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    Mogmogsmaka

    ハマったものを軽率に書いていきたいです。現在は真Vのフィン主メイン。

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    Mogmogsmaka

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    フィン主←ゼウスの、フィンVSゼウスな小話。主ちゃんの水浴びを覗き見するゼ様。

    #フィン主
    finMaster

    付け入る隙きなど有りもせず荒廃した街を駆け回る。瓦礫の山を登り、廃屋に入り、崩壊した街を散策し、時に高いビルから飛び降りる。
    「うえ」
    頼まれていたミマンを抱き抱え、高いビルから砂地に降り立った王がその綺麗な顔に見合わない、蛙が潰れたような声を上げた。王に続いて降り立つフィン・マックールとふわりと浮いているアナーヒターは体制を整えると王を見た。
    「どうかされましたか」
    緋紅色のマントをはためかせてフィンが尋ねた。すると王は左腕にミマンを抱えたまま、自身の長く美しい海色の髪を右手で梳かしながら言う。
    「此処の所休まずずっとミマン回収ばっかしてたから…凄く汚れてる」
    いつもは滑らかに指を通る髪が軋み引っかかっている。その様を見て、フィンとアナーヒターはああ、と顔を見合わせた。確かに最近はギュスターヴに頼まれてはいたものの疎かになってしまっていたミマンの回収を行うために彼方此方のダァトを飛び回っていて休む間も無かった。そう言えば、水浴びをしたのは何時だっただろうか?と思い返して止めることにする。
    「この子を帰したら丁度180体目だし…ちょっと休憩しよう」
    汚れている事に気付いてしまった以上、流石に耐えられないと言う王の申し出に二人も頷いた。気にし始めてしまえば気になるもので、フィンも自分の肌が何となくざらついている気がしたし、マントもすっかり塵で汚れていたのだった。
    回帰ピラーで龍穴まで飛び、骸の館にミマンを届け終えてさて何処で水浴びをしようかと考える。
    「あまり開けた場所で肌を晒すのは…」
    と、眉間に皺を寄せて苦言を呈すのはフィンだ。
    「ん…確かに」
    王自身も仲魔達の十分に強いが、長時間無防備な姿を晒して奇襲を受けては水浴び所ではなく余計な戦闘を行ってしまうだけだ。行った事のある水場を一つ一つ思い返していると、仲魔のアナーヒターが声を掛けた。
    「私が居た水場はどうかしら?彼処は奥まって少し入り組んだ場所にもあるし、居るのは御霊くらいよ。主なら貸してあげるわ」
    確かに彼女の居た水場は高い岩山を登った先から更に奥まっていたし、他に悪魔の居ない秘境のような場所であった。仲魔になるまでその場に住んでいた彼女の有り難い申し出に、王は頷き感謝を述べる。
    「有り難う、助かるよ。じゃあ行こうか」
    再び龍穴に手を翳し、港区・オナリモンの龍穴まで飛んだ。そこから岩山を駆け上がり、崖を跳んで水場へと向かう。青々とした木々と岩場に囲まれている、水の女神である彼女が守護していたその場所は他の水場よりも清らかで澄んでいる。
    「念の為ですが」
    フィンはそう言うとエストマを唱えた。このダァトに居るのはレベルの低い弱い悪魔だけであるが、至高天への鍵を持つ王の事を狙う他陣営の悪魔が襲ってくるのを想定しての事だ。
    「俺は監視をしていますので、どうぞごゆっくり」
    跪いて掌で水を掬う王にフィンが言った。
    「お前も一緒に入ればいいのに」
    踵を返す彼の背中にそう声を掛けるが、彼は頭を振った。この場であっても万が一という事はあり得るし、それに
    「…いや、遠慮しておこう」
    王と従者という主従関係でもあるが、その前に想いを通い合わせ契りを交わした伴侶でもある。仲魔の前とはいえ愛しいヒトの久し振りとなる素肌を見て情欲が浮かんできては困ると思ったのだ。
    従者ではなく伴侶としての物言いに戻ったフィンを見て王も察したらしく、それでも彼に近付きその背に縋ると爪先立ちになりその耳元で彼にしか聴かせない艶を纏った声色で囁いた。
    「後でたっぷり見せてやるから」
    その言葉に白い耳が赤く染まっていく。小さく頷いたのを見て満足した王は指先で彼の首筋を愛しげに撫でると踵を返し、水の畔で待つアナーヒターの元へと向かった。
    月の満ち欠けで一日を管理している為、新月になると休息をして水浴びをしたり、東京に戻りしっかりと風呂に入り身を清めている。今回は些か夢中になりすぎたのだ。本当に、幾ら日数が過ぎていたのだろうとは考えたくない位には。
    奇襲が来た時を想定しナホビノの状態のまま、スーツを脱いで水に脚を浸ける。少しべた付き汗ばんでいる肌に清らかな水の冷たさは心地よかった。
    「髪、流してあげましょうか」
    心地よさ気に溜息を吐く王にアナーヒターが言った。水の女神である彼女は汚れとは無縁のようで、美しく艶のある肌のままだ。
    「じゃあお願いしようかな」
    そう言って背中を向けると、彼女は手慣れたように王の長く蒼い髪を手に取るとその掌に水の玉を生成してゆっくりと流し始めた。女神の手から作り出される清らかな水で、砂や塵を被ってしまっていた髪がどんどんと綺麗になっていく。清められた蒼の髪は一層美しく輝いていた。

