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    いしえ

    @e_ihs_i

    新規の文章と絵などの公開をこちらに移動。
    最近はコとか封神とか。
    そのほか、過去にしぶに投稿したものの一部もたまに載せたり。
    幽白は過去ログ+最近のをだいたい載せています。
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    いしえ

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    カレー屋さんへと誘われて、連れて行ってもらったのは、永遠を約束する場所だった。
    らぶらぶハッピー。最後に少しヒロに触れますが、二人とも知っている上で生存を信じています。
    回想として少し県境回の帰路でのゆいと高明のミサオに関する会話を含む。DCが運命や好敵手をこいびとと形容する世界観なのだから、言ってそう!と思い。今回は違いますが、これが語弊生んだまま結果論マジにこいびとになる流れもいいなぁと思う。

    #腐向け
    Rot
    #DC腐
    #こめミサこめ

    ゆきさきはとこしえにハニー・ムーン/こめミサこめ『ああ、そういえば。美味しいというカレー屋さんを教えてもらったのですが、今度の休み、一緒にどうですか?』
    『えっ、ホントですか!! いいですね!! 是非是非、一緒に行ったりなんかしちゃいましょ~♪』
    『それはよかった。では、楽しみにしていますね。おやすみなさい』
    『はぁい! 僕も楽しみです~!! おやすみなさーい』
     そんなやりとりを、ほかの話題の最後に交わした。たかあきさんとのやりとりで、しかも締めにカレーの約束だなんて、最高にもほどがあるじゃないか! ああ、今日も、彼と一緒にカレーを食べる夢を見られたりなんかしちゃいそうだ。彼の連れて行ってくれるお店は、いつも僕の知らないところで、そしてとびっきり、おいしいんだから、すごいなぁ、と思ってる。…たかあきさんと一緒だから、っていうスパイスも、もちろんふんだんに効いてるけど。だって、彼のことを好きだと自覚したのだって、それがきっかけだったんだから。僕の行きつけのお店に初めて一緒に行ったとき、いつものやつ、を頼んだハズなのに、"あれ? なんか、いつも以上に美味しいな~??"、なんて思って、店主に、『ねぇねぇ、なんか、味とか変えた?』って訊いちゃったくらいなんだ。『いつも通りだよ』と返されて、高明さんはにこやかにしてたけど、僕は、なんでかなぁ、ってしばらく考えたちゃったよ。その次に別の行きつけに行ったときもやっぱりおんなじで、次の次もおんなじで、おっかしいな~~、って思ってたら、ちょうど、そのとき一緒に居たお店のテレビでドラマの再放送をやってて、そのくだりで気付いたんだ。"ああ、そっか。高明さんと一緒だからいつも以上においしいんだ。…んん~??? ってコトは僕っ、もしかしてもしかしちゃって、高明さんに、恋、しちゃってるのかな?!"…って。ああ、真っ赤に爆ぜたかおを、とっさにうつむきながら両手で隠したけど、たかあきさんに、見えちゃったかな? 指の隙間から恐る恐る、ちらり、と覗けば、たかあきさんはまるまるしってたみたいに、慈愛と、ちょっとの焦れが入り混じったみたいなかおで、そして、のどをえさせて爪を鋭く研いだ鷲とか鷹とかならたぶんこういう目をしてるんじゃないかなぁ、ってとっさにぼんやりイメージで思ったくらい、目の奥に鋭い渇望を押し隠してたのを、たぶん初めて、見せてきて。その視線にハートをどきんと射抜かれたまま、僕の顔、もっともっと真っ赤に火照ったりなんかしちゃって。それが、僕達のお付き合いの始まりの日だったなぁ。ああ、次のカレーデートも楽しみだな。きっと、すんごくおいしいお店なんだろうなぁ…
