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    Mogmogsmaka

    ハマったものを軽率に書いていきたいです。現在は真Vのフィン主メイン。

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    Mogmogsmaka

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    猫ドラコラボのやつ。猫ドラ主人公♀がフィン主に巻き込まれる小話。諸々のゲームの設定は捏造です。

    #フィン主
    finMaster

    異界に来たとて「我が王を探しているんだ」
    と、苦戦の末にスカウトに応じてくれた英雄(本人曰く悪魔らしい)が言った。
    どうやらこの世界と彼の住まう世界の次元が黒いスライムにより歪み、それに巻き込まれてその【王】と離ればなれになってしまったらしい。
    「ええと…一緒に探そうか…?」
    寧ろ此方の世界の為に共に戦って欲しかったのだが、彼はそれどころではないらしい。ので、少女は空気を読みそう提案した。彼は表情を明るくすると端正な顔に人好きのする笑みを浮かべる。
    「助かる。俺はフィン・マックールだ、よろしく頼もう」
    「フィンさん、ね、よろしく」
    そうしてスカウトしたフィンと彼の王を探すクエストが始まった。
    この異世界は【ダァト】と言うらしい。砂や土の中に朽ちている人工物が多々見えており、以前は【東京】という沢山の人が住まう文明都市だったという。
    「俺はそこで王に出会ったんだ」
    途中現れる不思議な帽子を被ったスライムを切り捨てつつ砂を踏みしめ歩きながら歩く。フィンの話を聞いていた少女は、彼の言う【王】に興味が引かれた。仲間になってくれた彼の情報を見ると、ケルト神話における英雄であり、フィアナ騎士団を率いていた騎士団長だという。そんな彼が必死に探す【王】とは何者なのだろうか。
    「ねえフィンさん、その探している王様はどんな人なの?」
    少女が尋ねると、彼は翡翠の瞳を輝かせた。
    「我が王は凄いヒトなんだ。各神話の最高神を倒してしまうほど強く、弱き悪魔の為にも身を粉にして手助けをしてくれるほど優しい…」
    途端に饒舌に語り始める彼に、少女は相づちを打つ。聞くに本当にお伽噺に出てきそうな出来た王様のようだ。強い、ということはとんでもないマッチョだったりするのだろうか。はたまたすらりとした王子様のような見た目だったり…彼の話で妄想を膨らませていたが、フィンの表情が一変するのを見て違和感を覚える。

