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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    フェンヴァル🐺🦇【1031】お菓子が欲しい、悪戯もしたい。それじゃ、ダメ?

    #ディスガイア4
    disgaea4
    #フェンヴァル
    fenval
    #執事閣下
    deacon

    【1031】 体内の空気を一新させるように、ふう、と息を吐く。ただ深呼吸をするはずが思っていたよりも遥かに大きな溜息となって出て、人知れず苦笑いする。疲労感に苛まれるだけならまだしも、仕事の進みが芳しくなかったのは教育係としていただけない。進捗が今ひとつだった理由は明確で、日中執務室を訪れる者が多く、都度デスクワークに水を差されたためだと分かっていた。
     仕事はまだ片付きそうにない。せめて伸びのひとつでもしようかとおもむろにデスクから視線を上げる。そこにはいつの間にか仕事の手を止め、手の平を差し出し、何らかを要求する執事の姿があった。今日幾度も見た光景。その仕草に心当たりはあったが一応とぼけて首を傾げて見せる。

    「トリックオアトリート、です」
    「……まさかお前の口からそんな言葉が飛び出すとはな。小娘たちに感化されたか?」

     日中菓子をねだって地獄を練り歩き、この部屋においても執務妨害の限りを尽くした姉妹の姿をヴァルバトーゼは思い起こす。最終的には根負けしたフェンリッヒが渋々プリニーにスイーツを手配させ、それを受け取り、二人して満足げな表情で帰って行ったのは記憶に新しい。げんこつか小言のひとつでも落としてやりたいところであったが、なり損ないのプリニーもこの魔界に真っ当に馴染んだのだと思えばどこか憎めず、肩をすくめ見逃してやる他なかった。(フェンリッヒはその後もぶつくさと文句を垂れ、大いに不服そうであったが)

     そう、つい先刻まではフェンリッヒも「ハロウィン」とやらの浮かれようをいなす側だったのだ。だのに、この状況はなんだ。短時間にしてどんな心境の変化だというのか。

    「ええ、今日この日というだけで要求が正当化されるならば……使えるものは使おうと思い立ちまして」

     にこり悪びれもせず笑う狼男。フーカたちの我儘勝手を許してやったことに妬いているのだろうか。或いはアルティナから菓子を受け取ったことが原因か? それとも人間界の風習を懐かしむプリニーたちにこっそりイワシをやったのがバレていたのか。シモベ心は実に難しい。
     しかし、この程度で怯むような俺ではない。ひとつからかってやろうと心に決めて、ほくそ笑む。この男は砂糖菓子を俺が隠し持っていることなど、知る由もない。

    「クク、お前らしくもない。菓子か悪戯かどちらかひとつ選ばせる、その発想が実に人間じみている。……それとも、人間界の呪文を盾にしなければ何かをねだることも出来んか?」
    「試すような言い方をなさいますね。あなた様には『トリック』以外選択の余地はないはずですが? ……悪戯を仕掛けられるお覚悟は宜しいですか?」
    「あいにく俺は菓子を持っていてな」

     デスクの引き出しから透明な包み紙にキラキラと光るキャンディーを取り出して見せる。驚いた顔でオレンジの砂糖菓子を見つめる執事。

    「な、散々菓子をせがまれても『そんなものはない』と求められてもいないイワシばかり渡しておられたではありませんか!?」

     話が違うと後ずさるフェンリッヒ。それはまあ、そうだろう。この飴玉は今日の終わりにこの男に渡そうと取っておいたものなのだから。

    「さて、どちらを選んでやろうな? お前が本当に欲しいのはこの飴玉か? それとも」

     どうする? そう、赤い瞳で迫る。たじろぐフェンリッヒの様子に心が小さく充たされる。正解を探し泳ぐ視線があんまりにもおかしくて、しばらく目の前のシモベを何も言わず、ただ眺めた。見詰められる従者はといえばいよいよ返す言葉に詰まり、下を向いて顔を赤らめるばかりである。

    「欲しい、です」
    「はっきりせんな。トリックオアトリート、どちらがお前の望みなのだ?」
    「……」

     どうにもこうにもこれ以上の返事は見込めないらしい。やれやれと溜息を吐いて、その臆病を許すことにする。
     指先でプラスチックの包装紙をほどく。剥き出しになったキャンディーを自身の口に放り込む。そしてべっ、と舌を見せ笑い掛ける。フェンリッヒは呆気に取られ、ただ俺の舌の上、オレンジの砂糖菓子を見つめていた。

    「悪魔なら、どちらも奪い取るが良い」

     控えめに触れた唇に柑橘の味が少しずつ、移っていく。
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    BLANK【5/24 キスを超える日】ほんのり執事閣下【524】



     かつてキスをせがまれたことがあった。驚くべきことに、吸血対象の人間の女からだ。勿論、そんなものに応えてやる義理はなかったが、その時の俺は気まぐれに問うたのだ。悪魔にそれを求めるにあたり、対価にお前は何を差し出すのだと。
     女は恍惚の表情で、「この身を」だの「あなたに快楽を」だのと宣った。この人間には畏れが足りぬと、胸元に下がる宝石の飾りで首を絞めたが尚も女は欲に滲んだ瞳で俺を見、苦しそうに笑っていた。女が気を失ったのを確認すると、今しがた吸った血を吐き出して、別の人間の血を求め街の闇夜に身を隠したのを良く覚えている。
     気持ちが悪い。そう、思っていたのだが。
     ──今ならあの濡れた瞳の意味がほんの少しは分かるような気がする。

    「閣下、私とのキスはそんなに退屈ですか」
    「すまん、少しばかり昔のことを思い出していた」
    「……そうですか」

     それ以上は聞きたくないと言うようにフェンリッヒの手が俺の口を塞ぐ。存外にごつく、大きい手だと思う。その指で確かめるよう唇をなぞり、そして再び俺に口付けた。ただ触れるだけのキスは不思議と心地が良かった。体液を交わすような魔力供給をし 749

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

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    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

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    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

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    DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html
    呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】



     抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
     深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。

     棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
     あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
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    CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
    「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html
    俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】



     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
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