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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
    Pixiv https://www.pixiv.net/users/3373730/novels
    お題箱 https://odaibako.net/u/palco87

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    palco_WT

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    トリガーエラーでベイルアウトできなくなったり何だりで取り合えずはぐれたこどもを保護してホームセンターに立てこも(ってさりげなくいちゃいちゃして)る水上と王子

    (だいたいミストとパニックマーケットとゲームのほうのデッドライジングのせい)

    #水王
    waterKing

    「大丈夫や。兄ちゃんたちが必ずうちに坊主を返したる」
    「みずかみんぐ……っ」
     トリガー解除した水上に息を呑んだ王子に、彼は構うな、と目だけで制する。
    「人の体温は落ち着くからのう」
     それでも尚ぐずるこどもの指先を、水上の掌が柔らかく握る。その指先はこどもの高めの体温を伴っているはずなのに、ひんやりとしていて痛ましかった。
    「……♪」
     軽く咳払いした水上の唇から流れたのは、低く落ち着いた、少しだけ時折つっかえているのがむしろ微笑ましい歌声だった。初めて耳にする水上の歌声に目をぱちぱちとさせた王子も、おそらくは彼らよりも年かさの人間も親しんできたであろう絵本を原作としたアニメの主題歌だ。テンポはあやすようなゆったりとしたアダージョ。王子も水上の歌声に重ねるように柔らかい声で、元気と勇気を携えた子供たちのヒーローの歌を口ずさむ。
     やがて水上の腕の中のこどもはすやすやと寝息を立ててしまっていた。
     ええ子や、と言いたげに水上はその頭をそっと撫でると、こどもを抱えて立ち上がる。ちょっとだけよろけそうになったのはご愛敬だ。王子は意図を察して、売り場から毛布と大きめのバスタオルを数枚拝借すると水上の先回りをする。家具コーナーの一角に置かれたベッドのひとつを見繕って、バスタオルをシーツ代わりに敷いて、バスタオルを二枚くるくると丸めて枕もどきを作り上げ、水上がこどもを運んでくるのを待つ。水上はそのセッティングを目にすると、「おおきに」と唇だけで形作って、こどもの眠りを乱さないようにそっと寝かせる。王子はその小さな体をバスタオルで覆ってから毛布を二枚重ねてかけてやってから、少し考えてディスプレイされていた、恐竜のぬいぐるみをその子供の傍らに置いてあげた。辻ちゃんなら喜びそうだな、と思いながら。
    「何かの拍子に目が覚めた時に柔らかいものがあったほうが安心するでしょ」と水上にひそやかな声で囁く。
     寝入る子供の顔を覗き込む王子の顔は穏やかで優しく、愛らしいという形容に相応しいながらもその皮膚一枚下には何が潜んでいるのか分かったでもない普段の笑みとは明らかに違うものに見えた。水上が、こいつこんな顔も出来るねんな、とうっかり思ってしまう程度には。
    「どうかした?」
    「別に」
     万が一にもはぐれたトリオン兵が入り込もうとする可能性を考え、ふたりは足早に急ごしらえのバリケートでふさいだ出入り口へと足を向けた。
    「意外に子供の扱いが上手いんだね」
    「あー、将棋道場に来る、こまい連中のお守もたまにしとったからかもな」
    「そっか」
    「せや」
    「いいお父さんになれそうだね」
    「どうかのう」
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    palco_WT

    DONE幸福の条件

    https://twitter.com/palco87/status/1336247005849350144 で蔵っちが一番だったのでつい書いた~
    たまには三人で食事をしないかと、蔵内が王子と水上に打診されたのは一週間ほど前のことだった。
     同隊である王子はともかく、生駒隊の水上とは防衛任務等の兼ね合いもあったが、たまたま週末にスケジュールが空いていたのでその日に王子が予約したというレストランで落ち合った。
     そもそも、王子と水上がわざわざ顔を揃えて尋ねたあたりで、これは何かあるなと察しはしたが、デザートまでたどりついたあたりで「ぼくたち籍を入れようと思うんだ」と言われて、少しばかりは驚くのではないかと思ったけれど、予想していたよりすとんと蔵内の中では腑に落ちた、というのが正直なところだった。というか、むしろ王子みたいな人間がそういう世間のシステムの迎合しようとしていることのほうが、少々意外な気持ちではあった。
    「……おめでとう。幸せになれよ、っていうのは陳腐かな。おまえたちなら誰に言われなくても自力でどうにかするだろうから」
    「そうだね! さすがはクラウチだ、ぼくらをよく分かってる」
     おおきに、と告げる水上の口調がぶっきらぼうなのは照れ隠しだ。対照的に王子は背中に大輪の薔薇とヒマワリとカスミソウを背負っているような爛漫とした笑 1098