    「そして麗しく美しいんだ」

    「…んん?」
    凛々しい瞳が恋をしているかのように色めいているのが初対面である少女ですら解った。白磁の頬はほんのりと赤い。
    「金色に輝く大きな瞳には強い意志が宿っていて美しく輝いているし、縁取る睫は細く長く、肌は肌理が細かく滑らかで柔らかいし、唇はまるで熟れた桃のように艶やかに染まり潤んでいて口付けるととても柔らかいんだ…」
    「んんん?」
    「髪は澄んだ海原や一等純度の高い宝石を思わせる蒼で、指で梳かせば絹糸の柔らかさで色艶を纏っているんだ。細い四肢はしなやかに伸びていて括れている腰なんて、抱きしめる度に折れてしまわないかと心配になる…」
    うっとりと、特徴と言うより惚気に近い発言をする彼に、少女は耐えかねて挙手をし発言権を得ようとした。
    「フィンさん?あの、一つ良いですか?」
    「何だ?」
    惚気を遮られた事に対して不機嫌にはならなかった。何故だか安堵しつつも芽生えた疑問をぶつけることとする。
    「あの、仕えている王様…なんですよね?」
    「そうだが」
    尋常でなく惚気ていたが彼はけろりとしてそう答えた。
    「私にはどう聞いても従者というより…恋人自慢にしか聞こえないんですけど…」
    しかもかなり惚気が強めの。
    言えば、フィンは長い睫を蓄えた瞳を瞬かせた。
    「む、そうか?そう聞こえてしまったのか…とはいえ事実だからな」
    悪気もなければ意図してもいなかったらしい。ふむ、と小首を傾げて続ける。
    「これ以上どう説明をすべきかが分からん」
    「…左様ですか」
    特徴より何よりも、この人が心底その王に惚れているのだという事だけが分かった。それも無自覚に惚気る程に。そもそも彼自身が主従関係だと言う割に仕える王に口付けただの抱きしめるだののワードが強すぎる。少女も旅をする内に様々な英雄と出会ったが、彼の元居た世界とされるケルト神話・フィニアンサイクルには王と従者が同衾する風習があるのだろうか。知識がないので分からないし、自分よりも世界を良く知るクロナを見れば彼女も分からないと首を振った。
    「我が王を一目見れば俺の言う意味が君にも分かるよ」
    凄いドヤ顔で言ってのけた。寧ろ情報が偏っていて全く想像できないんですけども、という言葉は流石に飲み込んで、少女はただフィンの言葉に頷いた。
    そうしていると目の前に突如煙が立ちこめ、不思議な帽子を被ったスライムが湧き出した。色とりどりのスライムの群にフィンと少女は武器を構える。と、
    「居たにゃ!アイツにゃ!!」
    クロナが声を上げた。よく見れば、群の中に今回の騒動の原因となった黒いスライムが居た。あれを倒せば、次元が歪み異次元の扉が開く。つまりそれが開けば、フィンのように王が居るかもしれないという事。
    「フィンさん!」
    「任せろ!」
    フィンは左手の朱色に染まった親指に口付けを落とすと剣を高く掲げた。
    「行くぜ!」
    すると周りに炎が渦巻いた。燃えさかる炎は次々とスライムを飲み込み焼き払っていく。ぷちん、と弾けるような音を立てて消滅していくスライム達。そうして出来た黒いスライムまでの道筋を、フィンは一気に駆けた。
    「せやっ!」
    剣を振り下ろし一刀両断する。真っ二つになった黒いスライムからずるりと黒い靄が広がり、それは小さな渦となり周囲を吸い込み始めた。
    「ゲートだ!」
    少女がフィンと出会った時と同じだった。砂漠は瞬く間に紫色の星々が輝く異空間へと代わっていく。フィンは目を凝らし辺りを探った。様々な魔力を感じるが、その中でも強く輝く、フィンの良く知った王の魔力を感じ取る。
    「此方だ!」
    フィンが駆け出すのを、少女は慌てて追いかけた。果てのない異空間を暫く進むと蒼く輝く光が見えてくる。近付くに連れて光が踝までの長髪を纏う人である事が確認できた。
    「我が王…ッく!」
    手を伸べるフィンに気付いたのだろう。彼が王と呼んだその人は振り返ると右手から煌々とした剣を出現させ、あろう事か斬りかかってきたのだ。フィンは異変をいち早く察知し、ブーツで空間を蹴ると後方へと跳びその一閃を避けた。
    「どうされたのですか我が王…!俺です、フィンです!」
    しかし王はじとりとフィン達を見据えると剣を構え直した。明らかに様子がおかしい。
    「もしかして…」
    最初、フィンに出会った時もそうであった。彼は敵として少女の目の前に現れ、仲間の力を借りスカウトアタックで魂を刺激し正気に戻したのだ。つまり王もその時の彼と同じで黒いスライムの力により正気を失っている可能性が高い。
    相対する為手にしていた剣を構え、じりじりと王との間合いをはかるフィンに言う。
    「フィンさん!!王様をスカウトしてみて!!」
    「スカウト…?しかし、どうすれば」
    「魔力を込めて呼びかけて、此方に来るように!!」
    少女の助言にフィンは構えていた剣を降ろすと王へと手を差し伸べた。すう、と息を吸い込み魔力を舌へと乗せ、有らん限りの声を張る。

    「俺の伴侶になってくれ!!!!」

    静かな異空間にフィンの渾身の叫びが響いた。
    「…それスカウトじゃなくてプロポーズ!!」
    少女の突っ込みも響いた。此方に来るようにと言ったのだから、一緒に来いだの協力しろだのと言う誘う言葉が出るものとばかり思っていたので想定外過ぎた。
    これは果たしてスカウトとして成功するのだろうかと恐る恐る様子を伺っていると、スカウト特有の魂が刺激された【ズッキューン!】という軽快な音が鳴りハート型のピンクの光が王を包んだ。
    「せ、成功したにゃ…」
    「ええ…?」
    どう聞いたってスカウトでなくプロポーズだったが。