     カレンダーに付けた印が向こうから駆け寄って来てるんじゃないかってくらいのワクワクとうきうきを、たかあきさんは、僕の日常にもスパイスとしてトッピングしてくれている。たかあきさんにとってもそうみたいで、それが僕をいつも、気恥ずかしい嬉しさで満たすんだ。よく寝かせたそのカレーが、ほら、鍋のふたを開けたまま僕らを待ち受けてるのが見える。そして、盛り付けの時が、いよいよ来た! 今回は、僕の家まで車で迎えに来てくれるっていうから、楽しみすぎてホントは呼び鈴が鳴る前から彼を待ち受けてたいくらいだったけど、今は夏だ、幾ら朝早くでもそれをやって倒れたら大変だから、大人しく、家で正座して呼び鈴を待ってた。そしてたかあきさんと合流して、もはや指定席となった助手席にいつものように座る。彼の愛車が、彼の運転をいつも通りよろこぶよう流麗に、力強く、発進した。
    「いやぁ~~、もうっっ、今回も楽しみすぎて楽しみすぎて…たかあきさんと会えるってだけでいつもじゅーーっっぶんっっ!!すぎるほど楽しみなんですけど、ましてやそれがカレー屋さんだなんて、まるでカレーとライスみたいな、運命のペアリングじゃないですかぁ~。最高すぎちゃいますよ!!」
     横顔の彼がふわりとほころぶよう微笑んで、僕の胸を、ときときと弾ませる。
    「ふふ、あなたから聞くには至上の褒め言葉だ。光栄です。それでは、あなたはナン、ですね」
     与えられた褒め言葉がうれしすぎて、僕の顔はだらしないくらいでれでれとにこついてしまうんだ。
    「えっっ、めちゃくちゃ最高じゃないですかソレ! そんなぁ、照れちゃいますけど、嬉しいですぅ。あっ、それで、今日はどんなお店なんですか?」
    「それは、着くまでのナイショということで」
    「はーい♡」
     彼はどうもサプライズを好むみたいで、事前にどんなお店か教えてくれたことは一度もない。けど、ついつい、訊いちゃうのがふたりのお約束、ってカンジになってる。
     談笑しながら、結構な距離を走ってるな、と、思った。むむっ、このまま行くと空港方面だぞ? そんなところまで来ても、車は進み続ける。
    「ヒントは、"新千歳行き"、…です」
     どきん! 彼が、ヒントなんてくれたのは初めてだ。今日は、まるでなにかが起きるみたいな!
     新千歳…新千歳…… …もしか、して。
    「…スープカレー………、…ですか…?」
    「…さて、どうでしょう? 答え合わせは、またのちほど」
     やさしいまなじりのぬくもりが、きっとそれが正解なのだろうと、思わせる。同時に、けれどちがうかもしれないというもったいぶりが、プレゼントのふたをあけるときを待つようなドキドキを、ひとときの旅路の間、僕にくれるんだ。寝かせたカレーが明日に待ってるのを知ってるときの寝床みたいな、楽しみなおいしさが、それに近いと思う。けど、おかしいな、今日は、特に何の日でもなかったはずだけど。彼は思い立ったようになにかをしがちで、彼にとってはだいたい、いつも意味やきっかけがあったりする。それがすぐにじゃなかったりもしちゃうから、サプライズになって、驚きとか感動とかを、僕にめい~っぱいにくれている。
