『証明問題』 カリカリ、鉛筆の黒い頭が紙に削られていく音が心地よい。
宿題のプリントと自立するタイプの筆箱を置いただけでいっぱいになってしまうローテーブルで、シンは背中を丸めて目の前の作業に集中していた。
せっかくの休日、先日から独身寮の俺の部屋で『遊ぶ』約束をしていて、朝から春の陽気のように受かれていたのだが、どうしても進められない箇所があると眉を八の字に下げながら宿題を持ち込まれた時は機嫌が曇った。
しかし俺の気分が完全に低落する前に、上目遣いでの「助けてよ」は効いた。
誰もが自然と手を貸してやりたくなるような人望と魅力を持つ奴だが、真正面からそのワードを聞ける者は案外少ないのではないだろうか。何だかんだで自分の中で抱え込みがちな所は俺と似ている。
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