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    sangatu_tt5

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    🧲ハピバ終わらない無理

    #探占
    divination

    「ねぇ、今日泊まってもいいかい?」

     平日の木曜日。
     突然訪ねてきたこの男はこう言い出した。
     シャーっと流れる水の音。カチャカチャと食器のぶつかる音。手に持っていた平皿から目を離し、炬燵で丸まる恋人を一瞬見る。
     不思議なアザが浮いた顔には宝石のように美しい青空の瞳。その瞳がきらきらと宝物を見つけた子どものように輝いている。
     テーブルの上にはテキストとノートが広がっており今の今まで勉強していたのが分かった。食事が終わってからすぐに広げだした課題たちは今終わったのか、はたまた飽きがきてほおり出されたのか……。
     ダメ? ともう一度こちらに目を向けてくる恋人に可愛らしいなと庇護欲が湧く。

     「課題終わったの?」
     「うん、終わったよ」
     「明日大学あるよね、イライ」

     彼の目がメガネの下で一瞬揺らいだ。
     きょろりと泳いで、虚空をさまよったまま、彼は自分の耳たぶを軽く握る。
     イライが嘘をつく時の合図。周りからもよく言われてるのか握った後にバツの悪そうな顔をして、イライはへらりと笑った。

     「午後からだよ」
     「うそ。前、金曜は丸一日だって言っていたでしょう」
     「うぅ……」

     イライの身体がだんだんこたつ布団の中に沈んでいく。相も変わらず、嘘が下手だなぁと感心してしまう。
     頬がゆるんでいる事がバレないように、彼に背を向け、食器に付いた泡を落とす。

     「まだ電車あるでしょ。僕の家から大学ちょっと遠いんだから帰りなよ」
     「服もここに置いてある分で大丈夫だし、明日の授業の分のテキストはあるから、ダメ?」
     「ダメ。帰って、自分の布団でゆっくり寝なよ。朝、わざわざ家に寄って、フクロウに餌をあげるつもり?」
     「彼女の分の餌は多めに出てきたから大丈夫。君のベッド二人で寝ても狭くないじゃないか」

     語調がだんだん強くなっていく。食器を棚に片付けながら、彼を盗み見れば頬をふくらませて拗ねたような表情を浮かべている。
     遊びざかりの大学生にしては落ち着いているイライはいつも実年齢より年上に思われることが多い。温和な笑みを浮かべて、一歩後ろで周りを楽しそうに見ている。
     実際、僕も出会った当初彼が高校の制服を着ていなかったら勘違いしていただろう。落ち着きのないウィルと共にいる時などどっちが年上か分からないぐらいだった。
     そんな彼が少し年相応に見える。ぷぅとふくらんだ頬に、突き出された唇。不満そうにこちらを睨む瞳は不満に満ちている。
     腹を抱えて笑いたくなるほど珍しい表情だった。

     「狭い、狭くないじゃなくて、一緒に寝たら僕は手を出すよ」

     いいの? と聞きながら、彼の隣に座り、こたつへと足を入れる。ふくらんだ頬を潰すように、柔らかい頬をささくれの出来た指で掴んで潰す。
     ふすっとイライの口から空気の抜ける音がした。思わず、ふふっと口から笑いが漏れてしまう。両頬を掴んだまま、肩を揺らして笑っていれば、イライは僕の腕を掴み、するりと頬を寄せる。

     「……い、いいよ」

     頬を林檎のように赤く染め、潤んだ青い瞳でこちらを見上げてきた。一瞬が異常に長く感じて、イライの言葉の意味が理解出来ず、脳がそれを反芻する。
     はっ、と自分の口からよく分からない音が零れた。イライの手がかたかたと小さく震えているのを感じて、やっと言葉の意味が脳の奥へと染み込んでいく。
     彼がこんな反応するのは初めてだった。いつもこんな可愛らしいことなどせず、「嫌だ」「恥ずかしい」と拒否するか、何か言いたげに無言でこちらを見てくるだけなのにその反応はなんだ。自分の顔に熱が集まってくるのを感じ、身体が火照ったように熱い。
     イライが付けていた動物番組のナレーションが「可愛いですね〜」と言っているのが耳障りだった。

