目が開いて最初に石の床を見た。洞窟内の岩盤などではなく、一目で人工物だとわかるものだ。
光源となるのは燭台に刺さった数本の蝋燭のみ。うすぼんやりとした灯りに絶え間なく落ちる影の粒がちらつく。窓に映るたよりなげな火は現在の天気だけを小松に教えた。
白っぽいレンガ、あるいは切り出した石をかさねたドーム型の内部にいるらしい。
燭台が置かれた机上にパンとワイン。芳醇な香りを放つそれはおそらく上等なものだろうが、グラスに注がれているだけで飲んだ形跡はない。お供物のように生活感が希薄な食卓が、しんしん雪の降る外と変わらない寒さ充満する現在地をどこかの文明の墓であるかのように思わせた。
知らない場所だ。小松は思った。
4390