【現パロ】公園の君 男同士集まって話す内容に下世話なものが混じるのは必然でありしょうがないと思う。そう思いながら休み時間、僕は雅とメッセージのやりとりをしながら友らの会話に耳を傾けた。
「その、最近ずっと話してる【公園の君】って誰?」
「何!晋作、知らないのか!」
「ほら、晋作ってば許婚殿にゾッコンだからさ」
「写真すら見せてくれないのはどうかと思うけどな」
「誰がお前たちに雅の写真を見せるか」
「なるほど、雅というのか…」
「おい」
「ははは、冗談だ」
そう言って僕の友たちは笑った。
「ああ、それで【公園の君】のことだったな」
「ああ」
「近くの女子校の制服を着ている僕らと同年代くらいの女の子なんだが…それがまあ美人で!」
「よく公園のベンチに座って読書をしながら誰かを待っているんだ」
「ある時は譜面を読んでいた時もあったな」
「ヴァイオリンを弾いている時もあったぞ」
「つまり?」
「高嶺の花として僕たちは彼女を遠くから見つめ、一日の糧としていたんだが…」
「白石先輩が彼女に告白したらしいんだ!」
「しかし、フラれたらしい」
「フる時も可憐だったらしい」
「許婚がいて、その人が好きなんだとも言っていたとか」
「許婚か〜そりゃ敵わんな」
「そうそう…許婚…うん?」
そう頷いていた友たちはぴたりと動きを止め僕の方を見る。
「な、なんだよ…」
「晋作の許婚って、近くの女子校だったよな?」
「ああ…うん?まさか…」
そして僕らは頷きあった。
***
「雅!」
「晋作様!…あら?」
僕の声に気付き駆け寄ってきた雅は僕以外の姿を見て首を傾げていた。しかし、友らは【公園の君】つまりは雅が僕の許婚であることを知り苦しみ嘆いているようだった。
「あの…?」
「何、雅が気にするようなことじゃない」
「でも…あの、晋作様のご友人の方々なんですよね?」
「まあ?」
と困ったように笑えば意を決したように前に進み出て、雅は声をかけた。
「あ、あの!」
その可憐な声に思わず皆顔を上げた。皆、こんなに近くから雅を見たことがなかったのだろう頬を薄く赤らめていた。
「晋作様の許婚の雅子と申します。いつも、晋作様が大変お世話に…」
「いやいや、そんな言われるほどお世話なんてしてないですよ」
「晋作がああなのは昔からですし」
「そうそう」
「おい、酷い言い草だな」
思わず顔を顰めたが皆、笑っていた。緊張が解けたようだった
「雅子さんは晋作のどこが好きなんです?」
「あ、俺も聴きたい」
「おい」
そう咎める僕だったが恥ずかしそうに雅子は笑って答えた。
「私の持たないものを持っているところが好きです、優しいですし」
その蕩けるような笑顔に惚ける皆から僕は守るように雅の前に立つ。
「見るな!見るな!見せ物じゃないぞ!」
「嫉妬深い男は嫌われるぞ、晋作」
「うるさいなあ!」
ふふ、あはは、と公園を中心として笑い声が響く。僕はただ雅が不快な思いをせず楽しそうなだけで嬉しかった。
***
「【公園の君】だなんて恐れ多いーー、」
「それだけ君が綺麗で可憐で可愛らしく美しく皆の注目の的だったってことさ」
皆と別れた僕たちは手を握りながら雅の家へと向かう。
「…告白って結構されるのか?」
「どうでしょう。普通どれくらいされるのかが分かりませんので」
「そうか…」
「でも、一番ときめいたのは晋作様の告白ですよ」
にこりと笑う雅に僕の心臓は握りつぶされたような気がした。
「今日はヴァイオリンの稽古だったっけ」
「はい」
「終わる時は連絡を入れてくれ、迎えに行く」
「はい」
「じゃあ、またあとで」
そう言って軽く口付けを交わす。これだけの逢瀬が僕にとっては特別に思えた。家の中に入っていく小さな雅の背中を見つめ続け、消えた後はぁ、と息を吐く。
「…やっぱり不安だ」
待ち合わせはやめて迎えに行こうか、でも待ち合わせはそれはそれで恋人っぽいし…と思い悩む僕だった。
-Fin-