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    龍神曦×供物澄になる予定の格納

    何も始まってないヨ

    気が向いたら続く

    #曦澄

    龍神曦×供物澄(予定)高く聳え立つ山々が連なるこの雲夢にはとある言い伝えがあった。
    山奥にある渓谷にはそれはそれは美しい龍神様が住まうという伝承だ。
    雲夢が国として形をなした頃から 土地を護り続けているその神様は水を司り、作物がよく育つように雨をふらせ、雲夢に流れる川の水を透き通らせ、豊かな土を作り、雲夢の名物の蓮を美しく咲かせるのだと。
    江家の次期宗主だと教育されている江澄は龍神様の話を幼い頃から耳にタコができるくらいに聞かされて育った。幼心に勉強は楽しくはなかったが、龍神に纏わる話だけは自分からよく教育係にせびったものだ。そして、この話を聞く度に、龍神様はどれほど美しいのだろうか、いつか一目だけでも会えないのかと想いを馳せていた。
    だがしかし、今や江澄は龍神に大してとてつもない怒りを抱いていた。
    ここ数年、雲夢では降水量がだんだんと減っていて、前年までは月に二、三度降る雨のおかげで耐えられていたが、ここ数ヶ月では一滴の雨も降らず、ついに細い川が乾き切ってしまった。
    まだ水路になるような大きな川には影響が出ていないが、雲夢に残る歴史書を頭に叩き込んでいる長老達はこの現象に渋い顔をしていた。
    そして、思案の末、山の麓に新しい祠を作り、毎日のようにお供え物をし、祈りを捧げた。
    だが、一月経っても雨は降らない。二月経つと大河の水嵩が減った。三月経つ頃には蓮花塢の蓮池に咲く蓮が咲き誇る時期だというのにしおしおと枯れていった。
    街のあらゆる所で龍神様に祈りを捧げる声が聞こえて来るが、一向に雨は降らない。
    民達はこのままでは飢餓してしまうのではないかとじりじりと迫り来る悪夢に怯え、あの明るく奔放な町は暗い雰囲気に包まれていた。
    そして祠を立ててから四月が経つ頃、雲夢の直系の娘を贄に。という話が出た。
    雲夢の娘、つまり江澄の姉、江厭離である。
    この話が出た時、江澄と魏無羡は長老たちに殴り掛かる勢いで反発した。母も同じように反対したが、発案した長老立ちによれば、数百年前、同じように雲夢に干ばつが訪れた際、村の娘達をいくら捧げようとも年単位で雨は降らず、雲夢は酷い飢饉に見舞われたという。打つ手なしとなり、泣く泣く江家直系の娘を龍神様に捧げたところ、その日から三日三晩雨が降り注いだのだど。
    つまり、贄になるには直系の娘しか意味をなさない、と。
    厭離が未婚なのも理由のひとつだった。
    先日やっと厭離と金子軒は想いを通わせて、時折仲良さげに共に出掛けるようになったばかりなのにこの仕打ちはあまりにも惨い。
    厭離を贄にという話は金家にも伝わっているようで、怒り狂った金子軒が何度も江家に乗り込んできているようだが、雲夢の長老達に阻まれているようだった。雲夢の長老たちは長く闘ってきた歴戦の修士である。まだ17ぽっちの江澄たちがどうこうできる相手ではないのだ。

