2/12後手に回ったことを悔しく思うタイプ その日は買い出しにメフィスト様がついていらして、あれこれ言いながら消耗品や食材を買い込む。
一通りの買い物を済ませて家に転送してからお茶でもということでスタ魔にやってきた。
「俺注文してくるから、席取ってきてよ」
「承知しました。ソファとカウンターどっちがいいですか?」
「ソファがいいな。二人がけの」
「はーい、取ってきます」
店内の奥の方にある二人がけのソファに座ってメフィスト様を待つ。
しばらくしたらテーブルに影が落ちたので顔を上げたら、知らない悪魔だった。
「お姉さん一人? ここいい?」
「いえ、連れがおりますので」
なんだ、コイツ。断っているのに、その男悪魔はへらへらと笑いながら横に座ってくる。
「そんな怖い顔しないでよー。綺麗な顔が台無し」
何を言っても無駄だろうと立ち上がりかけたら腕を掴まれた。気持ち悪い。
「いいじゃん、ちょっとくらい付き合ってよ」
「お断りします。連れが来ますので」
「じゃあそれまででいいからさ」
レジは結構混んでいた。メフィスト様がすぐ来られるかはわからない。
でもってここの領主はメフィスト様。オッケー殺しても揉み消せる。
魔力を広げてソイツの羽管を狙う。
「はい、ストップ」
ポンと頭に温かい手が乗った。
「コレの始末は俺がやるから、君はこれね」
メフィスト様から渡されたのは飲み物とオヤツが乗ったトレーで、隅には認識阻害メガネも乗っている。
「なあに、あんた。この子は今オレが」
「はいはい、あっちでやろうか」
メフィスト様がソイツを見ると、途端にソイツは汗をかいて頷いた。たぶんそういう魔術を使ったのだろう。私もそうすれば良かった。ビックリして、対応が後手に回ってしまった。悔しい。
認識阻害メガネをかけて待っていたら、今度こそメフィスト様が隣に座った。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
トレーからメフィスト様のコーヒーを渡す。
「ありがとう。腕の掴まれていたところ大丈夫?」
「大丈夫です。痕にもなってないです」
「そっか。おいで」
おいでと言いつつメフィスト様は私の肩を抱き寄せる。
「すみません、お手を煩わせてしまって」
「ううん。俺の方こそ怖い思いをさせてごめん。近寄るのが見えたから急いだけど、間に合わなくて」
黙って首を横に振った。結局守ってもらったし、こうやって大事にしてくれてるから、それで十分だ。
「もう帰ろうか。全部包んでもらって、帰って食べよう」
「はい」
立ち上がってメフィスト様にくっついて歩く。何でもないと思ったけど、もうちょっと甘えさせてもらおう。今日一日くらいは。