【現パロ】梅と菊 「今生は雅の出産に立ち会いたいなあ」
朝寝をした後、晋作はぽつりと独り言のように口にする。隣で寝ていた雅子はその言葉を聞きくるりと晋作の方を向いた。
「出産ですか?」
「ああ、前世は僕はそばについて励ましてやることも出来なかったからな」
「その変わり義母様たちが傍についていてくれましたよ」
「でもさあ…結構僕としては後悔の一つなんだよなあ」
「…晋様も後悔なんてするんですね」
「するとも!というか後悔ばっかりだよ」
そう言ってからからと笑って晋作は雅子の肩を抱いた。素肌が触れ、雅子は熱いくらいだった。
「後悔しないようにはしていたけど後悔はしたさ。それこそもっと長生きしたかった…とかね」
ウインクして言うが笑って言うようなことではなく思わず雅は頬をつねった。
「いたた」
「笑って言うことではありません」
「はは、うん…ごめん」
「でも、どうして突然?」
「雅と同じように記憶を持ったまま再会して恋をして、こういうこともしてさ…考えたんだよね。今の世では旦那が立ち会うこともあるわけだし、子供だっていてもいなくたって何にも家には影響しない。けどもし生まれるのなら…その光景を目に焼き付けたいって思ったんだ。以前の僕はそういうのを見られるような状況じゃなかったし」
「……また、【梅】をつけますか」
「…それもいいが【菊】でもいいな」
「まあ、菊」
「まだまだ遠い未来の話ではあるけども…君の名を冠する子供なんて素敵だろう?」
「梅もきっと素敵ですよ」
「…男なら菊、女なら梅かな」
「どうして?」
「男は母親に、女は父親に似るっていうだろ?」
そう言って未来のことをもうすぐ来ることかのように話す。雅子は梅が好きだと言っていた彼が自分の名の一つでもある菊のことを口に出し、そしてそれを認めてくれたような気がして嬉しくなりそっと身を晋作に摺り寄せた。
「雅?」
「…いつか、身籠った日は…頑張らせてくださいね」
「死なない程度に頑張ってくれ。子供がいても君がいなくちゃ意味がない。母子共に健康、それが一番だ」
白く歯を見せて笑う。そんな晋作に雅も笑い、素肌をくっつけ合う。遠い未来とはいったがそこまで遠くはない未来のような気がしてならない雅子だった。
-了-