    そして、今日、厭離は龍神様の嫁に行く。
    神輿に乗せられた厭離を雲夢の門弟たちが担いで山を登る。門弟たちは真っ黒な衣に身を包み、顔を雑面で隠していた。江澄も門弟と同じ格好をして、神輿の前を先導した。両親や長老たちには同行するのを止めるよう説得されたが、頑として譲らなかった。山奥を睨みつけながら進み、山の中腹まで来たところで神輿が止まる。
    神輿で行けるのはここまでだ。ここからは贄の娘が1人と、龍神様が住まう場所に建つ鳥居までの護衛が1人だけが前に進める。
    護衛というのは建前で、つまるところ監視役だ。
    江澄はこの役だけは誰にも譲るつもりはなかった。
    神輿から降りる厭離の手を取る。
    神輿から降りた厭離はただ1人だけ雑面を付けておらず、全身を真っ白で飾り気のない衣装に身を包んでいて、そのせいか酷く顔色が悪く見えた。
    厭離の手を取ったまま山を登る。門弟達の姿も見えなくなるくらい進んだところで江澄はぽつりと呟いた。
    「どうして姉上が」
    みっともないくらい震えた声に、厭離は穏やかな声で言った。
    「泣かないで、阿澄。もう決まったことだもの、仕方ないわ」
    俯いた江澄の頬を厭離の細い指が優しく撫でる。
    半月前より細くなってしまった指に江澄は唇を噛み締めた。
    厭離がこんな真っ白な衣装ではなく、真っ赤な華服に身を包んで笑うところが見たかった。
    ____今から逃げ出せば、見つからないのではないか。
    何度も頭を過った考えがまた脳裏を埋め尽くす。
    逃げ出す機会があるとすれば、今だけなのだ。
    口を開きかけた江澄は眼前の木々が不自然に揺れたのを感じてはっ、と顔を上げた。
    いつの間にか目の前に立派な鳥居が現れていた。
    「姉上、下がって!」
    厭離の前に立ち塞がった江澄に強い風が吹き付けて、顔にかかっていた雑面がひらりと飛ばされていった。急に明瞭になった視界に目を細めた江澄は鳥居の向こうから強大な影が恐ろしい速さで近づいてくるのを見て、背後にいた厭離を力の限り茂みに向かって突き飛ばした。
    「金兄!」
    厭離が地面に倒れるよりも早くその身体を受け止めた男の名前を呼ぶ。
    雑面に顔が隠れているが、その姿は間違いなく金子軒である。神輿を担いできた門弟はみな修位の低いものだったので、江澄以外の誰にも金子軒の存在は気づかれていないだろう。
    ____姉上をよろしく頼む。
    金子軒と目線を交わした江澄はくるりとこちらに向かってくる影と向き合うと、きっと影を睨みつけて鳥居に足を踏み入れた。



    鳥居をくぐった瞬間、とぷん、と水に落ちるような感覚がした。
    思わず息を止めた江澄だったが、服も髪も濡れておらず、恐る恐る息を吐き出した。
    どうやら水の中にいるような感覚は鳥居をくぐった時だけのようで、ほっとすると同時に深く息を吸い込む。
    それと同時に目の前に大きな影かかかった。
    見上げれば、そこには真っ白な鱗に珊瑚のような美しく白い角に満月のような金色の瞳をした龍がいた。
    ____美しい。
    余りの厳かな美しさに見惚れて江澄は息を飲んだ。
    「こんな所に人の子なんて珍しい」
    穏やかな笛の音のような声だった。
    その声には、と我に返った江澄は慌てて拱手をして頭を下げた。
    「龍神様、私は雲夢江氏直系の子孫。供物として遥々参りました。どうか雲夢に雨を降らせて頂きたいのです」
    厭離のことを見られていなければいいのだが。
    言い伝えが本当なら男の江澄では贄にならない。もし厭離のことを追いかけられたらそれこそ打つ手なしだ。
    「供物?」
    「はい。雨乞いの捧げ物にございます」
    「雨乞い…。たしかに最近姑蘇の様子ばかり見ていたけど、そんなに酷いことに?」
    「四月半程雨が降っておりません。細い川は干上がりました。民が、いつ飢えるのかと怯えているのです」
    そう言った江澄に龍神はふむ、と頷いた。
    「分かった。雲夢に雨を降らせよう。」
    「本当ですか?!」
    「代わりにあなたには私の子を孕んでもらおう」
    ぱっ、と顔を明るくした江澄はその言葉にぴしりと身体を固まらせた。
    ____子を、孕む?俺が?
    「…それは、」
    頭が真っ白になった。
    ____素直に男だと言うか、いや、それで返されたら姉上が危ない。孕めないのなら喰われる代わりに姉上は見逃して貰えないか____
    「どうやらあなたはおのこのようだね」
    「……はい」
    「おのこがここに来るのは初めてかもしれないね」
    「恐れながら申し上げます。どうか、雲夢の娘達には手を出さないでいただきたい。私の身なら龍神様の好きにして下さって構わないから」
    震える声でそう言うと、龍神はかすかに笑った。
    「本当に?」
    「嘘はつきません」
    ここまで来たら腹を括るのみだ。江澄は龍神の瞳を真っ直ぐに見つめて頷いた。















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     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
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     やはり金鱗台での、あの八つ当たりはいけなかったか。あの時は正当な怒りだと思っていたものの、振り返れば鬱憤をぶつけただけの気がしてしかたがない。
     藍曦臣に呆れられたか。
     だが、そうとも断じきれず、未練たらしく文を待ってしまう。あの夜の藍曦臣の言葉が本気であったと信じたい。
     大切な友、だと言ってもらえた。
     何故これほど仲良くなれたのかはわからないが、驚くほど短い間に打ち解けられた。江澄とて彼を大切にしたいとは思っている。
     わかりやすく喧嘩をしたのであれば謝りに行けるものの、そうではない。一応は和解した後である。それなのに距離を開けられるとどうしていいかわからない。
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