牡鹿フィン主まとめ①☆お代ひねり出してみた 様
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【好きだ、って言ったら逃げるくせに】
「フィーオ」
高く甘く愛を囁く。
これはお前さんにしか聴かせない告白。耳元で告げれば、頬を赤くして逃げを打つ。
「フィオン」
追い掛けて再び囁やけば鬣にそっと指が触れる。
「…フィン」
口付けを落とせば頬が更に赤らむ。撫でる指先に籠る期待。
逃げる癖にそうするのが可愛くて、俺はまた愛を告げた。
【境界線なんていらない】
獣と人。だから何だというのだろう。
俺はフィンを愛しているし、フィンも俺を愛してくれている。
つまり相思相愛。
「フィン」
「フィオン」
そっと口付ける。柔らかな毛と温かな唇が気持ち良い。
「愛してるよ、フィン」
「フィー…」
俺はフィンがどんな姿でも愛していたと胸を張って言える。なぁ、フィン。
【時計の音さえ聞きたくない】
温かくふわふわな冬毛に顔を埋めて擦り寄れば、芳醇なフェロモンが鼻を擽る。
「フィーン…」
甘く囁かれながら優しく額を舐められれば心地良くて離れ難くなってしまう。
「…休もうかな」
時には自分に甘くてもいいだろう。彼は何も言わず丁寧に毛繕いを始めてくれる。
俺は番との甘いひと時に身を委ねた。
☆140文字で書くお題ったー 様
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【こっち見てよ】
王が仲魔の毛を撫でている。優しい指先で長い毛を擽って笑みを見せる。
「…わ、フィン?」
その腕の中に潜り込んで見上げれば、王は仲魔に「交代ね」と告げて俺の首に手を伸ばした。
「フィンはヤキモチ焼きさんだね」
「フィー」
触れる指先から愛しさが溢れる。
仲魔が去った後、俺達は口付けを交わした。
【愛の逃避行】
長い草を掻き分け、剥き出しの地を蹴り、鬱蒼と茂る木々の間をすり抜けもっと奥へ。
王を背に知らない土地を目指し駆ける。
王は「フィンがいい」と言ってくれた。
創世の責務より俺を選んだ。
異種族である為に契ることが出来ないなら世界などくれてやると言った。
だから二人で、幸せになれる場所へ行く。
【ただし、ご注意を】
「可愛いだろ?」と主が自慢気に言う。
傍らには美しい一頭の牡鹿が居る。聞くに彼は主の騎士なのだという。フィン、と呼ばれた牡鹿は丁寧にお辞儀をした。
「…気を付けてね」
挨拶と共に主の手を取ろうとしたが制される。
「俺に触れると彼が怒るから」
言われて彼を見ると唸りながらこちらを睨んでいた。
【ゼロ距離告白】
「フィーオ」
濡れた鼻先が触れる。薄い唇が押し当てられる。緑玉の瞳に深い愛情を湛えてフィンが俺に感情を伝えてくる。大きな耳をぱたりと動かして頬を擦り寄せ甘える。
フィンが文字通りゼロ距離の全身全霊で愛を俺に伝えてくるのが好きだ。立派な鬣を撫でその想いに答える。
「俺もフィンが好きだよ」
【ちゅっちゅする牡鹿フィン主】
「フィ…む」
フィンの口が近付いてきた…と思ったら口より先に鼻が触れた。唇にぴちょ、と濡れた鼻の感触がする。
「フィ」
口付けに失敗したフィンは大きな耳をへたりと下げて申し訳無さげに声を漏らした。
彼の頬を捕らえると口付けし返してやる。
「鼻キスも好きだぞ?」
彼は嬉しげに尻尾を跳ね上げた。
☆お代ひねり出してみた 様
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【愛する人と、僕と君と】※短文
ピクシーは彼の背中に俯せに凭れ掛かりながら、小さな手で立派な鬣を混ぜっ返していた。それを咎めることはなく、フィンは草の上に座り込むと大きな耳をぱたぱたと動かしながら他の悪魔と話している王を見つめている。
「鈍いよねー主は」