    清らかな水辺に美しい王と女神。その光景に惹き付けられる悪魔が居ない訳もなく。

    背後で朗らかな水浴びが行われている一方で、周囲を警戒していたフィンは己の嫌っている気配を察知した。知恵の親指にキスをすると腰に下げている剣の柄を握る。今は水音しか聞こえないこの一帯を翡翠の双眸が鋭く見回す。と、一筋の雷撃と共に一体の巨体な悪魔が姿を現した。
    「ほーう?良い眺めじゃねえか、オイ」
    岩場とフィンの奥にお目当てのナホビノの姿を見つけた悪魔は右半身の端正な顔をにんまりと歪めて肩を震わせ笑った。
    突如現れたその悪魔に対し、フィンは即座に剣を抜くと勢い良く斬りかかる。しかし悪魔は巨躯を翻して容赦のない一閃を躱すと自分を奇襲してきたその姿を見やって今度は肩を竦めた。
    「ああん?アイツの犬っころじゃねえか」
    「…フィン・マックールだ。いい加減名を覚えろ最高神」
    柄を握り直して再び構えを取り、目の前の悪魔・ゼウスを睨み付けて言い返す。ゼウスの指すアイツとは王の事で、彼は王を自分の知恵の代替えとなる存在だと追い回している…が、最近はそれ以上の興味を示しており、度々現れては王の事を心底熱心に口説くのだ。それも恋をする相手かの様に。勿論王が彼の言葉に応じることなど無く、寧ろやって来てはフィンと共に追い返しているのだがご執心な彼は諦める事を知らないらしい。
    「折角良いモン見てんのに邪魔するなよ、オイ」
    目の前で己に殺気を飛ばす犬っころことフィンを喧しそうに思いながらもゼウスの視線は王へと向いていた。
    「あの細い腰、掴んで突いたら折れそうだな。お前はちゃんと扱えてんだろ?小っせぇと羨ましいぜ」
    くつくつと喉を鳴らして笑う。到底ギリシャの最高神の放った言葉とは思えない下品な物言いにフィンの眉間の皺は嫌悪で一層深く刻まれた。王とフィンが伴侶であると知って尚、彼は挑発的な物言いと態度を止めることはない。
    「それ以上下衆な言葉を放つな」
    再度知恵の親指にキスをし、その指で刀身を撫でた。すると刀身が輝き光の槍に変わる。鋭い穂先をゼウスに向け殺気をはらむ声色で告げる。
    「ハッ!犬っころ一人で俺とやろうってか?」
    彼は応戦する為の雷を纏いながら緩く構えを取り、愉快だとばかりにフィンを挑発する。
    「何でアイツはお前みてえな只の幻魔を選んだのか気が知れねぇなあ。不釣り合いだぜ、オイ」
    「黙れ」
    その物言いに苛立ちと嫌悪が募る。確かに相手は王たる威厳と力を持つナホビノ。フィンとてまさか想いが成就し伴侶の契りを交わすとは思わなかったが、王は他の誰でもなくフィンを愛したのだ。
    フィンはがちりと奥歯を噛み締めると鹿革のブーツで地面を蹴った。光の槍を振り翳し、緋紅のマントと金糸を靡かせて突撃する。対するゼウスも右手に雷を滾らせ、左脚を大きく引いて迎撃の構えを取った。
    光の槍と雷撃が打ち合う…その僅かな瞬間。
    空気がざわめくのを感じたフィンは、咄嗟に地面に右脚を突けると蹴り上げて背後へ大きく跳んだ。蹴られて舞い上がる砂が地に落ちるより早く、螺旋状に揺れ青白く光る大剣が二人の間に打ち付けられる。ドン、と鈍い音がして地と空気を揺らし、土埃が朦々と舞う。
    「気付かれちまったか」
    ゼウスは光る剣、天剣叢雲に引き損ねた右手の中指を負傷し傷口から禍つ霊を放ちながらそれが放たれた方角を見る。
    「寧ろ気付かれないと思ってたのか?」
    惜しげもなく肌を晒した状態で右手にナホビノソードを出した王が立っていた。黄金の瞳に怒気が宿っているのはゼウスがフィンを弄んだ所為だろう。この主従はお互いを深く想い合っている、だからこそゼウスは余計に王が欲しくなるのだ。
    凛々しく立つ王の隣に退避したフィンはマントを脱ぐとそれを王の素肌の肩に掛け、剣を構える。寄り添い立つ姿は従者と言うより正に伴侶のそれで毎度毎度襲撃をしては此方に振り向かせる所か仲の良さを見せつけられているようにも感じた。
    「いい加減自分の器の大きさに見合った相手を選べよ」
    「しつこいぞ。俺の相手は俺が決める…それに、フィンはお前とは比べ物にならない程良い男さ」
    ナホビノソードが再び魔力を蓄え始め、蒼い刀身が膨張する。もう一度天剣叢雲を放つつもりなのだろう。流石に覗き見程度の事で高威力の万能攻撃を二度も浴びたくはない。またも二人の手で撤退させられるのは少し屈辱であったがそれでもゼウスは王を諦めることはしなかった。
    今だって、緋紅のマントに包まれたあの細く美しい肢体を良い様にできたらとらしからぬ想像を抱いてしまう程。
    「…ま、良いモン見たし帰るとするぜ。またな」
    力を抜き踵を返すと寄り添う二人に後ろ手に掌を振って、ゼウスは何度目かの撤退をした。
    比較的弱い悪魔しか居ないダァトでの高位の悪魔同士の争いが終わり、水場は元の静けさを取り戻していた。ソードを一振りして仕舞うとアナーヒターに折角洗って貰った髪が再び砂塵に塗れていて、王は肩を竦めた。
    「フィン、有り難う」
    身濯ぎの最中ゼウスの来訪に気付き苛立ちから素肌のまま飛び込んだが、肩に掛けられたマントをたくり寄せ、彼の優しさに謝意を述べる。フィンは気配が完全に消えたのを確認してから光の槍を消すと両手剣へと戻ったそれを鞘に収めた。
    「いえ…」
    去っていったとは云えども胸糞の悪さが消える筈もなく、眉間に皺を寄せたままのフィンを見て、王は両手で彼の頬を捕らえると引き寄せてキスをした。ゼウスが訪れた後はいつもこうだった。何せ機嫌が悪くなる。それが自分への執着心と独占欲から来るものであると解っているから嫌な気は全くしないし、勿論王は彼以外の元へ行くつもりなど毛頭無い。だからその気を鎮めてやるように、まるで子供をあやすように唇を落としてやるのだ。
    柔らかな王の唇に、フィンは直ぐ夢中になった。右手を伸ばして蒼い髪を撫で、後頭部を支えてもっと深く唇を交じり合わせる。暫く互いの唇を堪能してそっと離せば、二人の間に唾液の糸が紡がれた。王はフィンの頭を優しく撫でる。
    「…もうアレ以上の邪魔は来ないだろ、お前も一緒に入ろう?」
    場に似合わない高位の悪魔の争いに気圧されてか、周りには一切の悪魔の気配が消えていた。ひっそりと佇んでいた御霊も何処かへと消えている。
    王の言葉に頷き、二人手を取ってアナーヒターが手招きしている水場へと向かう。
    「身を清めたら、たっぷり愛してくれよ?俺の騎士様」
    「ああ、沢山愛してやるよ。俺の王」
    その道中、愛しさをはらむ声色で睦事の約束をし合い互いの手を強く握り返した。
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    おんじゃ@ojachanco

