のまれるな◇◆──────────
二人とも、もうお酒が飲める歳になっちゃったんだね。
オレ何度も誘ってたのに、全然サシでご飯行ってくんないから、実は嫌われてるのかと思った。ああ、今は思ってないよん、わかってるって。
改めて、いつも脚本ありがとね。最初こそデザイン担当だけのつもりだったけど、オレも劇団員になってよかった。つづるんの書いた物語を演じられるのが、楽しいし幸せ。
夏組のみんなとも、仲良くなれてよかった。年下の子が多いけど、本当にいい子たちばかりでさ…………知ってるか。あはは…
春組はさ、年齢の幅が広いから、ほんとの家族みたいだよね。この間も旅行行ってたし。大人のひとがいると、外出の幅が広がっていいよね。
え? オレたちも大人? まあそうだけど、なんか違わない?お酒が飲めるってこと以外は全然あの人たちみたいになれてない気がする。ちょっとしか歳が離れてないはずなのに、なんでだろう。
オレさ、劇団の中で、つづる…んの一番身近なお兄さんでいるつもりだったんだけど、至さ、いたるんとか、チカちょんの方が、よっぽどつづるんのお兄さんみたい。ロンロンも、普段はあんな感じだけど、お兄ちゃんぽいよね。
ま…すみ…くんも、咲也くんも、つづ…る…くんのこと、慕ってて、微笑ましいなあ。この間つづるんに差し入れてたココア、まっすーが手鍋で作ってたんだよ。知らなかったでしょ。
真澄くん、恥ずかしがり屋さんだけど、綴くんのこと、心配してるんだよ。あんまり厳しくしすぎないでね。
春組だけじゃなくて、劇団のみんなの人気者だよね、綴くんは。入る前から知り合いだったのはオレだけなのに、最近はあんまり、特別仲良しって感じがしなくて、オレ…………
たまには、オレとも…………
ごめん、変なこと言ったね。なんか、あんまり頭が回らなくなってきたかも…………
綴くん。綴。いい名前だね。
オレのこと、覚えててくれて、ありがとう。また会えてよかったって、思ってるよ。
劇団のみんなのことも、おうちの家族のことも、大切にしてるところ、尊敬してるし、大好きだよ。みんなに優しいところも。
でも、でもね、オレ、綴と、一番仲良しに、なりたいなあ…………
ごめん…………眠いかも……………………。
「…………飲みすぎっすよ、三好さん」
三好さんは、テーブルに突っ伏して目を閉じてしまった。五杯目あたりで止めておけばよかったのだろうが、もう手遅れだ。閉店時刻まではもう少しあるから、少し寝かせておこうと思う。
その間、俺は少し、三好さんの言ったことの意味を考えよう。
次に目を覚ましたら、この人は何も覚えていないだろうけど。
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