裂帛の気合と共に繰り出された容赦ない拳を、自分の胸に当たる寸でのところで受け止める。
パンッと小気味良い音が玄関に響いた。
僕が受け止めたことを、むしろ当然だと言った様子で、にっとナガラは笑う。
中学生になり、手足がにょきにょきと伸びている弟は、元から片鱗を見せていた武道の才をさらに伸ばしている。その拳が軽いわけない。
じんと痺れた掌を僕は見せるように振って苦言を伝えた。
「これから試験を受ける兄の手を使えなくさせる気か」
「アニキがこの程度で手を使えなくなるわけないだろ」
両腕を頭の後ろで組んであっけらかんと言い放たれる。そのナガラの後頭部を、僕を見送るためにナガラの後ろにまで来ていた母がポカリと殴った。
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