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    Yukkirai_pk

    @Yukkirai_pk

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    ウォロシマ中心
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    ウォロシマ。
    警備隊員時代のボシさんとウォと初雪の話。恋愛要素は薄めです。

    #ウォロシマ
    wolosima

    初雪 そのギンガ団警備隊員の女とは、すれ違えば話をするくらいの間柄だった。女性と積極的に話すようにすれば、商売が上手くいくことをウォロは既に学習している。
    「おや、今から警備ですか」
     冬の近づいた新しい村の目貫通り。目の前に現れた赤い服に声をかけると、彼女は振り返る。
    「今完了したところだ」
    「そうでしたか、お疲れ様です」
     にっこりと笑えば、警備隊員――シマボシは、ありがとう、と短く礼を言った。いつも表情の変わらない彼女らしく、淡々とした声だった。
     彼女とは特に親しいわけではない。一言二言、世間話を交わした。
    「では、また」
     そう声をかけて、その場を離れようとした時、視界にふと白い小さな靄が見えた。手を伸ばして掌に乗せれば、体温ですっと溶けて消えていく。見上げれば、同じものが曇り空からいくつも舞い落ちてきている。
    「もうそんな季節ですか」
     この冬初めての雪だった。いつもより早い。
    「随分と早いですね……」
     独り言のように呟いて、隣を見やる。女は、ウォロの方を見ていなかった。
     彼女は黙って、降ってくる雪を見つめていた。一見普段通りに見えたが、観察眼に長けているウォロには、青色の瞳に宿る抑えきれない好奇心と感動を見つけるのは容易い。
    「そんなに珍しいですか」
     思わず尋ねると、空を見つめたまま女はぽつりと呟いた。
    「これが雪なのか。……初めて見た」
     彼女の言葉に一瞬首を傾げかけるが、すぐに意味を理解した。今冬は、この村が興ってから最初の冬、つまりヒスイ地方に彼女が来てから最初の冬ということになる。きっと、冬も暖かい地方から彼女は来たのだろう。
    「美しいな……」
     シマボシは独り言のように呟いた。ウォロはしばらく彼女を見つめていたが、やがてくすりと笑った。声を聞いて振り返ったシマボシが、彼に訝しげな視線を向ける。
    「何か変なことを言っただろうか」
    「いえ、何も。アナタのような人が、何かに夢中になることがあるとは思わなかったので」
     彼女のことはよく知っているつもりだった。表情も、感情の動きも、ほとんど無い実直すぎるほどの女だと信じて疑っていなかった。
    「子どもっぽいとでも言いたいのか」
    「違いますよ、貶すつもりはありませんって。ただ、何かに夢中になるアナタも可愛らしいと思っただけです」
    「変なことを言って揶揄うんじゃない」
     ほんの少しだけ強い口調で告げて、シマボシは顔を逸らした。彼女の耳が薄らと赤くなっているのは、きっと寒さのせいだけではないはずだ。
     くだらない話をしている間にも、降ってくる雪は重さと冷たさをどんどん増していく。
    「……ヒスイ地方では、雪は珍しいものでありません」
     雪を受けるように掌を広げ、ウォロは呟いた。
    「これから冬が来るので、嫌というほど見ることになりますよ。寒さは平気ですか?」
    「少し苦手だ。しかしこの地方で生きていくからには、慣れなければ」
     この地方で生きていく。はっきりと述べた女の言葉に、また心臓の底に黒い澱が溜まったような気を覚えたが、ウォロはにこりと笑顔を浮かべる。
    「……そうですね」
    「イチョウ商会では防寒具も取り扱っているのか」
    「勿論です。なんなら今からご用意しましょうか」
    「もう行かなければならないから、また今度頼む」
     シマボシは律儀に別れの挨拶をし、小走りでその場を離れた。彼女を見送った後、ウォロも再び歩き始める。
     生まれた時からヒスイ地方で生きてきたウォロにとって、雪は厳しい冬の象徴でしかない。それに美しさを見出したことは一度も無かった。
     空を仰ぐ。曇り空の下で、しんと冷え切った空気の中を舞う無数の雪の粒を、じっと見つめる。冷たい風が青年の前髪を揺らした。
    「……確かにアナタの言う通り、美しいのかもしれませんね」
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