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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    昔のキスを思い出す宜野座さん。
    800文字チャレンジ70日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    ふいうち(星空) 狡噛はハプニングを好むところのある男だった。たとえばレンタカーが動かなくなった時、レンタルしたAIにバグを発見した時なんかにそれは発揮される。それから彼はサバイバル技術にも長けた男で、学生時代には全時代的なキャンプもした。火を起こすところからは流石に始めなかったが、それに近いことはした。杭を打ったり、湖の水を汲んだり。それでも一番俺が予見できなかったのは彼が密かに持ち込んだ酒で酔っ払ってしたキスだった。あれは俺にとって初めてのキスで、彼はそうじゃないかもしれないが俺にとっては衝撃的なことで、へらへらと笑うでもなく、真剣な表情で、今まで親友だった男が恋人に変わる瞬間を見てしまって、俺は混乱したのだった。ふいうちのキス。あれから俺たちの全てが始まったのだ。
     
    「対象を確保。すぐ帰投する」
     ロシアンマフィアの下っ端の運び屋を捕まえて、デバイスに向かって、正しくは花城に向かって報告する。すると彼女は了解を返信をして、俺は暴れる彼の首を軽く突いて意識を失わせ、狡噛がその隙に手錠をかけた。今日は簡単な仕事だった。最近流行ってる誘拐事件の運び屋を捕まえればそれでおしまい、あとは公安局に引き継がれる。
    「日が明るいうちに終わったな。何か急ぐことでもあったか?」
     行動課の車に乗り込んで狡噛が言う。ちなみに、くだんのロシアンマフィアは後部座席で眠っている。
    「いや、別に……。早い方がいいだろう、終わらせるには」
     狡噛にそう言うと、彼は笑って小首をかしげた。答えを知ってるって顔だ。それに実際知ってるんだろう。言わないだけで。
    「当ててやろうか? 今日は俺たちが初めて……」
    「それ以上言ったら爪を剥がしてやる」
     後部座席の男とどっちが捕虜の扱いか分からない言いようをして、俺たちは海外調整局のビルに進む。実を言うと、今日が初めて狡噛とキスをした日だった。いや、それは正確じゃないな、俺たちが正式に付き合おうって、満点の星空の下で、狡噛が言ってくれたそんな日だった。だから彼も浮かれているし、俺もまぁ浮かれている。
    「せっかくの日だから、たっぷりご馳走してやるさ」
     狡噛が腕を組む。そのご馳走が何かは知らないが、俺にとってふいうちであることは確かだった。彼はサプライズが上手い。起こると知っていても驚かせるところがある。
    「期待してるよ、狡噛」
     俺はそう言いながら車を走らせる。過去の星空を思い出しながら、まだ純粋だったキスを思い出しながら。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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