     「だ、抱いてもいいよ……!」

     もう一度イライがそう言う。
     ぐらりと誘惑につられそうになる。可愛い恋人が可愛らしく抱いてもいいと言ってきて、嬉しくない男も元気にならない男もいない。腰がずくりと重くなるのを感じ、心臓が高鳴る。
     今までなら恋人が拒否しても流して抱いていたし、こんなことを言われればラッキーと思って抱く。今すぐにだって抱き潰して、イライの乱れる姿を見たい。
     上目遣いでこちらを見てくるイライに対して、喉がはくりと動いた。

     「だ、ダメ! 明日大学ならダメだよ。抱かないし、イライは家に帰る。親の金で通わせてもらっているのだからしっかりと行きなよ」
     「なっ……! なんでさ!」
     「なんでもクソもないよ。家に、帰るの!」

     下がっていたイライの眉がくうっと上がって、僕を睨みつける。僕の手を握って、泊まりたいと言ってくる姿に心が揺らぐのを、必死に頭を振って拒否を示す。
     しっかりと大学に通いなさいなど僕が言えたことではない。自分が大学生の頃など最低限単位が取れるぐらいに通っては、バイトばかりの生活だった。バイトして、当時の彼女の所に通って、時折大学に行く。そんな暮らし。
     その頃を知るウィルやナワーブが今の僕の台詞を聞けば、目を剥いて、「お前が言うな!」と怒っていただろう。緩かったとはいえ、よく大学を卒業できたと今でも思うが、イライにはそんなことをして欲しくはなかった。

     「今帰っても家に着くのは深夜だよ! それなら君の家で寝た方が絶対に長く寝れる」
     「それならバイクで送るから」
     「なんでそんなに帰らせたいのさ!」
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    MEMOこいぬちゃんぐさんの月蝕の元ネタだったやつ
    血族に売り飛ばされた🔮のるろ月(探占)
    売られてなどいない。自分で来たのだと言い聞かせる。
    愛しいあの子よりも自分が犠牲になる方がマシだと脳の中で繰り返す。

    🔮の住む集落の近くには血族の住まう森があった。不干渉。互いに見て見ぬふりをすることで薄氷の上を歩くような危うい均衡を保っていた。
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    血族の要求は簡単だった。村の中から誰でもいい。男でも女でも構わない。ただ、若者の方が良いが、生贄を出せ。
    身体を作り替えて、餌として飼う。
    もし出さないようであれば、ここに住まうものを皆殺す。
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    娘を出す訳には行かない父親は、娘の恋人に白羽を立てた。
    親族のいない🔮は都合が良かったのだ。誰もが同意し、🔮は着たことのないほど豪奢な、まるで花嫁衣装のような白い服を着せられ、追い出された。
    血族の餌になる恐怖と見捨てられた悲しみ。🔮は震える手を祈るように握りしめて、古く草臥れた館の中に入る。
    🔮「…ご、めん下さい。要求の通り、参りました。」
    震える声で呼びかけるが、しんっと 1738

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    MOURNING土竜とやこうふくろうの探占「……! ノー、」
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    「……」
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    力ない声が唇から溢れ落ちる。薄暗い廊下の果て、それは誰に届くこともなく静かに消えて見えなくなった。
    ***
    「……嗚呼、もうこんな時間か」
    ふっと沈んでいた意識が浮上する。まさか自分ともあろうものが意識を飛ばしていたとは。知らずのうちに無理をしていたのかもしれない。残りは明日でも構わないだろう。暖炉の火もほとんど勢いをなくしてすっかり冷 1029

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    PASTSS再掲。優しい探占。ゆらゆらと頼りなく揺れていた蝋燭の明かりが今まさに消えようしていた夜更け過ぎのことだ。
    今日も今日とて試合に引っ張りだこで疲れ切っているというのにも関わらず、暫く前から部屋の前で立ち尽くす気配にノートンは堪らず声を掛けた。
    「誰」
    「……ノートン」
    「……イライさん?」
    苛立ちを露わにした声に返ってきたのはなんとも弱々しい呼び声で。その声に毒気の抜かれたノートンは、チェアから腰を上げると扉の向こうをじっと見つめる。いまだに開けることを躊躇っているのか。それでも開かれる気配のない扉に、ノートンは先程よりも幾らか柔らかい口調で声を掛ける。
    「いいよ、入って」
    その声を受けてがちゃりと開かれた扉の先にいたのはイライだった。自室へと置いてきたのだろうか、いつもの定位置であろう場所に相棒の姿はなく、どうやら身一つで此処へとやってきたようだ。
    (それにしても、なんというか)
    明かりもすっかり消えてしまって月明かりしか照らすものがないとはいえ、その顔色は酷く頼りない。ふらりふらりと部屋へ踏み入るその足取りさえも思わず心配になるほどに覚束なかった。堪らずこちらに辿り着く前にその腕を引いてすっぽりと身体 1918

