遥か遠いもの空に筒を掲げ、穴を覗き込む。分厚い雲の切れ間にぴったり筒先が向けば、大きな月が視界一面を占める。
淡く金色に輝く月の表面の模様もよく見える。空に手を伸ばせば掴めてしまう距離にあるのではないかと錯覚するほどだ。
戯れに手を伸ばしてみようかと思った瞬間、流れる雲がまた視界を遮る。
ああ、今日はやっぱり観測には適さなかったか…。でも見れてよかった。また、満月を見れるだろうか。
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あたしは、望遠鏡。遠見を目的に作られた道具。1人では見れない景色を、手の届かない景色を、彼らの夢を見せるのがあたしの生まれた意味。
遥か遠い星空よ。今も変わらず彼方の夢をみる人間よ。
あたしにドーンと任せてちょうだい。必ず、繋いで夢とロマンを届けたげるから!
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