    palco_WT

    DONETricks 199話の弓場隊+王子蔵内の中華ご飯のその後の小話。弓場王の過去がある水王。
    https://twitter.com/palco87/status/1338726343077326848
    「みずかみんぐ、お土産持ってきたよ~、蘿蔔糕と春巻」
    「おう、すまんな。ちょうど腹減っとったところや」
     ご機嫌な様子でドアを開いた王子に、水上は米朝の二階借りの落語のDVDを止めて玄関へと顔を巡らす。
     軽やかな足取りで、王子は美味しい匂いのするドギーバッグを彼が座っている前へと置いた。おおきに、と戻ってきた恋人に水上は軽くキスをする。
     こんなやりとりもいつの間にか日常になってしまっているのだから、人は慣れる生き物だというのが水上の正直な感慨ではある。
    「で、どやった、神田の追い出し会」
    「美味しかったよ~」
    「どんな感想や。せめて、追い出し会じゃなくて打ち上げとか慰労会ってツッコミ返せーや」
     ボケた甲斐がないではないか。明敏な王子ならすぐに打ち返してくると期待しているのだし。
    「だって弓場隊を抜いたぼくが、中位落ちになっちゃったランク戦打ち上げに顔を出しましたっていうのもね。ちょっと無神経っていうか」
    「自分、そういうところは気ぃ使いやのう」
    「尊敬する先輩と古巣には配慮するさ、さしものぼくだって」
    「ほうほう」
     頬に触れる掌に、王子は撫でられた猫みたいな顔で水上を見やる。だ 1264

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    DONE遠征選抜の説明会後のみずかみんぐとおーじちゃん♀(半同棲)「お風呂いただいたよ、ありがとう」と脱衣所から出てきた王子は、オーガニックコットンのパジャマに、色白の肌がより生えるオフホワイトのカーディガンを羽織り、頬やうなじを淡いバラ色に上気させて何とも愛らしい風情で、畳の上に座りこんで遠征試験に関しての要綱に目を通していた水上の背中に、もたれるようにして膝を抱えて腰を下ろした。
     柔らかい背中の感触と、ふんわりとまとった甘い香りにもすっかり馴れてしもうたな、と水上はぼんやりと思った。今は湯にぬくめられた温かさとシャンプーの匂いにも包まれているけれど。
    「ねえ、みずかみんぐ」
    「なんや、二番隊隊長」
    「そう、それさ」と王子は背中合わせのまま、水上の片腕に自らの片腕を絡ませた。
    「きみはてるてるやカシオに水上隊長って呼ばれるのかい?」
    「……さあ。別にどう呼ばれたいとか全然考えてへんかったわ。実際、生駒隊《うち》かて『生駒隊長』ちゃうて『イコさん』やし。自分とこはどうなん」
    「王子隊のこと? それとも臨時隊のほう?」
    「王子隊」
    「そう言えばぼくもそう呼ばれたことは身内からはないな。ハッパかけてくれる時の弓場さんとか、実況の時くらいだね」
    「せやっ 5021

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    MAIKINGよるのひみつ

    みんぐと王子。恋人のようでいて恋人と言い切れもできず、な関係に刺さってるトゲ。
    「ふう……」
     シーツに手をついてゆっくりと身を起こした彼の唇から、熱をたたえた、艶っぽい吐息がこぼれた。
     王子が交情に浮いた汗を拭う為に後ろ髪をかきあげると、ちらりと襟足のあたりに走る古傷が見える。そこに気づいたのは、肌を合わせるようになってから何回目だったろうか。いや、もしかしたらボーダーのシャワー室で見たとか、クラス合同の体育の授業の最中とかだったのかもしれない。
    「王子、その傷、なんでか聞いてええか」
     ついにたまりかねて、というほどではないけれど、その首筋の少年らしいしなやかさと上気した色に誘われるように問うてしまった水上に、あは、と彼は花びらのような唇に蜜のような甘い笑みを含んだ。
    「どうして聞いていけないと思ってたんだい?」
    「そりゃ事情《わけ》ありなんやろなと」
     触れることで、心にある傷をかきむしることになるのではないかと。
    「そこまで無神経と思われとったか」
    「思ってないよ」と王子は水上の赤毛をくしゃくしゃとかきまぜた。
    「ただ、ごめんね、君はぼくにそこまで関心を持ってないと思ってたから」
    「……セックスまでしとる相手に無関心て、俺、そこまでひとでなしだと思われと 1088