    力なくその場に倒れ始める王の元にフィンは剣を投げ捨て急いで駆け寄るとその体が地に落ちる前に腕の中へと抱き留めた。
    「王!」
    呼びかければ、伏せられた瞼がぴくりと揺れる。長い睫を揺らしてゆっくりと開き、黄金の瞳で自分を抱き抱えるフィンを見た。
    「ふぃん…?あれ、俺は」
    途切れた記憶を紡ぎ合わせる。確かフィンとダァトを旅している最中にジャアクフロストの色をしたよく分からない悪魔に遭遇し、それを倒した途端にブラックホールの様な渦に吸い込まれてしまった。そこから今現在こうして彼と再会を果たすまでの記憶は無い…
    が、彼の叫びだけは確かに聞こえた。
    「ああ、ご無事で良かった」
    フィンはほっと胸を撫で降ろすと王の頬に手を伸ばし優しく撫でると身を屈めて口付けを落とした。触れるだけのそれを交わすと強く抱きしめる。そんな彼の髪をあやすように撫でてやる。
    「ありがとう、心配かけたね…フィンの告白、聞こえてたよ」
    「っあ、いや、あれは…」
    指摘されてフィンは身を起こすと過ぎた事を言ってしまったと言う気恥ずかしさから頬を染めた。しかし王は優しく笑みながら彼を見上げると頬を指先で撫でた。元より想いを交わし主従を越えた愛を育んできた彼の告白が魂に響かない筈がない。
    「謹んでフィンの伴侶になるよ。これからも宜しくね」
    「…お前さん…!」
    王とフィンは互いの指を絡め合い繋ぐと再び幸せな口付けを交わした…

    のを、少女とクロナは見せつけられていた。黒と紫の宇宙のような異空間もどこかピンク色の空気を帯びているように思う。
    先程は必死で分からなかったが、フィンの話していた王は確かに彼の言う通りの美しい王であったし、改めて見ればフィンだって麗しい王子様の様な見た目をしているので二人の口付けを交わす姿はお伽噺の王子様とお姫様その物だった。
    「クロナ達は一体何を見せられてるんにゃ…」
    「まあ、めでたしめでたし…なのかな?」
    明けていく異空間と、異世界からやってきた主従を見つめながら少女はそう呟いた。
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    Mogmogsmaka

    MOURNING元ネタは🐜様の曲です。狩猟を行うおフィンと主ちゃんの雰囲気のみな小話。そんなに絡んでません。
    狩猟日誌小さい頃に生きるための術として狩りを教えられていた為、狩猟は得意だった。時折自分よりも体躯の大きな獲物に出会う事もあったがその知識と持ち前の腕で難なく狩る事が出来る。
    ダアトの荒廃した土地を疾駆する牡鹿を草むらに隠れながら追いかける。あれは脚が速いからと拵え携えた弓矢を構え、弦を引きその時を息を殺して待つ。耳元で弦が張るきりきりという音と草が風に揺れる音だけが響いている。顔を上げ辺りを警戒していた鹿が、僅かながらに残った青い草を食べようと首を下げる。その一瞬とも言える無防備な姿を逃さない。
    張りつめていた弦が弾け、空気を裂いて矢が飛んでいく。フィンの手から放たれたその矢は鹿の心臓を一息に貫いた。
    小さな鳴き声を上げて倒れた鹿は、少し藻掻いてそれから動かなくなった。隠れていた草むらから身を起こしたフィンは、新雪の残る土を踏みならして仕留めた獲物に近寄った。鮮血で地を濡らす鹿は確かに絶命しており、腰に下げた皮袋から手入れを施され研ぎ澄まされた狩猟用のナイフを取り出すと鞘を抜き刀身を鹿の喉へと突き立て、先程までその体を巡っていた血を抜く。次いで丸い腹に切り込みを入れて温かな腸を取り出す。手に伝う温かさに命を頂く尊さを感じてフィンは心の内で鹿に感謝を述べる。そうして軽い処理を行った鹿の両の手足を縛り上げ麻袋に放り込むと、肩に担いで王の待つ野営地へと戻ることにした。
    1811