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    #fukuma

    カルラムパロ 高次元存在👹×教祖🐑
    オチがわかんなくなった雰囲気だけの厨二な話。すべて幻覚と妄想。
    タイトルの元ネタがわかった馬の骨は私と握手🤝

    救済の技法ひとつふたつと尾を引くような鐘が鳴り、石造りの美事な講堂に朗々たる声が響く。決して狭くはないそこを埋め尽くす黒いローブに身を包んだ信者たちは一様に膝をつき頭を垂れ、壇に立つただひとりの説教を一言一句聞き逃さまいと熱心に耳を傾けている。鬱々と燃える蝋燭が揺らめいては影を作り、月の光を集めたような髪を赤く照らしていた。
    信者と同じローブから覗く彼の四肢は人のそれではなく、冷たい光沢を放つ金属のもので。良く見やればその淡く紫がかった灰銀色の双眸も自然のものではない。人の姿をしていながらもアンバランスで、それでいて完成されたかたちをした彼は『羊の群れ』と称されるカルト集団の教祖である。
    名をファルガー・オーヴィド。心に迷いを持つ者は誰も彼もが救いを求めて教団の門戸を叩く。曰く、機械仕掛けの救世主サルワトルエクスマキナ。鉄血の使徒。月下の君。言われようは様々だが、向けられているのは往々にして畏怖と畏敬だ。
    花すら恥じらうほどの玲瓏たる相貌に反して、その人柄は豪胆さと繊細さを併せ持つ。からからと笑いながら信者と一緒に畑仕事をし、病を負う者には手ずから懸命に世話をし、告解に訪れる者には親身になって助言を与える。
    その一方で異端の暴徒に対しては一切の容赦はない。自らの手で刃を振るい、聖句を唱えながら次々と敵を粛清していくはまさに神の御使いの如く。纏うそのローブの黒は染み込んだ幾万の血の果てなのだと、彼を恐れる異端どもは揃えて口にする。
    だからこそ、興味を持った。第五の柱。宿命を冠する大いなるものの器。それを戴きながら求めず、己が手のみで隣人を愛する者。彼が説くのはいつだって神への奉仕ではなくヒトの可能性だった。故に信者たちのその確固たる人望と信頼は、無垢なほどに彼自身ヘ向ける信仰として構築されている。
    説教が終わる聖句にその場にいる者たちが一斉に唱和する。老若男女の声が幾重にも重なり、巨大な獣の唸りのように不気味に反響する。そこだけ聞けばどこか狼の咆哮にも似ていた。
    次いで祝福の詞が紡がれる。これから彼の地へと聖戦に赴く教祖のために、残される信者たちは不敗と武運を祈る。実に良いタイミングだ。溢れそうになる含み笑いを堪えて、彼と同じように召喚陣へと身体をすべりこませる。こんな転送装置など使わずとも付いていけるが楽できるに越したことはない。
    ひやりと肌寒さすら感じる鍾乳洞の迷宮。そこへ一人降り立った彼は背丈ほどもある神造の魔剣を手に、現れる異教徒や怪物を次々と屠っていく。その鮮やかな手並みはどんなに奥へ進めども一向に衰えることなく、ことごとくを鏖殺せしめる。まさに文字通りの一騎当千、通った道に残るのは屍山血河の地獄のみ。
    彼を見つけたのはまさに偶然だった。気まぐれで覗き観た先の、今と同じように異端を排する姿。ヒトでありながらヒトでなく、それ故に捧げられた子羊。しかしその瞳に絶望の影はひとつも差さず、死地を征く痛みに顔を俯かせることもない。あまつさえそこに狂気すらないのが信じられなかった。
    理不尽に散らぬ高潔の花を、この手で手折ってみたい。それだけで理由は十分だった。最奥に棲まう魔眼の化身を容易に倒しきった彼の背後に音もなく形を作る。気配をも遮断していたというのに、神速で振り切られた刃は誤たずこちらを捉えて。
    「おっと。さすがは神殺し、息をするように首を狙うじゃあないか」
    「な、」
    驚きに目を見開いた彼の手を取り、抵抗する間も与えず自分の領域へと一息に引きずり込む。そこに在りながらそこに無い空間。終わりなき夜の牢。その鋼鉄で出来た四肢を伸ばした触手で固定し、動けないように繋ぎ止める。
    嗚呼、と思わず溢れる歓喜の吐息。待ち望んでいた瞬間の到来に胸が躍る。伏せていたゆっくりと瞼が開き、真っ直ぐにこちらを映す模造の満月。聡明な彼はすぐ自分の状況を察したのだろう、それでも薄く小さな唇に笑みを浮かべるその気丈さに堪らなくなる。
    「いったいどこの誰だか知らないが、いきなりこれは酷いんじゃないか?エスコートするにもマナーというものがあるだろう」
    「はは。それに関しては謝るよ。こうでもしないと邪魔が入ってしまうからね」
    二人きりになりたかったんだ、と声を潜め肌蹴たローブの裾から覗く白い太ももと機械のあわいを指先でなぞれば、びくりと震えるいじらしさに喉が鳴る。少しでも自分が力加減を間違えれば簡単に砕けてしまうだろう手足は彼にとって生命線だ。壊れてしまえば芋虫のように這うことしか出来ず、武器を持つことも歩くことすら叶わなくなる。こちらとしてはどんな声で鳴くのか試してみたくはなるが、彼としては本意ではないだろう。
    目に掛かった柔らかな髪を避けてやれば形の良い柳眉が僅かに顰められ、眇められた双眸は逡巡を纏って瞬く。
    「……お前は“何”だ」
    「ふむ。おまえの主と同じように旧きものであり、わかりやすく言うと……そうだな、星に接続するモノというのが近いだろう」
    改めて問われれば己の性質を説明するのは難しい。神かと言われればソレに近いとも言えるし、かといって同一ではない。恐れられるモノではあるが、決して崇められるモノではない。どちらかと言えば災害と呼ばれる現象に似ているかもしれないが、人間の感覚に添えばの話だ。
    まあそこはどちらにせよ瑣末なことだろう。そう肩を竦めてみせれば乾いた笑いが落ちる。
    「そんな大層な御方にお招きいただいて光栄だな。俺を殺すつもりならなるべく苦しまない方法でお願いしたいんだが」
    「殺すなんてとんでもない。むしろおまえは私にとって今までにない好奇心の的だよ、ファルガー・オーヴィド」
    名乗っていないはずの自分の名前を呼ばれ、より警戒に身を固くした彼にいたってにこやかに笑いかける。怯えが滲んだ表情はひどく嗜虐心と支配欲を唆られるが、此処へ連れてきた目的を果たさなればならない。
    「何故、おまえはそこまでして他者に手を差し伸べる?」
    音にしたのは、彼に訊いてみたかった問い。一番の疑問。自分には理解できない感情。まさか人ならざるものにそんなことを尋ねられるとは露とも思っていなかったのだろう、虚をつかれたように押し黙ったその表情の幼さに目を奪われる。先ほどまでの威勢はなりを潜め、そこに在るのはおそらく“救世主”としての彼なのだろう。遠くを見るような眼差しに凪ぐ落差はあまりに静謐で。
    「寂しくてひとりで生きられないのなら、満たしてくれる誰かとともに生きればいい。何かに頼らないと不安でたまらないのは、自分自身に自信がないからだ。人であるがゆえの弱さにつけこんで嗤う神を、俺は絶対に肯定しない」
    たとえそれが俺の偽善だとしても。花開く唇から一切の迷いなく言い切られた啖呵に思わず閉口する。それは宗教という在り方そのものの解体だ。信仰とは祈りであり、祈りとはすなわち願いである。こうなりたい、こうしたいという純粋な欲望の発露。それの寄る辺を神としているからこそ、信仰は成り立つ。それを彼は残らず否定し、ヒトたる所以を指し示す。
    あまりに全き善性。目映いほどの自己犠牲。なるほど彼に熱狂的に傾倒する信者たちが彼こそが神だと崇めるのも頷ける。
    「では、おまえの命を戻したアレはどうなる」
    「感謝はしているが、俺を駒としてしか見ていないのは丸わかりだからな。すべてが終わればまた俺ごと教団のすべてを自分の贄にするだろう」
    恩はあれど、その先はないさ。そう語る口端に浮かぶ自嘲は深く。そこにあるのは消費されることに慣れきってしまった空虚だった。彼については何も知らない。アレの生贄にされた経緯も、機械で継ぎ接ぎされた身体の過去も、何もかも。
    「……ならば、他でもない“おまえ”を救うのは何だ」
    だからどこか迷子のようなその表情に、問わずにはいられなかった。ただの人の子ひとりにここまで惹かれる理由も分からず。それでもどうしてか掻き立てられる感情の所在。忘れ去られた理屈の埒外。
    「そんなものは必要ない」
    「自らは進んで地獄へ堕ちると?」
    静かに首を横に振る彼の、淡く咲く微笑みは無垢にして魔性。その美しさたるや、筆舌に尽くし難く。


