ネタがほしいんです!2「ねえ、お兄ちゃん、今からKKさんとセックスしてきて!」
『ネタがほしいんです!2』
「は?」
書類の山がのったテーブルを挟んだまま、暁人はKKと二人で依頼について話をしていた。突如、ローテーブルで絵梨佳と二人で仲良く話をしていたはずの麻里が真剣な顔をして立っていた。声をかけるよりも早く面と向かって、麻里から堂々と告げられた言葉に暁人は絶句する。思わず、切れ気味で答えてしまった。
「だから!セックス‼」
「やめて、聞きたくない!」
「同人誌のネタに欲しいの!」
「身内を同人誌にするな‼」
まさか、妹からそんな単語を聞かされるとは思っていなかった。いや、今から忘れたい言葉だ。耳を塞ぎたくなる衝動に駆られる。今まで散々、ネタにされ続けてきたが、妄想だけで留まると思っていたのに、同人誌という単語に叫んでしまう。
「お願いお兄ちゃん!ちょっとでいいの!ちょっとで!」
「先っちょだけみたいに言わない!」
エロ同人誌みたいなことを言わないでほしいと、顔を両手で覆い叫ぶ。ちなみにここはアジトのリビングルームである。アジト内には暁人とKK、麻里に絵梨佳がいる。そう、当事者がいるのである。
「じー」
「おい、見るな、絵梨佳」
「だって…」
「うっ…」
はらはらした様子で伊月兄妹のやり取りを見ていたKKは背後から視線を感じ、振り返ると絵梨佳がじっとこちらを見ている。うるうるとした瞳でKKを見つめている。
「そこ!騙されない!」
「ちっ!」
心が揺れそうになるKKを暁人が引き留めると、絵梨佳が舌打ちをした。柄が悪すぎるのではないだろうか。初めて会った時の、あの初々しさは何処へ行ったのだろうか。
「…怖いぞ」
「KK、今、彼女たちは獣だから、人間だと思わない方がいいよ」
「け、獣?」
「ハイエナだよ」
彼女たちに怯えるKKへと注意を促しながら、獣たちを冷やかな目で見つめた。
「獣だなんて、酷いよ、お兄ちゃん!」
「私たちはただ、欲しい物をお願いしているだけなのに!」
「お願い…」
「恐喝だろ」
興奮気味の彼女たちは二人が疲労困憊しているのがわからないようだ。
「お願いだもん!」
「強制はしてないでしょ!」
「妹がこんなに困ってるのに、助けてくれないの!」
「してないのか、これは…」
KKがぐいぐいくる彼女たちに押され始める。二人に弱すぎるよと、思いながらも暁人は睨みつけた。
「だいたい、何だよ、セックスして来いって!何か、報告でもすればいいの?」
「違うよ!ハメ撮りしてきてよ!」
「しても、見せるか!」
締め切り近い彼女たちにとって、ネタがないのは由々しき事態なのだ。そして、目の前には最高のネタ物件がある。つまり、人は欲望に勝てないのである。
「いや、そこじゃないだろう…」
暁人の外れた発言に思わずKKがツッコミを入れた。