    『そういえば、僕、カレーには目がないだなんて自称しておきながら、実は、スープカレーって未だに食べたことないんですよねぇ。いやぁ、なんかアレ、オシャレなお店が多くてなかなか入りづらくて…パウチのを買うのも、なんか違うかなーとか思っちゃったりして…』
    『…なるほど…そういえば、私も、食べたことはありませんね』
     確かに、そんなことは以前に、近場のカレー店で会話の流れでこぼしたことがある。たぶん、アレがきっかけだろう。ふわり、包み込むような笑みは、思えば含みがあったような気もしてきた。隠し味っていうのはだいたい、僕には、言われればそんな気がしていた気がする、ってカンジのものだから。
     新千歳までの短い旅路では、なんだろう、さっき予感したなにかが待ち受けてる気がするから、変にそわそわしちゃって、いつもみたいにぺらぺらとおしゃべりできなかった。妙な、気恥ずかしさっていうか。ドキドキがずぅっと頬をそわつかせて、たかあきさんをちらりと見ては、返る横目にどきんと心臓を跳ねさせて慌ててほかのところを見たり、の繰り返し。それでも彼は、いつもみたいにうれしそうに、穏やかな声で接してくれた。それがまた僕のほっぺたも胸もおなかもしあわせなくすぐったさでそわそわ引っ掻くものだから、変な心地良い緊張と、なにか、期待みたいなものとで、すっごく、すっごくしあわせな気分だった。
     目的地は、思った通り札幌で。連れて行ってもらったお店はやっぱり、札幌でカレーと言えば、なスープカレー屋さん。そりゃあもうおいしくっておいしくって、僕はたかあきさんと一緒に、華々しいスープカレーデビューを飾ったわけだ。内装もなんか、アメリカのヴィンテージなガレージ風っていうか、ちょっと外国に来てみましたみたいな気持ちになる、いいカンジのところで。店主や店員さんの親しみやすさや、陽気で控えめな音楽にも心がすっかりほぐされて、僕は気が緩み、いつもの口数をすっかり取り戻していた。
    「もォ最高に最高においしすぎて、すっかりハマっちゃいましたよォ~! もう一種類、頼んじゃってもいいですか?」
    「どうぞ、お好きなだけ」
     たかあきさんはいつもみたいに、追加オーダーを食べてる僕を、うれしそうに眺めてる。そうしているのがすきなのだと、前に言っていたから、焦らず味を満喫した。もうあとひとくちふたくちで食べ終わる。そんな名残おしさと満足とのぐるぐるない交ぜになってるしあわせな渦中に、ぽんと投じられたのは宝石だ。
    「――実は、あなたと行きたいところがもう一箇所、あるんです」
     それは僕の中のぐるぐるをふっと一気に鎮めて、凪みたいに、彼の声だけを耳に届けた。
    「えっ、そうなんですか? ありがとうございます、食べるの待っててくれて」
    「構いませんよ。こちらこそ、楽しそうにたべるあなたを見られて、幸せですから」
     たかあきさんが僕にゆっくりたべてほしくてこのタイミングまで待ってくれてただろうことは容易に想像できた。だから、それについては反射的に謝りかけるのをお礼に留めて、大船に乗せるだけにする。
    「…エヘ…僕も、たかあきさんと一緒に過ごせて、すっっごくしあわせです! たかあきさんが行きたい場所なら、一箇所と言わず何箇所でも、何十箇所でも、この僕ミサオの山さんがっ、どーーんとっ、全力でお付き合いしちゃいますよォ!」
     自分の胸をどんとほこらしげに軽く叩きながら、きらきら、目が輝くのを自覚する。たかあきさんはうれしそうに、まるで味を噛み締めるみたいにふんわり微笑んで、それが店内に入る自然光とぴったり合ってて、すごく、きれいだった。ヒップホップっぽい外国の音楽が控えめに流れているのも、彼をたたえる賛美歌に聞こえるくらいだ。
