Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    Mogmogsmaka

    ハマったものを軽率に書いていきたいです。現在は真Vのフィン主メイン。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 74

    Mogmogsmaka

    ☆quiet follow

    元ネタは🐜様の曲です。狩猟を行うおフィンと主ちゃんの雰囲気のみな小話。そんなに絡んでません。

    #フィン主
    finMaster

    狩猟日誌小さい頃に生きるための術として狩りを教えられていた為、狩猟は得意だった。時折自分よりも体躯の大きな獲物に出会う事もあったがその知識と持ち前の腕で難なく狩る事が出来る。
    ダアトの荒廃した土地を疾駆する牡鹿を草むらに隠れながら追いかける。あれは脚が速いからと拵え携えた弓矢を構え、弦を引きその時を息を殺して待つ。耳元で弦が張るきりきりという音と草が風に揺れる音だけが響いている。顔を上げ辺りを警戒していた鹿が、僅かながらに残った青い草を食べようと首を下げる。その一瞬とも言える無防備な姿を逃さない。
    張りつめていた弦が弾け、空気を裂いて矢が飛んでいく。フィンの手から放たれたその矢は鹿の心臓を一息に貫いた。
    小さな鳴き声を上げて倒れた鹿は、少し藻掻いてそれから動かなくなった。隠れていた草むらから身を起こしたフィンは、新雪の残る土を踏みならして仕留めた獲物に近寄った。鮮血で地を濡らす鹿は確かに絶命しており、腰に下げた皮袋から手入れを施され研ぎ澄まされた狩猟用のナイフを取り出すと鞘を抜き刀身を鹿の喉へと突き立て、先程までその体を巡っていた血を抜く。次いで丸い腹に切り込みを入れて温かな腸を取り出す。手に伝う温かさに命を頂く尊さを感じてフィンは心の内で鹿に感謝を述べる。そうして軽い処理を行った鹿の両の手足を縛り上げ麻袋に放り込むと、肩に担いで王の待つ野営地へと戻ることにした。

    「戻りました」
    「おかえり」
    今は二人旅であるから、他の仲魔達はいない。巨大なビルの壁に隠れる様にして焚き火を焼べ腰掛けていた王は立ち上がると大きく膨らんだ麻袋を担いで戻った従者に駆け寄って労いの声を掛けた。麻袋に伸ばす細い王の手を「血に汚れますから」と制し、中から獲物を取り出すと剥き出しの鉄骨に首から吊し上げ、再び皮袋からナイフを取り出すと宙吊りになっている鹿の皮を掴み、背中から皮を剥いでいく。手入れの行き届いているナイフはさくりと軽い音を立てて皮に食い込むと軽々とその身から皮を剥がし始めた。フィンの手慣れた処理を見ながら王は肉を調理する為の鍋を準備した。これは東京で見かけて持ち込んだものだ。ダアトから東京へと戻ればそれこそ食料も、暖かい寝床も、何もかもが揃っている。が、それをせず必要最低限の物しか準備をしないのは王が出来る限り愛しい彼の側を離れたくないからだ。
    近くを流れている小さな川で調理器具と、以前訪れたかつては菜園であったであろう場所で採取した野菜を洗っている間にフィンはどんどんと獲物の解体を進める。綺麗に剥いだ皮は加工する為に取っておき、次いで仕留めた先で切れ込みを入れた腹に手を伸ばす。少し冷たくなった内蔵を傷か付かないよう取り出して並べ、内蔵が無くなり腹部にぽっかりと空いた剥き身の肉の解体を始めた。比較的食べやすい部位を切り分けてしまえば、王にとっては見慣れている肉片と化す。二人だけでは大きな獲物であったが一片たりとも無駄にせぬよう、余った部分を燻すのもすっかり慣れたものだ。
    大きな石を並べて組み上げ囲われた炎の上に鍋を置く。清らかな水で満たされたそれが沸騰するのを待つ間に肉を更に一口大へと切り分ける。洗って手渡された野菜も同じようにぶつ切りにしておく。これも手際よく行うフィンの姿を隣で眺めて、王は微笑んだ。彼が手ずから調理を行ってくれる姿が好きだ。彼が今までこうして生きていたことを感じられるから。
    沸き上がる湯の中へ切り終えた野菜と肉を放り込む。次に調味料を適当に。これも彼が必要としている物だけを訊いて持ち込んだ。
    「…よし」
    全てが鍋に収まったのを見てフィンが満足気に声を放つ。川の畔まで向かうと汚れた手を洗い清め、踵を返せば王が両手を広げて待っているのが見えた。早足で駆け寄りそのしなやかな躰を抱きしめれば、同じ様に背中に腕が回る。鼻先を擦り合わせ、視線を交じり合わせ、唇を重ねる。
    鍋から良い香りが漂うまでにはまだ時間がある。
    「フィン」
    「王」
    甘い声色で強請る様に名を呼び頬を擦り寄せた。フィンも同じく王の名を呼ぶと、片手で器用に緋紅色のマントを外し地面に敷くとその上に王の高貴な躰を組み敷く。深い口付けを交わし肩に牙を立てれば細い喉からフィンしか知らない声が挙がった。

    焼べる炎の前で四肢を絡め躰を繋ぎ情を交わし愛を囁き営むその時、フィンと王は確かに番う動物であった。



    おしまい
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🍖🍲❤💘💖🙏👏💕👍🌋💞💘
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works