    kawauso_gtgt

    PROGRESS下書き。書き初め探占。hmhjmないで初詣に行くゆらゆら、とぷん。
    薄暗い水底に沈んでいた意識がゆっくりと引き上げられる。うっすらと重たい目蓋を開けるとぼやけた視界に己を起こそうと躍起になっている同居人の姿が映った。
    嗚呼、どうやら自分は炬燵で眠ってしまっていたようだ。
    寝落ち特有の気怠さからノートンはもう一度卓に頭を突っ伏す。少しだけ首を動かし腕の隙間から覗いた先には几帳面に積み上げられたみかんの山と、その隣に転がる中途半端に皮の剥かれたはぐれものが一つ。
    その隣に並んだ度数の割に飲みやすい! とCMで最近よく見かける缶チューハイの空き缶を眺めながら、ノートンは自身が寝落ちる前の記憶を思い返していた。
    そういえば、寝落ちる前に食べようとしたんだっけ。
    ぼんやりと右往左往していると思考を引き戻すように、同居人──兼恋人であるイライ・クラークは再度ノートンの腕を掴んで小さく身体を揺すった。
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    「……眠いから嫌」
    「炬燵で寝るのは身体に良くないよ。それに外を見て、雪だよ。ほら」
    「うわ、最悪……」
    思わず本音が溢れてしまったのは仕方のないことだろう。
    イライが指差した窓の外ではしんしんと降り積もる白い雪。眠 2534

    sangatu_tt5

    MEMO死神✂️と冬コミ現パロ🔮のリ占小さい頃から不思議なものが見える🔮。
    幼なじみである💍に黒い影がずっと取り憑いているのを見かける。薄い黒いモヤだったそれは段々と人の形に近くなっていく。随分と昔に死期の近かった祖母の近くで見たアレにそっくりな黒い影を🔮はすぐに死神だと理解した。
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    そう懇願すれば、黒い影は輪郭がハッキリとしていく。首を真上まで上げて見上げないとその死神の顔は見えない。表情の分からない死神を🔮が震える唇を噛み締めながら見上げていれば、死神の手が🔮の頬に触れる。
    尖った爪が🔮の頬に当たりながら、青い目を大きく見開かされた。
    ✂️「私が見えるだけでも珍しいのに……。これはこれは稀有な目をお持ちですね。本当に何でもするんですか?」
    🔮「……何でもする」
    ✂️「私は魂を食べないと生きていけないんですよ。このレディの代わりに貴方を頂いても?」
    🔮「僕の命で彼女が助かるなら……、構わないよ」
    震える身体で睨みつけてくる🔮に✂️ 969

    sangatu_tt5

    MEMO失顔症の✂️と🔮のリ占✂️は人の顔が認識できない。それは画家が出来なかったのではなく✂️が主人格になると出来なくなる。鯖もハンターも服装で認識しており新衣装などが増える度に必死でインプットする
    🔮も🤕と目隠し布がなければ見分けがつかない時がある程だった。
    しかし、ある月の綺麗な日から🔮と満月の夜に酒を飲むことになった。初めはただの興味と場の流れで呑んでいたが段々とこの日が来るのが楽しみになり、🔮と会い話すことを心待ちにするようになった。
    白🌂から貰った酒が強かったためか✂️は🔮への恋心にも満たない感情を漏らす。
    男同士、婚約者もいる男、しかも互いの顔すら知らないのにと✂️は断られ、二度と酒を酌み交わせないと嘆くが、🔮の返事はYesだった。✂️は有頂天になり、いつもよりも鼻歌を多く歌いながらハンター居住区と鯖居住区の境になる湖まで散歩をすれば、紺の服を着た茶色い短髪の男が水浴びをしていた。暑そうな服をたくし上げ、脚だけいれ、水をパシャパシャと飛ばしながら楽しそうに笑っている。
    初めて✂️は他人の顔を認識した。
    凛々しい眉にサファイアのような青く輝く力強い瞳が魅力的だった。胸が高鳴り、赤い実が 2129