※11/16残さずキレイに召し上がれ「いつもごはん作ってくれるけど、どこかで習ったりしてたの?」
ある晩、食事をしながらメフィスト様が尋ねられた。私はサラダのおかわりをよそいながら頷く。
「学校でSD講座を受けたときの必修科目に入ってました。ハウスキーピング全般と料理と護衛等ですね」
「そうなんだ。いつもおいしいごはんが出てくるのって嬉しいよね」
「お口に合って何よりです」
サラダの皿を差し出すとメフィスト様は受け取ってからちょっと口籠った。
「でも、一つ足りないかな」
「なにか、お気に召しませんでしたか?」
「うん」
まじか。結構ショックだ。料理の科目はかなり好成績だったし、メフィスト様の食材と味の好き嫌いもかなり気にしつつ彩りやバランスやら、めちゃくちゃ考えて用意していたのに、不足がある!
「教えていただきたく」
「一人で食べるのは寂しいから一緒に食べてよ」
「んえ」
ちょっと思ってたのと違う答えが返ってきて変な声が出てしまった。一人で食べるのが寂しい?
「だって、二人きりなんだよ。二人しかいないのに別々に食べることないでしょ」
それに、とメフィスト様はニコーっと笑った。これはあれだ。ろくでもないことをお考えのときの笑顔だ。
「悪魔の本質は糧を喰らう瞬間にこそ出るものさ。俺に、君の欲を見せて」
どういう口説き文句なんだろう。よくわからないけど、めちゃくちゃにえっちな口説き方では?
「承知致しました。明日の朝からご一緒させていただきます」
「うん。食べさせてあげるね♡」
「んん?」
「楽しみだなあ」
なにが!? なにがなんですか??? 私が目を白黒させている間にメフィスト様はごちそうさまと言って立ち上がる。
「えと、お粗末様でした……」
キレイに平らげられた皿を片付けて明日の朝の仕込みを行う。食にその悪魔の本質が現れると言うのなら、このキレイに平らげられた皿はなんの現れなんだろうか。
「……平らげられてしまうのか?」
ありそうで嫌だな。