※11/20可愛いあの娘を飾り立てる 13冠の初仕事は治める地域の視察で、何ヶ所か毎にバベルに結果の報告に行く必要がある。俺、メフィストも何度か報告に行っていて今日もそのためにバベルにて報告を済ませた。
いつもならかわいいかわいい見習い秘書を連れているのだけど、今日は別の仕事を頼んでいるので俺は一人でバベル内を歩いている。
報告を終えたし可愛い子が家で一人で待っているのでさっさと帰ろうと急いでいたら呼び止められた。
「よう、メフィスト。今日はあいつは連れてねえのか」
「どうも、バール様。今日はお留守番してますよ」
「そうかよ。じゃあこれ渡しとけ。お前は知らないかもしれねえけど、 あいつの好物だから」
マウントを取りつつバール氏は紙袋を寄越す。中身は確かに彼女の好きそうな菓子がたくさん入っていた。
「俺の秘書を気遣っていただきありがとうございます、バール様」
俺の、に力を入れて礼を言って立ち去る。
次に俺を呼び止めたのはアムリリス様だった。
「今日は可愛らしい秘書ちゃんは連れていないのね? ではこれを渡しておいてくださる? 先日約束した品なのだけど」
そう言って渡されたのはブランドものの紙袋で、中身はハンドクリームだそうだ。アムリリス様は俺の耳に顔を寄せてこそっと言った。
「殿方をその気にさせることで人気の品なの。塗ってあげるとよろしくてよ」
「……ありがとうございます」
色冠の色気に慄きつつ、頭を下げて歩き出す。
最後に出口で俺を呼び止めたのはバチコちゃんとパイモン様だった。
「ようメフィスト。あいつはいねえのか」
「いづ?」
「メフィストがバカ可愛がりしてる秘書だよ」
「ーあれ」
「今日はお留守番。なあに、バチコちゃんもあの子に贈り物?」
ちょっとウンザリしつつ聞くとバチコちゃんは
「そ、そんなんじゃねえよ!」
と照れながら言う。何故そこで照れる。
「前に勧めた菓子をいくつか持ってきたんだよ。まあいい。渡しとくから一緒に食えよ」
「……ありがと」
……なんで俺は可愛いあの子の元に帰るのに、他の連中からの贈り物ばかり持ってるんだろうな?
そんな考えを見透かしたかのようにパイモン様が笑った。
「ごいつがらの贈り物が不服なら、おめえが用意してやればいいさ」
「……そう、ですね」
なんで気づかなかったんだろう。2人に礼を言って飛び立つ。自宅近くの商業施設まで急いだ。
「と言っても、なにがいいかな」
よく考えたら俺は彼女になにかあげたことなどない。そもそも女性に贈り物をしたことがない。
悩みながら歩いていると、アクセサリーショップが視界に入った。
「……これ」
たしかブラちゃんが元カレにもらって別れ際に代金を請求されたとか言ってたブランドだ。縁起は悪いけどセンスは悪くないし、近くには他にもアクセサリーショップが立ち並んでいる。
「よし」
彼女はアクセサリーをまったく着けていない。つまり、一から十まで俺の贈ったもので飾り立てられるわけだ。そう考えると楽しくてあれこれ買いすぎた。買ったものは贈るときに魔術をかけて俺のだとわかるようにしておこう。
鼻歌交じりで家へ向かう。可愛いあの子が笑顔でおかえりを言ってくれるのが、楽しみで仕方ない。