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    yuno

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    yuno

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    #曦澄ワンドロワンライ の『蓮花』にて。曦澄と叔父甥。現パロ。二人はスケーターで、あーりんは5歳設定でじうじうと二人暮らし。蓮花が絡むので、せっかくだから冒頭の書き出しとワンライ練習を兼ねてみました。投稿外タイムだと気付かずすみません。。この時点では二人とも無自覚未満状態です。冒頭なので。
    スケートはゆるふわです、間違いとかあっても半目で見てください。

    #曦澄

    【曦澄】蓮花を描く「阿凌、これからいくつか滑るから、どれがこの花のように見えるか教えてくれるか?」
    「わかったー!」

    スマホ画面に映し出された蓮の花を覗き込み、金凌は任せて! と張り切って頷く。
    その頭を軽く撫でて、江澄はスケートリンクへと滑り出した。一度軽く周回し、足慣らしをしてからスピンへと入る。

    初めは両腕を胸の前に組み合わせ、徐々に頭上に上げていくアップライトスピン。そこから更に腕を大きく広げて回転する。アップライトの逆戻りだ。

    その次はレイバックスピン。大きく背を反らし両腕も伸ばす。手のひらを上にして、胸から腕がまっすぐの線になるように上体を維持しながら回転していく。

    最後はシットスピン。足を組み替えて二度繰り返す。
    いずれも回転速度を維持しつつ、如何に花が湖面に花開くように見えるかを意識して指先を伸ばしていく。

    「どうだった?」
    「あのねー、あーりん二つ目が好きー!」
    「そうか。やっぱりな」

    じゃあ蓮の再現にはレイバックを入れるかと頷いていると、可愛らしい振り付けコーチだねと声が掛かった。

    「藍渙」

    にこにこと笑みを浮かべて、リンクサイドから藍渙がこちらを見ていた。温情もいる。

    「ああ、もう約束の時間になっていたか。すまないな」
    「大丈夫だよ。私も来たばかりだから」

    よく言うわと後ろでこっそり温情がため息をつく。江澄のスピン練習を熱心に見つめていたくせに。
    だが、それ以上は言わないことにしたらしい。阿凌、こっちにいらっしゃいと手招く。

    「あーりん!」
    「あーゆえん!」

    歳の近い友達の姿に、金凌が嬉しそうに駆け寄っていく。

    「温情、阿凌を頼む」
    「はいはい、任されました。阿苑と一緒に遊んでてもらうわ」
    「ああ」

    アカデミーの専属トレーナーである温情に甥を預け、江澄はリンクに入ってくる藍渙の隣への滑り込む。
    合同練習を始めてから今日で三日目。彼のような落ち着きのある滑りを体得したく、種目違いの相手に付き合ってもらっている。

    江澄はシングル、藍渙はアイスダンスの現役スケーターだ。共に国内の上位選手である。特に藍渙はアイスダンスの男性スケーターナンバーワンの実力者だった。

    江澄も男子シングルの上位選手だが、残念ながらナンバーワンとは言えないのが現状だ。大会での優勝回数は魏嬰と藍湛のほうが多く、江澄は二位、三位に甘んじることが多い。シルバーコレクターかと揶揄されることも少なくなかった。

    技の一つ一つは丁寧だが、基本に忠実過ぎて今ひとつ情感に欠けるという弱みがあり、その改善として藍渙の滑りを見習わせてもらっているところである。

    「プログラムの振り付けには、阿凌にも意見を聞いているの?」

    並んで滑りながら他愛のない雑談をする。先ずは慣らしだ。

    「ああ。大会なら点を取りにいくが、ショーは客にウケる必要があるからな。見映え重視だ。子供の素直な意見は参考になる」

    大会用のプログラムは振付師が考えるが、これを入れたいなどの意見はもちろん言う。江澄が振付を頼んでいる懐桑はその辺も柔軟で、江澄がショーと両立しやすいよう事情を組んでくれていた。

    「ショーの回数が君はかなり多いんでしょう? 体力が持つのが凄いよ。こんなに細いのに身体が強いんだね」
    「そうでもない。俺の場合は生活がかかってるからな。稼がざるを得ないんだ」

    数をこなせば体力も勝手につく。ふんと鼻を鳴らす江澄に、それでも凄いよと藍渙は苦笑した。

    慣らしを終え、藍渙がそろそろ踊るよと江澄に手を差し伸べる。その手を取れば、にこりと微笑んだ藍渙がすっと身を寄せてリードするように滑り出した。

    アイスダンスは原則カップルが身体を寄せながら滑る。他の種目と異なり、ジャンプなどの大技が禁止されている代わりに滑りの技術が問われ、ルールも細かい。高度なテクニックが要求され、かつ情感の表現も求められる。

    技を決めることに意識が行き過ぎて情感が不足しがちな自覚のある江澄としては、藍渙の滑りには学ぶべきところが大いにあった。

    「貴方のスケートはスピードを出しても落ち着いているな。ゆったりしている」
    「女性をリードするからね」
    「それに、ゆっくり大きく手足を動かして柔らかく見せるのが上手い。筋肉の使い方が上手いのか?」
    「貴方のスケートもしなやかで綺麗ですよ」

