1/8雪が降ると走りたくなる「わ、雪! 雪ですよメフィスト様!」
その日の夕方、書斎のカーテンを閉めようとしたら窓の外をひらひらキラキラと雪が舞っていた。
「ほんとだ。この辺りはあまり降らないのに珍しいね」
「わー、久しぶりに見ました。白いです!!」
「そりゃ白いけども。……外に見に行く?」
「行きたい、ですけど仕事が〜〜〜」
なにしろ夕方だ。邸内のカーテンを全部閉めたら夜ごはんや風呂の支度がある。書斎の書類だってまだまだ片付かない。
「結構降ってるし、夜ごはん終わる頃には多少積もってるかもしれないから、その頃に少し散歩に行こうか」
「いいんですか!? やったあ。ごはん、用意してきます!!」
話のわかる主だ。私は飛び跳ねながら書斎を飛び出した。
そして夜ごはんの後。厨房を軽く片付けたらコートやマフラーを羽織っていざお外!
「すごい、積もってる! メフィスト様! 積もってます!」
「少しだけどね。朝にはかなり積もってそうだなあ」
「積もってたらカマクラとか雪だるま作れますかね」
「カマクラは大変だけど雪だるまくらいなら作れるんじゃない?」
「わー、楽しみ!!」
真っ白な雪道に足跡を付けたり雪をかき集めて念子の形にしたりする。楽しい。めちゃくちゃ楽しい。
けど気が付くとメフィスト様が軒先で震えていた。
「メフィスト様!? す、すみません。そんなに震えて……。寒からったらお戻りいただいて構いませんのに」
「や、この暗い中放っておけないでしょ」
「……戻りましょうね」
「もういいの?」
「また明日の朝遊びます」
急いで邸内に戻り、メフィスト様を風呂へと送り込む。一緒に入るだなんだと言っていたけど私はまだ厨房の片付けがあるので遠慮させてもらった。
しかし私も風呂から上がったら、なんだか指先が赤く腫れていた。
「なんだこれ」
「これは、霜焼けだね。薬を塗ろうか」
「霜焼け……これが……」
「なったことない?」
「ないかもです」
メフィスト様が温かい手で塗り薬をすり込んでくれた。……なんか、さっきから自分が子供みたいでお恥ずかしい限りです。
「明日の朝はちゃんと手袋をして遊ぶんだよ」
「わかりました」
「温かい飲み物も用意してね」
「そうします」
……メフィスト様は私の子供みたいなところも許してくれるので、どうにも大人になりきれない気がした。