不貞腐れた声色に、フィンは耳を跳ねさせると答えた。
『仕方ない。種族の違いもある』
「そうかもだけど」
鬣から手を離し虹色の羽をはためかせて飛び上がると今度は彼の頭の上に座った。
「こんなにアピールしてるのに!」
ぷんぷんという擬音が似合うほど頬を膨らませる彼女の言葉に、フィンは少しだけ笑ってしまった。
牡鹿の姿をした悪魔であるフィンの、主である少年への恋心を知っている彼女は最初こそ興味本位で彼を観察していたが、懸命にアピールする姿にいつしか本当に結ばれて欲しいと応援するようになっていた。だからもどかしい。
しかし以前にもどかしさに耐え兼ねて告白を手伝おうか、と提案した所、彼に断られてしまったので見ているしかできない。
『大丈夫だ。それに、次はどうやって伝えようかと考えるのも中々楽しいもんさ』
そう愉快そうに答える彼に悶々としていると、話を終えた少年がこちらに歩いてくるのが見えた。フィンはゆったりと体を起こすと、ふわふわの尻尾を跳ね上げて歩み寄る。
「何、二人で秘密の相談でもしてたの?」
「フィー」
同じ悪魔であるピクシーと違い、少年の耳にはフィンの言葉は鳴き声としか聴こえない。だから言葉で想いを伝えることは叶わない。
「フィーオ、フィーン」
それでもフィンは構わず少年に聴かせるためだけに求愛の恋鳴きをした。甘く鳴いて頭を擦り寄せるが、少年は甘えん坊だね、と微笑んで鬣を撫でるだけだ。
『愛しています、我が王よ。どうか少しでも想いが伝わりますように』
何度も何度も、その恋鳴きをする姿を間近で見ているピクシーは胸が苦しくなる。けれど手を出すことは出来ない。
撫でられる手を幸せそうに受け入れる彼を見、一つ溜息を吐いて羽ばたき飛び上がると他の仲魔達の元へ向かった。
「…」
きらきらと煌めく羽を揺らし去っていく彼女の背を見送った少年は、撫でていた手を止めるとフィンの前にしゃがみ込んだ。
「フィオ?」
小首を傾げるフィンの、ふわふわの頬を両手で挟むとじっと翡翠の双眸を見つめた。
「あのね、フィン。お前はよく俺にだけ違う声色で鳴いてみせるだろ?何か意味があるのかなって、調べたんだよ」
「…」
少年の言葉を、フィンは耳を立てよく聴こうとした。けれど中々次の言葉が出て来ず、比例して白い頬が赤く染まっていく。眉間に皺を寄せてあー、うー、と唸ると恥ずかし気に唇を震わせた。
「…その、お前さ、本当に恋鳴きを聴かせる相手が俺でいいの?」
「…ミィー」
遂に伝わった想いに、フィンは大きな瞳を瞬かせると尻尾を振りながら『勿論だとも』と答えた。言葉は通じずとも嬉しそうなフィンの様子に質問の答えを理解した少年は、小さく「そっか…」とだけ返し、照れ隠しにふわふわの頬を揉んだ。
「フィ」
「んむ」
そんな初々しい少年に、フィンは一歩前脚を進ませると無防備な唇に口付けた。ふわふわの柔らかい毛と、しっとりとした唇が触れる。
ちゅ、と可愛い音を立てて離れた唇に、少年は熟れた林檎のように顔を染め上げるとフィンの頬を無茶苦茶に揉んだ。
「も、フィンッ、いきなりキスするとか…!お前がそんなに手が早い鹿とは思わなかったよ!!」
「フィー!?」
照れ隠しで乱暴に揉まれついでに撫でくり回された後、ぼさぼさになったフィンをそれとは逆に優しく抱き締めて耳元で囁く。
「俺もフィンを愛してるよ。今まで気付けてやれなくてごめんな」
「…フィオン…」
『そんなことはないよ』と頭を擦り寄せて答える。暫く抱き合い、体を離すと鬣を撫でた。今までよりも優しく愛しさを込めて撫でる指先が心地良くてフィンは目を細める。
『…ほら、大丈夫だったろう』
自分の恋路を心配してくれていた彼女に、真っ先に報告してやらないとと思った。
そして君が応援してくれたお陰でずっと頑張れたんだ、とも。
もう一度幸せな口付けを交すと、フィンはピクシーの元へと吉報を届けに向かった。