    ふふと微笑む、その表情も優雅だ。これは性格の違いか? と江澄は内心でごちる。せっかちの自覚もあるので、筋トレよりもまずはそこからかもしれない。
    ううむと考え込みながらリードに合わせて滑る江澄を、真面目な人だなと藍渙は微笑ましく見つめていた。

    江澄はシングル一本できたので、誰かと合わせて滑るのは不得手だ。
    貴方の滑りを参考にさせて欲しいと藍渙に申し入れた時、では合わせて一緒に滑ってみましょうと返されてしまい、それは危険ではと慌てた。動きが合わず、うっかり怪我をさせてしまっては大変からだ。

    だが、さすがはナンバーワンなのか、藍渙のリードは上手かった。無理に踊らせようとはせず、緩やかに導いていく。演技ではないので当然かもしれないが、無理なく並走できるのも安心できた。三日目ともなれば軽いステップやエッジワークも話しながらできるようになった。
    おかげで彼の表情や手足の動かし方をガン見する余裕が持てている。こんな間近で見られるなど早々できることではない。藍渙も現役選手であり、自身の練習もあるので、あまり長く付き合わせるわけにもいかない。早くコツを掴まなければと江澄は大真面目に彼の一挙一動を観察していた。

    「焦らないでください。ゆっくり見ていただいて構いませんから」
    「しかし、貴方の練習もあるだろう?」
    「大丈夫です。最初にお話ししたように、私は今少々スランプ気味でして。貴方とこうして滑っていると、初心を確認できて良かったと思っているんです」


    ***


    江澄に告げた通り、藍渙は今スランプに陥っていた。カップルもいったん解消している。
    原因は技術的なものではなく、メンタル的なものだ。

    男女関係のトラブル、とでも言うのだろうか。アイスダンスはカップルと言われるとおり、選手たちも恋人や夫婦であることが多い。始めはそうではなくても滑っているうちに恋人になったりもする。

    だが、藍渙はあくまでカップルは演技中のことであり、パートナーと実生活でも深く関わろうとはしなかった。
    一線を引いている藍渙とは対照的に、パートナーとなった女性スケーターは彼に熱を上げることが多く、気持ちが噛み合わずに続かなくなり解消する。そんなことを繰り返していた。

    どうして私を愛してくれないの?
    パートナーたちは皆そうやって藍渙を責め、嘆き、去っていく。彼なりに演技中は恋人のつもりで踊るのだが、あくまで演技としての恋人だ。それ以上に思うことは出来なかった。

    だが、同じ理由でカップルの解消を繰り返すうち、自分はどこかおかしいのだろうか、彼女たちを実生活でも愛せるようにならねばならないのだろうかと思い詰めてしまい、モチベーションを落としていた、そんな折だったのだ。江澄に声を掛けられたのは。

    貴方のように情感溢れる滑りができるようになりたい。どうやっているのか教えてくれ。

    悔しそうな顔で、けれど真っ直ぐな言葉で問われ、自分の演技を見てくれているのだと嬉しくなった。
    自分のスケートが、演技が求められていることに塞ぎ込んでいた気持ちが晴れる思いがして、一も二もなく藍渙は江澄の申し入れに頷いていた。

    江澄のことはもちろん知っていた。基本を大切にし、一つ一つを丁寧にこなしていく滑りは真摯な印象を受ける。しなやかでキレのあるジャンプも好きだ。何より、彼はステップがとてもいい。
    自分にはない、繊細さが好きだった。

    その彼が柔らかな花を演じようとしている。新しいチャレンジだ。自分の踊りが彼の演技に組み入れられるのかと思うと、藍渙としては胸の高鳴る思いがするのだった。
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    DOODLE曦澄/訪来、曦臣閉関明け、蓮花塢にて
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    takami180

    PROGRESS長編曦澄その9
    スーパー無自覚兄上2
     その日、寒室の飾り棚には竜胆が生けてあった。小さな黒灰の器に、紫の花弁を寄せ合っている。
     藍忘機はそれを横目にして、藍曦臣の向かいに座った。
    「お待たせいたしました、兄上」
    「いいや、大丈夫だよ」
     今日は二人で清談会の打ち合わせである。
     藍曦臣が閉関を解いてから初めての清談会となる。藍曦臣自ら挨拶をするべき宗主、あちらから話しかけてくるのを待った方がいい世家、細々と確認していけばあっという間に時間は過ぎる。
    「こんなものでしょうかね」
    「はい」
    「ふふ」
     藍曦臣は堪えきれずに笑みをこぼした。藍忘機が首を傾げる。
    「実はね、忘機。三日後に江宗主が泊まりにきてくれるんだよ」
     それは今朝届いた文だった。
     ——次の清談会について打ち合わせるので、明日より数日金鱗台に滞在する。その帰りに雲深不知処に寄る。一晩、泊まらせてくれ。五日後だ。
     江澄からの文はいつもそっけない。今回は特に短い。しかしながら、その内容は今までで一番嬉しい。
     会ったときにはまた叱られるのかもしれない。あなたは何度指摘すれば覚えてくれるのか、と目を三角にする江澄は容易に想像ができた。
    「友が、会いにきてくれる 2893