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    Nullpoint_mdzs

    @Nullpoint_mdzs

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    Nullpoint_mdzs

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    ズデン持ってるけど、他の方楽器が多いので江澄もなにか…と思って。楽器でも良かったんだけど、やっぱり吟って欲しいという私の願望を詰め込みたい。

    #曦澄
    #mdzs

    君がため(sample) 今宵も雲深不知処には笛の音が響き始めた。魏の若様がいらしてからは昼も夜も華やかになったと藍曦臣はひとりごちる。
     それまで哀しげに響いていた琴の音は、笛の音を得てからとても嬉しそうで、こちらまで嬉しくなったものだ。
     はて、今日は琴の音が聴こえないなと不思議に思ったときだった。
     笛の音に重なったのは歌声。
     低音は静かに、高音は透き通るような……忘機ではない……としたら、と考えて思い当たったのは江宗主。
     そうだ、蓮の収穫も終わり落ち着いたからと雲夢の荷風酒を携えて、夕刻から彼が遊びに来ていたのだった。
     始めは遠慮がちであった歌声も、興が乗ったのか次第に力強く艶やかさが増していく。
     心地よい歌声に、藍曦臣はいつの間にか裂氷を口元に当てていた。
     二人の、久しぶりであろう合奏に水を差してはいけない。そう思いつつも、この歌声に裂氷の音を重ねたくなってしまった。
     一節だけでも。
     裂氷の涼やかな音色が加わって、まだ暑さの残る雲深不知処に心地よい風が吹く。
     笛の音の間をすり抜けるように歌声が響き、それを追いかけるように笛の音を重ねる。
     こんなに心地よい気分は久方ぶりで、あと一節、あと一節、と引き延ばすうちに亥の刻は間近に迫っていた。


     朝、身支度もそこそこに客間へと向かうと、向こうから魏無羨が歩いて来るのがみえた。
     「魏の若様、おはようございます。江宗主はまだお部屋ですか?」
     「沢蕪君、おはようございます。江澄ならいまさっきここを出ました。慌てることなんてないのに、俺まで叩き起こされて...…あ!それより昨日の笛の音は沢蕪君ですよね。江澄と合奏してたら、急に笛の音が聞こえてきてビックリしたけど、沢蕪君と合奏する機会なんてそうそうないからーー」
     江晩吟がもう帰ってしまったと聞いて、その後も矢継ぎ早に話す魏無羨の話を、藍曦臣はほとんど聞いていなかった。魏無羨に二言三言返して、その場を離れると、踵を返していま来た道を戻った。

     寒室に戻ると筆を取り、簡潔に用件を書いて門弟に託す。返事は来るだろうか。来なかったら……と考えて、文を出したばかりなのにそわそわと落ち着かなかった。
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    PROGRESS長編曦澄17
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     江澄は目を剥いた。
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    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
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     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
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     藍曦臣は眠っただろうか。
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     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
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     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
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     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
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