Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    meemeemeekodayo

    基本かくか受けで文章を書いている者です。たまに別ジャンル

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 🍬 💎 🎠
    POIPOI 49

    meemeemeekodayo

    ☆quiet follow

    彧嘉。
    嘉のピンチに駆けつけてくれる彧の話。

    #彧嘉
    yuga

    SUPERMAN「郭嘉殿!」
    耳を劈くとはまさにこのことだ。薄汚い家、物置小屋と言って差し支えないような埃っぽい空間で半分衣服を脱がされて乱暴をされる一歩手前であった郭嘉は冷静にそう思った。
    暗くて人の目に付かない場所で悪漢がすることと言えばひとつで、勿論そんなこと望んでいないのだがされるがままでいたのは必ず助けが来ると知っていたからである。郭嘉に対して鼻息荒く覆い被さっている大男は見るからに粗暴で此処へ連れて来られる際も強引に腕を掴んできた。汚い床へ投げるように押し倒されて顔が見える。知らない男だった。欲情して事に及んだのか或いは誰かの差し金か、下品な言葉をぶつぶつと呟きながら胸倉を掴まれる。力任せに郭嘉の着ている衣を引き裂き肌が晒された辺りで、雷霆のような声が空気を破った。
    「離れなさい!何を、しているのです!」
    見たことない程の殺気を纏って現れた彼に悪漢だけでなく郭嘉も思わず肩を強張らせた。普段は温厚で凛とした幼馴染の知らない形相に呆気に取られる。荀彧とは、案外怖ろしい人なのかもしれない。
    郭嘉の上に乗っていた輩は反射的に扉へ向かっていった。対峙すればなかなかの体格なのだが荀彧は怯むことなく立ち向かい、というより流石の覇気に気圧されたのか大男は尻尾を巻いて逃げてしまった。
    逃げた先を確かめるためか荀彧も少々追いかけたようだがすぐに戻ってくる。そして仰向けのままの郭嘉の元へ素早く駆け寄ると彼の愛用する外套を掛けてくれた。
    「無事ですか郭嘉殿……あ、ああ、傷が……他は、ど、どこか痛む箇所は……!」
    「落ち着いてよ荀彧殿」
    「あ、貴方は!落ち着き過ぎなのです!」
    どこまでも真剣に心配をしてくれているというのに慌てふためく荀彧の姿を見た郭嘉の心は凪いでいた。冷静でいればいるほどそれに反して相手の動揺が増していくのだから己が慌てふためく必要はない。加えて、組み敷かれることに慣れているせいか郭嘉は肌を晒されることに抵抗はなかった。
    包み隠さず思っていることを口にしたら荀彧は卒倒しそうな勢いだったため無論郭嘉は今思ったことを胸に仕舞っておく。そして彼の心配に感謝をしてこの場を離れることを提案した。
    「歩けるのですか、郭嘉殿」
    「うん」
    着ているものは駄目になったが被害と呼べるのはそれだけで身体には何の影響も及んでいない。押し倒された際に打った背中の痛みはじんわりと残っているものの恐らく内出血はしていなさそうであり。掴まれた腕を確認しても痣すら付いていなかった。
    「無理はなさらずに……ゆっくり行きましょうか」
    起き上がるのにも手を貸してくれた荀彧はありったけの慈しみを込めた声で囁いた。
    郭嘉とて暴漢をあしらう程度の力はある。投げ飛ばせなくても抵抗して男と床の隙間から脱出するくらいは出来たはず、と己では信じている。それをしなかったのは先の通りやって来る荀彧の姿を予想したからなのだが、もしかすると彼は郭嘉が本当に抗えなかったと思っているのかもしれない。強がりで平気な風に装っているのだと捉えている可能性は大いにあり、だから外に出て歩いているというのに手を離してくれないのだろう。
    「背中はね、痛いのだけれど歩けないほどではないから」
    「ええ」
    「荀彧殿、ねぇ、手」
    「どれだけ心配したか、わからない貴方ではないでしょう」
    二人が並んで歩いている姿をわざわざ観察する者はいない。仮に存在したところで今の彼ならば気にも留めないのだろう。袖で隠れているから見えないが衣の中で絡まる指は熱く固く、解けなかった。
    不安だったと言われれば郭嘉は何も返せない。取られた手はそのまま、行き先も荀彧に任せて大人しく今までに無いくらい素直に言うことを聞いておく。
    「こんな、まだ暗くないというのに貴方の姿が急に見えなくなって……」
    「夜だったら心配してくれないの?」
    「そういう話ではありません、状況というものがあるでしょう。郭嘉殿、私は」
    「もう、そんなに……焦らなくても平気だよ」
    怒らなくても、と口に出しそうになったところを直前で止めて言葉を変える。変な間が出来たせいで荀彧は悟ってしまったようだがそれに関して呆れることはなかった。
    「ごめんね」
    謝罪は狡猾だと郭嘉は理解していた。謝れば余計に荀彧の焦燥を加速させ、且つ郭嘉への庇護欲を駆り立てて逆に彼の方が気まずい思いを抱き始める。本気で言っているはずがないと向こうも理解している癖に、互いが持っている曖昧な感情のせいで少しだけ拗れていく。
    「……いいんですよ。何処にいらしたって貴方を見つけられますから」
    綺麗な鼻先が郭嘉へ向いた。緊張気味だった表情も和らいで微笑む余裕すらあるらしい。
    「たとえ進む道が険しくても、ずっと一緒に歩いていきます」
    「置いていってもいいのに」
    「いいえ。繋いだ手を私が離すとお思いですか」
    現実の話だけではないのだろう。郭嘉には確信があった。繋がれた手に籠っていく熱は一向に逃げず痛覚が刺激されるようで互いの血の流れが呼応していた。己が寛ぐと彼は気を張って、彼が緩めば今度は郭嘉の方が抑圧感を覚える。悪くない締め付けだ。
    「なら、置いていかないで。ね?」
    先にいなくなるのは己の方だろうに、理解していても郭嘉の口は容易く動いた。絡む指の力が強まる。互いに腕を引っ張る勢いで歩き続ける二人の行く先は、しばらくは明るかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺🙏🙏👍👏🌠💕💯💘✋✨💗💖💞❤💴👍👍😭💘👏👏👏💴💒💯💖🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works