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    りーな

    @daryunaru
    好きなように二次創作物
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    りーな

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    水臼になる二人のつもり。ガイドブックおまけネタより。臼井が面倒くさい

    #水臼
    waterMortar

    勉強会にて 水樹の勉強を見ていると風間と柄本がメロンパンを差し入れにやってきた。どうやら水樹の指示らしい。生方にも何やら迷惑をかけたようだ。パンを受け取って風間と柄本にはお駄賃として貰い物のクッキーをあげた。生方にもよろしくと頼んでおく。風間は笑いながら、柄本は真面目な顔で「勉強頑張ってくださいね!」と言って去って行った。
     紙袋にはメロンパンが五つはありそうだ。が、水樹の分も含まれてるなら朝まで保たないだろう。晩御飯は他の寮生も巻き込んでカレーにしようか。水樹から食費を徴収しなければ。
     紙袋に書かれたパン屋の名前を見ると、どこかで聞いた名前だった。果たしてどこだったかと考えいると水樹の視線を感じた。何か訴えるように、じっとこちらを見ている。水樹に関係することのようだ。水樹が覚えていて俺が忘れているなんて沽券に関わる。真剣に記憶の糸を辿ってようやく思い出した。


     一年の秋頃。練習が早めに終わった日、一年皆んなでご飯食べに行こうという話になった。いつも最後まで残って練習をする水樹に無茶をさせないためでもあった。灰原や速瀬を中心にどこへ行こうかと盛り上がる中、レギュラーはミーティングがあるから、また今度と言ってその場を離れた。
     中澤監督に請われてやって来た聖蹟で、すぐレギュラーになった。側から見ると順風満帆に見えるだろうけど、目障りな存在がいた。水樹のことだった。誰より下手な初心者のくせに皆んなに好かれてて、本人は「いい奴」で、本当に気に入らない。
     だから正直皆んなと……というより水樹と水樹を好きな皆んなとご飯など行きたくはなかったので、その時は自分がレギュラーで良かったと思っていた。伏見先輩は俺が同期の間で浮かないか気掛かりな様子を見せていたが。
     ミーティングが終わって寮に戻ると、まだ他の一年は帰っていなかった。精々仲良しこよしの時間を過ごしていればいい。風呂にゆっくり浸かれる。
     風呂から上がると皆んな帰っていた。灰原が水樹からお土産! と笑顔で紙袋を差し出した。水樹から土産? 何故? 戸惑っていると、猪原がいつも世話になってる礼も込めているらしい、と教えてくれた。そう思うなら遅くまでの自主練や迷子癖や赤点をなんとかしてほしいものだが。
     灰原から受け取った紙袋からは美味しそうな匂いがした。見ると、焼きそばパンとあんパンが入っている。国母がメロンパンは売り切れててさと言い、水樹もがっかりしてたぜと速瀬が教えてくれた。別にメロンパン以外も食べるけど。水樹が俺にはメロンパンと思ってたのは……むず痒いな。他人の好物を気にするタイプだとは思ってなかった。
     その後、灰原達からせっかくだから水樹の家の近くまで行ったんだぜ! 水樹が美味い飯屋があるって言ったのに結局迷ってさ。そのパン屋も水樹んチの行きつけなんだって。と聞かされた。臼井も次は行けたらいいなと言われて、そうだなと答えつつ絶対行きたくないと思った。

     次の日の部活にて。
    「水樹、パンありがとう。美味しかった」
    「こちらこそ、いつもかたじけない」
    気に食わない相手とはいえ、礼を言わないわけにはいかない。そう思って練習前に声をかけて義務を果たした。さて部活だ。身を翻して準備を始めようとすると。
    「あ」
    あ? 
    「あの……メロンパン……」
    「ああ、なかったんだろ。焼きそばパンもコロネも嫌いじゃないよ。ほんとに美味かった」
    「そうか、良かった。焼きそばのパンは俺が好きでなので食べてほしかった」
    あんパンは祖父が好きだということを辿々しく伝えられた。なるほど、水樹のおススメがセレクトされていたのか。
    「ええと……メロンパンも美味しいのですが」
    「そうなんだ。今度行ってみようかな」
    社交辞令だった。絶対行かないくせに、こういうことをスラスラ言える自分と、言えないだろう水樹との差にまた嫌になる。ちょうど先輩達から一年集合という声が掛かり、話が有耶無耶になって助かった。


     そのまますっかり忘れていた。

    「なかなか来ないので」
    「…………なるほどな」
    あれは社交辞令だったし、あの頃の俺が水樹の家の近所のパン屋に行くわけがないし、そもそも水樹が道案内なんてできるはずもないし。約束していたわけでも勿論ない。が。
     そんなに食べさせたかったのか? 何故?
     水樹はもとより仲間思いだ。佐藤と鈴木の名前は間違えるし、話を聞いてないこともあるし、後輩を走らせることも多いし。これはいいか。いろいろなことを良く忘れるし。そのくせ妙なことを覚えていたりして驚かされることもある。
     別に特別なことじゃないんだ。自分の好きな店を紹介したがったり、好きなものを食べさせたがったり、俺の好きなものを用意したり。二年近く前のちょっとした会話を覚えていたりするのも全部。水樹にとっては特別なことじゃない。
     だから何故かなんて、意味を見出そうとしても無駄だと分かっている。

     休憩時間。メロンパンは美味しい。水樹は馬鹿だ。選択肢くらい守れよ馬鹿。馬鹿もメロンパンを食べている。俺への礼という気持ちが一応あるのか、一つに留めようとしているが、もっと食べたいという欲は表情から隠せていない。
     ふと気になって紙袋に書かれた店を調べると二号店が出来ていた。そちらはイートインスペースとテラス席があるらしい。へえ、いいな。
    「行ってみようかな」
    「! ぜひ!」
    ん? 何故お前がそんなに嬉しそうなんだ? 
    「あまり広くはないが……えーと、そうだ、日本茶はある」
    いつにする? とワクワクした様子で聞く水樹。いや、俺が行こうかと思ったのは二号店の方で、けして水樹の家の近所の方ではない。パンを買って水樹の家に遊びに行く流れを勝手につくられても困る。
    「……お前が赤点補修を逃れたらな」
    ガーンという顔をしている水樹。まあ、このままでは絶対に無理だからな。俺が遊びに行くことがご褒美になるとは思わないけど。多少はやる気を出してくれると……
    「臼井、早く続きをやろう」
     ……思ったよりやる気を出してきたな。
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