    「俺を堕とすのは、他でもないお前だろうさ」


    たった一言。それだけで己には無いはずの心臓が早鐘を打ち、口端に浮かぶ笑みを止められない。ああ、ああ、なんと素晴らしい。この哀れで尊く、傲岸にして慈悲深き子羊の身体から魂のひとかけらまで噛み砕きすべて飲み込んでしまいたい。私の渇望を余すところなく埋めてくれるこの存在を、あんな蒙昧で愚鈍な神などに絶対にくれてやるものか。
    四肢を繋ぎ止めていた縛りを解き、重力に従って落ちる身体を抱きとめる。薄く細いその肉はあたたかく、脆く、何よりも強く。
    「いいとも、我が愛しきアニュスデイ。その時はおまえの望み通り救済ころしてやろう」
    これは呪詛だ。自分自身を厭悪し、誰をも憎めず、何処へも行けぬ彼への祝福。おそるおそる背に縋る硬い指先の感触。名を、と乞う小さな声に左瞼に刻まれた刺青へ口付けながら応える。
    「アーキタイプ、或いはヴォックス・アクマ。好きな呼び方で構わない」
    ここに契りは上書きされ、遍く摂理は反転する。もはや彼は運命の内に在らず、いずれ遠からずその手で葬る日が来るだろう。一切合切の終わりにファルガー・オーヴィドという個がどう成り果てるのか。
    すべてに棄てられし君よ。すべてを満たす君よ。声もなく、ただひとり泣き伏せる優しき君よ。願わくばどうか共に野辺の送りを。
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