    DONEどうも初投稿&初執筆でございます。
    以前投稿したのが完成しましたm(_ _)m
    フィンに一目惚れの初恋をしてしまった主人公による苛烈で理不尽なドタバタハートフルラブコメ少女漫画風フィン主です。

    ※主人公の名前は「青空ツグミ」元ネタは漫画「あそびあそばせ」のあの子。
    ※ネタバレ、捏造、シナリオ改変、キャラ崩壊、稚拙な文面等々様々な問題がございますがそれでも宜しければお願いします。
    路は短し、恋せよ少年 邂逅編ー感情の起伏が乏しい、無表情、お人形さんみたい
     散々他人から言われてきたが自覚はしている、それはダアトに飛ばされナホビノとして戦っている今でも変わらない。
     ーただ、成り行きで此処まで来た
     どんな苦境や鬼門だってその一言ですべて乗り越えて、くぐり抜けてきた。最初は恐れていた悪魔も逆に自分に恐怖を覚えるようになる程だ
     ー今日もやり過ごせるだろう、そう思っていたのに…

       あの瞳の、あの輝きを見た瞬間。

     芽生えた知らない感情に、心の臓を揺さぶられー



    樹島を攫ったラフムを追うためダアト品川区を進み続ける僕と磯野上はアオガミが探知した気配を便りにコウナン四丁目方面へ向かうべく御楯橋を渡っていた、この辺りに悪魔はいない事を確認し、彼女と慎重に歩を進めていた。
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