黒ヒュ×ダ妄想を文にしてみた(また新月の夜が来る……)
ダイは茜色から群青色へと変わりつつある空を見上げると、溜息をついた。……きっとまた「彼」が現れる、そう思いながら。
夜の帳が下りて数刻。もう皆もそろそろ寝静まろうかという頃合いに、ダイはヒュンケルの部屋を訪れた。いつもであれば、まだ子供であるダイならばとっくに眠りについている時間。他の者に見つからぬよう、ダイはこっそりと向かう。
ほとほとと目的の扉を叩くと、すぐに扉が開かれる。部屋の主ヒュンケルは、訪ねて来たのがダイと分かると、ダイの腕を掴んで部屋に引き入れた。
いつもの彼らしくないその仕草に、ダイは確信する。目の前にいるのは「彼」なのだと。
「……来たな」
口の端を持ち上げながら、「彼」は言う。ダイを見下ろすその目には穏やかな慈しみの光はなく、代わりにぎらりとした劣情が浮かんでいた。そんな目で見つめられると、ダイの鼓動は否が応でも早まるのだ。
恋人であるヒュンケルの、彼自身ですら知らない秘密を知ってしまったのは、数カ月前の新月の晩だった。
部屋を訪れ、いつものように身体をぴったりと擦り寄せると、彼は怪訝な表情を浮かべた。「どうかしたの」と尋ねたダイに、暫し遅れて「……いや」と返答した後、彼はダイの身体を抱き寄せ、首筋に顔を埋める。
(違う……! ヒュンケルじゃない……!)
そう直感で悟ったダイは、慌ててヒュンケルから離れる。
「だ、誰……?」
そう呟いたダイも、その言葉に戸惑いを隠せずにいた。目の前にいるのは、誰かがモシャスした姿などではなく、間違いなく彼の兄弟子であり恋人のヒュンケルだ。従って「誰?」という言葉は本来ならば相応しくない。だがしかし、ダイの知る、いつものヒュンケルとは何かが違う。
警戒するダイに、ヒュンケルは説明した。今の「彼」は、心の奥底に眠る暗黒闘気が表に現れた、いわば別人格のようなものだ、と。
「暗黒闘気」という言葉に警戒を強めたダイだったが、魔王軍に戻るつもりも、特段何かをするつもりもないという「彼」の話を聞き、力を抜いた。悪事を働くつもりがないと分かれば、ダイにとっては、「彼」もまたヒュンケルで。話し相手になってくれと言った「彼」の言葉に、素直に応じたのだった。
そうして新月の晩、ダイともう一人のヒュンケルは何度か逢瀬を交わした。
恋人なのだと名乗った訳ではないものの、ダイのような幼い子供が夜半に、年の離れたヒュンケルの元をわざわざ訪れる意味を、そして初対面で見せたダイの甘えた所作を、「彼」は正確に読み取った。
ダイの、ヒュンケルに対する思慕を理解した上で、「彼」はヒュンケルとは違った手つきでダイを撫でる。ヒュンケルがダイのことを愛おしげに、そっと撫でるのに対し、「彼」は大胆に、また明らかな意図を持ってダイに触れる。……ダイが、拒否しないと分かっていて、だ。
「これではまるで浮気だ」とダイは頭の片隅で思いながら、それでもこのもう一人のヒュンケルもヒュンケルには違いないのだから、とも思う。
そして今夜も、恋人のヒュンケルには何も知らせないまま、ダイは「もう一人のヒュンケル」に会いに来てしまうのだった。
「そんなにオレに会いたかったのか?ダイ」
するり、と首筋に手を這わされ、ダイはびくりと肩を竦ませた。
「そういう訳じゃないけど……ヒュ、ヒュンケルはヒュンケル、だし……」
ダイの、答えにならない答えに、目の前にいるヒュンケルはくすりと笑う。
「フ。その様子だと、普段余り構ってもらっていないようだな?」
揶揄うような彼の言葉に、ダイは羞恥に頬を染めた。
「ちっ、違うってば! あ……っ!」
再び首筋をつつとなぞられた後、くいと顎を掬われる。直後近づいてきた「彼」の唇に、反射的に瞼を閉じた。
ちゅ、と音を立てて吸われたかと思うと、ぺろりとその舌がダイの唇を舐める。驚いて薄く開いた隙間から、ぬるりとしたものが侵入してきた。歯列を割られ、口内を探られる感覚に、ダイが身を震わせる。ダイの小さな口の中を好き勝手に弄んだそれは、最後にダイの下唇を食んでから離れていった。
「ふ……んぅ……は……ぁ」
ヒュンケルとのキスは、ダイの負担とならないように、まるで小鳥の啄みのようなものばかりだった。でも目の前の「ヒュンケル」とのキスは、荒々しく、ダイのすべてを奪い去ろうとするような激しいもので、唇が解放された後決まってダイは頭がくらくらする。
キスに酔い、潤んだ瞳で見上げるダイの身体を、「ヒュンケル」はベッドに押し倒す。
「……!! 待って! ヒュンケル……ッ!」
慌ててダイが押しとどめるも、「彼」はダイの上に覆い被さったままだ。
「『オレ』じゃ不満なのか?」
「そうじゃない、けど……でも、おれは、ヒュンケルのものなんだから……。こんなことしちゃダメだよ……」
真っ赤になって俯きながらもそう告げるダイに、「彼」はくつくつと笑った。
「ダイ、お前は可愛いことを言うな」
そう言ってもう一度顔を近づけてきた「彼」は、ダイの耳元で囁く。
「『ヒュンケルはヒュンケルだ』、そう言ったのはおまえだろう?」
「…………っっ!!」
「……オレのものになれ、ダイ」
「ヒュンケル」の言葉に、ダイは唇を噛む。「ヒュンケル」は狡い。そうやって、ダイがヒュンケルに望む言葉を、態度を、行為を、「彼」は躊躇いなく与えてくるのだ。
「ダ……メ……!」
「何故だ?」
「そ、れは……」
ダイの好きなヒュンケルではないから。でもその理由は、「彼」もまたヒュンケルであるという自らの言葉と矛盾する。
何も返せず押し黙るダイに、「ヒュンケル」は更に詰め寄る。いつの間にか、「彼」の髪はダイと同じ漆黒に変わっていた。
「ダイ、おまえが望むものをオレは与えてやろう。もう一度言う。……オレのものになるんだ、ダイ」
何かを呟こうとするダイの唇は、再びヒュンケルの唇に塞がれた。
終
この後どうなるのか、それは私にも分からない\(^o^)/
1.黒ヒュ×ダのえちち展開
2.白ヒュ×ダに戻ってえちちなし甘々展開
3.黒ヒュ×ダからの白ヒュ×ダになるえちち展開
4.夢オチ
他の美味しい展開があれば教えてください……。