返された。
たまに寝息を確認されている気配は感じてるけど。
ある寒い夜。お互いに肌を重ね、一通りキスをして眠りに就こうとするとKKが布団の中まで着いてきた。
やめて。顔を見ないで。
KKが僕を抱き寄せる。僕が体を固くしているとKKはなにも言わずに僕の頭を撫で始めた。一定のリズムに呼吸を合わせKKの体温を感じていると、気づけば僕の涙がシーツに大きな染みを作っていた。
堪らず声を上げてなく。子どものように泣きじゃくる僕をKKは何も言わずに撫で続けてくれた。
僕は一頻り泣き終えると少し恥ずかしくなった。ごめんKK。
「な~にがゴメンだ、お前みたいなガキは素直に甘えとけばいいんだよ」
ガキ扱いされて怒ろうか、笑おうかしたはずなのにおかしいな、また涙が溢れてくる。
「寒いぞ、こっち来い」
今はKKに背中を預けて眠る。こんなに落ち着いて眠れるのはいつぶりだろう。
しかしKKが常夜灯がないと眠れないタイプなのは知らなかった。眩しさに僕は布団で顔を隠す。「寝顔見せてくれてもいいんだぞ?」KKはそう言うけどさ、こんなに眩しくて眠れるわけがないじゃない…