    「…ふふ、頼もしいひとだ。でも、…私には、その一箇所だけで、充分、なんですよ」
    「控えめですねぇ、たかあきさんは」
     僕はカレーの残りをだいじに食べきって、ごくり、ドリンクも飲みきり、一緒にお会計を済ませ次の目的地へと連れて行ってもらう。そこは、富良野のラベンダー畑だった。
    「わぁ…っ!! コレ、有名なトコロですよねっ!! いい眺めとニオイだなァ~。たかあきさん、ここに来たかったんですねぇ。きれいなところですもんねぇ」
    「いいえ? 私が真に求めたのは、"ここ"…では、ありませんよ」
    「えっ?! じゃあ、なんでココに…っ」
     訊きながら、それが遠慮じゃないことを、僕は直観した。ときり、胸があまく跳ねる。鼻腔をくすぐる甘い風に、なにかの起きそうな予感が確信めいて、そわりと浮ついた。ふわふわ、ここに居ないみたいなのにヘンに現実感だけあって。ああ、たかあきさんのくちびるが、開かれる。そうっと、てのひらを掴まれたのがうやうやしいの語そのものだ。
    「――ミサオさん。私は、あなたの那由多程にも豊かな、どれ一つとっても同じでない表情のすべてを、まるまる愛している。叶うことならばそれを映す鏡として傍に在り、その万華鏡を、もっと、もっと無限にまで、輝かせたい。
     健やかなるときも、…たとえば病めるときでさえもなおさらに、あなたという存在とともに、光も、闇も、あかつきも黄昏も宵も、あなたと共に森羅万象を歩み、輪廻転生さえも駆け、時に立ち止まってもなお、あなたと二人で生き、…死さえも分かてぬほどのとこしえに、永劫、あなたとともに在りたい。…私が行きたいのは、そんな、あなたとともに時空さえ超越したどこかなのです」
     ああ! その瞬間、辺り一面だれもいないふたりきりみたいに錯覚する。荘厳な静寂は、清らかな神聖だ。
    「…こんな強欲な私と、"同じ世界"を、共に生きてくれますか。ふたりで共に生き続ける世界に、…今の、あのひの、延長上にあるその時間のすべてに、共に居続けて、くれますか。
     …改めて、…愛しています、ミサオさん。あなたの存在すべてを。あなたの、――あなたと、在る、この世界を。…こんなふうに思えるようになったのは、あなとという光が私を温かく照らし、穏やかな時と楽しむ心を与え、寄り添い続けてくれたからに他ならない」
     僕は、胸がたくさんのことばでパンクするようにあふれかえって、とっさに、ことばが出てこなかった。なにから、なにを、言えばいいんだろう。めいっぱいにもらった愛のことばのシャワーに対して、こっちだって、と言いたいことが、あまりにもたくさんありすぎたんだ!
     無数の白い鳩たちが、ばさばさ飛び立つのが見えるようなこれも錯覚なのに、リンゴン、リンゴン、揺れる大きな鐘だって錯覚なのに。全部の調和があくまで清らかに神聖で、ここちよく、とくとくと鼓動を早め、それはきっと、彼の言うように永劫さえこの胸を動かし続けることだろう! 胸が、彼から注がれた極上の愛を込めたライスシャワーでいっぱいで、ああ、ほんとに、ことばが出てこない。――だって、だってこんな至上の喜び、ああ、待ち受けてるなんて思いもしなかったんだから! 今朝方行き先のヒントを与えられたとき、感じた予兆は、これだったんだ。全部が、この日、この刹那、そしてこれからさきのとこしえのためだったんだ。――こんな、こんなの… ほてった顔はふらりとのぼせるほどで、うつむきさえしたいくらいなのに、今ひとときでも、彼から目を外すことをとてもじゃないけどしたくなかった。ばくばく、揺さぶられどおしの心臓を、かろうじてもちあがった空いていた手で、少しまとはずれな場所でも構わず、ぎゅうっと、握りしめた。くちが、彼に注がれる言の音ことのねに応えるほどのそれを求めてあさくひらき、何から言ったらいいのか、惑うようにきゅっとちいさく閉じた。ああ、ああ、今彼に伝えたいことがほんとうにあんまりにも、たくさんありすぎる!