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    MOURNINGさよなら大好きなひと

    三門市を出ていく水上と残されるおーじちゃん♀
    プロットとして手を入れていたんですが、書き上げる棋力じゃないや気力がなさそうなので。
     うっすらと予感みたいなものはあった。
     イコさんが大学卒業と同時に実家へと戻り、当然ながら生駒隊が解散することになって―水上隊として再編するかという話もあったがそれは当人が断り、現在はオッキーと海くんは別の隊に所属して生駒隊で磨いたその腕を存分にふるっている―、遠からず彼もこの街から去ることになるのではないかという予感。
     当たらなくても良かったのに、と王子は、すまん、と膝を正して畳に額をこすりつけるようにして土下座をする赤茶けたブロッコリーをただ見やるしかできなかった。
     水上もボーダーを辞めて、三門市を出ていくのだと言う。まるでかつての隊長の背を追うように。
     トリオンの減衰なんていう、ごくごくあり触れたつまらない理由で。
    「使いものにならへん駒は駒台にかて不相応や」

    →ちょっと前に時間戻る。
     王子隊作戦室:作戦会議が終わって。
    「ぼくとみずかみんぐってどういう関係に見える?」
    「どういう関係も何も恋人同士だろ」
     麗しの隊長の問いに、何を今更とばかりに呆れたというよりは怪訝そうに蔵内は告げた。
     一週間の大半を彼の部屋で暮らし、キスやハグをしている姿もキャンパスで見かけてい 2210

    palco_WT

    MAIKINGこの世の涯【https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14056310】の続き書いてます。ラストシーンだけど、もっともっと煮詰めて書いたら変わるかも。「……嘘つきブロッコリー」
     しぼりだすような王子の声に、隣でコンソールに指を走らせている寺島は彼に悟られない程度に顔をしかめた。
    「最後まで嘘つきだったよ、きみは」
     眼球の裏のほうがかっと熱くなる。あふれ出しそうな涙を、しかし王子の理性は懸命に押しとどめる。
     泣いて、視界を濁らせなどするものか。
     この網膜に、記憶に、彼の晴れ姿を少しでも多く焼きつけて、伝えなければ。
     これから先、もしかしたら長く近界で暮らし、そこで子をなし、育てることになるかもしれないぼくらがしなくはいけないことのひとつだ。
     彼以外、誰をもう愛せるものかと思うけれど。記憶と命を、希望はつないでいかなければ。
     かつて、旧ボーダーが、迅さんや小南ちゃんたちに託したように。
    「……水上先輩のメテオラ、だ」
     喘ぐように元茶野隊の藤沢が呟く。
     次の瞬間、まるで命の輝きのように、眩い光が目を焼く。
     遠征艇という名の箱舟の出立を寿ぐ花火のように。
    「……戻ってくる」
     届きはしないのは分かっていた。それでも王子は叫ばずにはいられなかった。
    「絶対に無事にたどり着いて、戦力を整えて、ぼくたちは戻ってくるから!」
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    palco_WT

    MEMO水王ちゃん♀一泊二日フェリーの旅ドラの音は出航の合図ではなく、出航時間が近づいたので船客と乗組員以外は船から降りろという意味だと聞く。聞きなれないその音が響いた数分後、控えめで上品な案内の声が改めて港から経つことを知らせた。
     奮発しただけあって、自分の古びたアパートなどよりも遥かにたっぷりとした広さと居心地の良さで出迎えてくれたスイートルームの客室の設備を確認していた水上は、手首の時計をちらと確認した。予定時間より三分遅れだ。
    「出航だって、みずかみんぐ」
     アナウンスを耳にした王子はぱっと顔を輝かせ、良人たる水上の袖をじゃれる仔猫がひっかくようにくいくいと引いた。
    「どうせなら港を離れるところを外で観ようよ」
    「外がええなら、そこからプライベートバルコニーに出れるで? スイートの特典やで」
    「もう、きみってばそういうんじゃなくてさ! いいからほら、さっさとカードキー持って」
     水上が扉の内側に挿したカードキーを手に取るのを確かめてから王子は、問答無用とばかりにその腕に自らの腕を絡めると、引きずるように船室を出て行った。はしゃぐ王子にこれだけは、と水上は手荷物の中からマフラーを何とか掴んで、その首と頭をぐるぐると巻 1390