    「…お返事は…ふふ、お顔を見る限りでは、訊くまでもないようですが…私は、この鼓膜に、心臓に、脳に、…細胞や元素の枝葉根幹すべてに至るまで、あなたのことばを直接、深々刻みつけたい。返事を、頂けますか」
    「…っ、……もちろんっっ、そんなのYesに決まっちゃってますよォ!! ぼくだってっ、あなたと生涯、…いいえ、あなたが言うようにそのもっともっとずっとさきまでずぅ~~っっとだって、一緒に居たいです!!」
     ああ、紫色のじゅうたんが、長い毛足をそよがせふたりを"そこ"へとエスコートする。差しのばされたうやうやしい手にてのひら重ね、そのまま引き寄せられるよう抱き締められるものだから、飛びつくように抱きつき返した。らしくもなく尻もちをついたたかあきさんは、そうだまるで、きっと、緊張してたんだろう。安堵にへたりこむときの僕をそっくり映す鏡だった。へにゃり、眉毛と一緒にゆるんだ笑みに、歓喜の涙がつうっと伝った。僕たちは、今、そっくり、合わせ鏡だ。
    「…ふふっ、えへへ……たかあきさんも、しりもちなんて、つくんですね」
    「すみません、張り詰めていた気が一気に緩んで。支えきれませんでした」
     ふわり、風の薫りのようにやわらかくしあわせな笑みが二輪分、そよそよゆらりとふわついてる。
    「はは、ぼくなんか、感極まりすぎて、なんかもう、ぼろぼろ泣けちゃってます…」
    「実は、私も」
     にこり、笑む眼はまたひとつふたつみっつむっつと、銀河みたいな雫を、きれいにこぼした。
    「そんなのっ、…ううっ、…っっ、…見てればっ、すぐ分かっちゃいますよォ! …ぼくも、もっと、たかあきさんのいろんなところをい~~っぱいこの眼に映して、い~~~~っぱいきらめかせてっ、あなたを、もっともっとまぶしいヒトにしてくれちゃいますからっ…!」
    「ふふ、それは、たのもしい。……ミサオ、と、呼んでも?」
     どきり! ああ、この名前が天界にだってきっとないと思い上がれるくらいの至福の響きをつむぎ奏でる。なんて、なんてうれしい申し出なんだろう!
    「ううっ、…モチのロンっっ、OKに決まっちゃってますよぉ…っ! わぁ~~ん……なんか、ホント、うれしくて泣けちゃって……えへへ、そう呼んでもらって、かなりドキッとしちゃいました…すっごく嬉しかったです! あっ、何なら、敬語もナシでいいんで!」
     言えば、たかあきさんは少し困ったようにきょとりと深海みたいな星をまたたかせて、はにかむように、ふわり、こまったようにあまく微笑んだ。
    「それは……ただちには、難しいかもしれませんが…」
    「あっ、ホントだ」
     言ってまた、笑み合う。ああ、甘い薫りの極上が、そよそよ、ほほをやさしく撫ぜている。
    「……はは。まあ、…善処はするよ、ミサオ」
    「っ!! う、自分で言っといてなんですケド…ドキッとの破壊力がいつもに輪をかけてくれちゃってて、倒れそうなくらいぐらぁってよろめいちゃいます……」
    「撤回するかい?」
    「っっ!! ……たかあきさん、ちょっと楽しんでません…? 撤回なんて、しやしないですからっっ!!」
    「ふふ。ミサオも、敬語をやめても構わないよ」
    「うう…っ、…ぜぇ、はぁ、ぜぇ…はぁ………はァい♡ たかあきさん♡ ……って言いたいトコロなんですけど、う~~ん、たかあきさん年上だし、おにいちゃんっぽいし…できるかなぁ……」
    「まあ、互いに無理のない範囲でいいんじゃないか。何しろ時間は、…とこしえにあるんだし?」
     強調されたその語に、ときりときめく胸が、ほわほわとあたたかくも熱くも、いっそう泣かせてくる。
    「…へへ……改めて、噛み締めちゃうなぁ……嬉しいです……♡」
     ぎゅうっと、きつく、抱きつき直した。耳がちょうどたかあきさんの胸元にくるくらいの体勢で、互いの鼓動が、ぜんぶわかっちゃうみたいで、ほっぺたも胸も、ふにゃふにゃ、きもちいいくらいにやけてしまう。そのままうたた寝したくなるくらい、しあわせで、しあわせでたまらなくて、とにかくほんとに嬉しかった。
     思えば、あの日巡り逢う接点の運命を、そのギフトを、これまでの生涯歩んできたんだし、これからも、ああ! 歩んで、いけるんだ。
    『そういえば、あの群馬県警に、なんだか、ご執心だったみたいだけど』
    『…ふふ、そうでしょうか』
    『あら、ずいぶん嬉しそうね』
    『ええ、まあ…彼は、私にとって、言うなれば、"ようやく巡り逢えた運命こいびと"、…だったようですから』
    『…あ、そ…ま、それならお祝いしておくわ』
    『ありがとうございます』
     あの県境での合同捜査のとき、由衣刑事(さすがに長野県警とも付き合いを積み重ねてきたので僕でも名前を覚えられた)とたかあきさんは、帰りにこんなやりとりをしたのだと、あとから明かしてくれた。そのときの感情の動きを、思い出のカメラロールのように、つうっと、ゆびさきでだいじに、だいじに慈しむように、なぞる心地。たかあきさんと過ごした色んな時間を、たくさん咲かせた思い出話のお花畑を、たかあきさんを想って過ごした、時間たちを、ぜんぶまるまる、一緒くたにぶわぁって浴びたみたいだ。まぶしいくらいの夕焼けの気配に眼を細めながら、それでもずっと、抱きついたままで居たいと、思ってしまう。
     花園への滞在も、帰りのフライトも、ゆきさきが、かえるばしょがとこしえのハニー・ムーンなのだと確かに伝えてきた。どんな困難さえ、ふたりならともに、乗り越えていけるだろう。生涯を交わす指環を買いに、行く約束を、代わりのゆびきりでつなぎながらうきうきと浮つく心にひとときの待てをさせる。きれいな、月夜だ。少し前、たかあきさんが夏至に近い満月をハニー・ムーンと言うのだと教えてくれたけど、それを聞いた日もちょうど、きれいにみえたものだったっけ。僕たちの職業柄、日常には数多の哀しみやつらさがある。でも、"還る場所"に、やさしい花を、香りを、たくさんの彩りを、改めてまぶしてくれた誓いと確認の日を、あの紫のじゅうたんを、生涯、いいや、この身が現世で果ててさえなお、決して、ぜったいに、忘れ得ないことだろう。
     僕たちは、ああ、とても、しあわせだ…絆の結び目になったヒロくんとまた会って報告がしたいね、なんて、祈るようというよりはきっとそうだと信じながら、その日を、待つ。
     僕たちは、ああ、なんてしあわせなハニー・ムーンをこれから歩んでいけるんだ。あまい、あまい予感が、未来を幾らでも耀きの万華鏡に映す。ああ、ぼくたちは、逢うべくして逢えたんだ。接した道がずうっとひとつに伸びていくのを、天の川みたいにまぶしく、思った。





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    いしえ

    DONE▼聞仲さまの教育方針=生き様について(ミュ2の話も少しある)(朱聞要素と、途中から飛虎聞とある)
    ▼ミュの飛虎と聞仲について(たぶんCPではない)
    後者はCPではないものの、ともにミュに関する色が強いのでまとめました。
    封神考察とメモ集2(①朱聞要素と、途中から飛虎聞②たぶんCPではない)▼聞仲さまの教育方針=生き様について(ミュ2の話も少しある)(朱聞要素と、途中から飛虎聞とある)▼


     王として生きることは、王として死ぬこと。血族を残し、場合によっては殷のために殉死することで、長期的視野での“殷”全体、即ち殷王国の存続のバトンをつなぐこと。それが王太子の地位に生まれた者の責務である、というのが聞太師の教育でまず刷り込まれることだと考える。
     これは朱氏に子=殷の存続を託されたときから無意識に掲げていて、聞仲さまの潜在意識にあったことで、そして、仙道としての生が意識的に冷酷にさせた、個々の人間生へのまなざしだと思う。聞太師に直接託された“新たな殷王”は、朱妃の子個人のみでなく、半永久的に続くべき、“今後のあらゆる殷王という可能性”なのだった。聞仲はそれをじゅうじゅう承知して、次々に代替わりせざるを得ない人間生を、受け入れるしかなかった。
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    いしえ

    DONE▼三強ベルばら論
    ▼趙公明の"独演・ベルサイユのばら"論 ――三強ベルばら論Ⅱとしての加筆事項
    ▼呂岳考 ――呂岳とその周辺に関する一つの説
    ▼飛刀について・余化や飛虎について
    ▼WJ封神読み返し時の考察&推測とメモ
    そのほかCP色強めのもの(+ミュの話)を別投稿にて。
    封神演義考察ログ集1(大半CP無、一部趙呂等含む)▼三強ベルばら論▼


    趙公明の立ち居振る舞いオスカルっぽいという話めちゃめちゃわかる~~と思ったあと、というか趙公明ってベルばらの三主人公の要素全部混ぜ混ぜだな!?と思ったり、三強もベルばら三主人公の要素割り振られ受け持ってるな~と思った、という話。

    ベルばらは主人公が三人(マリー・アントワネット、マリーと惹かれ合うフェルゼン、そしてオスカル)でマリーとフェルゼンの禁断の恋が王権を破滅に導く。

    妲己がマリーはセリフ引用+役どころで自明。趙公明の「バラのさだめに生まれた」はベルばらOP引用で、歌詞めちゃめちゃ趙公明すぎる曲よね…アニメはオスカルメインゆえ、趙公明がアニメベルばらOPモチーフ+仏王家紋章のユリ(厳密にはアイリスの仲間)の意匠に金と青の配色+髪型もオスカル意識のふわふわ金髪、かな?と。ただ、趙公明と妲己に共通するのが、マリーが取り巻きのそそのかしや恋により悪政へと向かった、外因により造られたれ"マリー"であるのを踏まえると、二人とも見せかけの言動は"マリー"な点。一方、素朴だった頃のかつてのマリーが蘇妲己。
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    いしえ

    PASTしぶから再掲。登場当初のロペスは作中で無欲と扱われていたけれど、実のところ彼にとってみれば、王に仕えたいというその願いが持つ意味がすご~~~~~~~く重かったんだよねぇ!!!!!というのと、それをだれもしらないんだよね!!!っていうのが最高で…無欲そうに見えるロペスが大願を成就させているところ本当に好き…という気持ちを、ロペス一人称文で少しアウトプットしたもの。巨大感情隠した従者のイデアで理想です
    ここに、在るは幸運がため/マルティン・ロペス(アルカサル) 「なんとまあ、欲の無い男だ」。諸侯らが口々に、私を謙虚と褒めそやす。厳しい審判の眼を持つ王さえ、私をそう、賛美なさる。誰もが、ご存じないのだ。その実私が、生涯をおいてもあるいは遠く及び得なかったかもしれぬ大願を、既にこの双肩に得たのだと。十六の少年が、不意の家督において心のささえにしたカスティリア国王、十五で即位したかつての少年ドン・ペドロ王そのひとのお側近く仕えるその至上を、その幸運を! それこそが、私の何よりの強い願望で、悲願で、意欲で、目標だったことを。誰もが、ご存じないのだ。
    「恐れながら――」
     王の取り計らい、即ちサバ読みに応じたのも、お側仕えの夢を快く受け入れてくださった主君への、王のご厚意への、誠意だと思ったからにほかならない。たとえば神がこの方便をとがめたとても、私はそれを、恐るるまい。ドン・ペドロ王そのひとに、そのお心に適うのなら、私は地獄も恐れはしない。
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