逆バニーのナギナタさん「串田さん、こういったお店は初めてですか?」
「え、えと……」
あわあわと口ごってしまった串田に、ナギナタは淡々とシステムを説明する。三十分五千円だとか飲み放題がどうのと、お金の話をされているのは辛うじて理解していたが、串田の耳の中ではナギナタの少し気だるげな声が響いているだけで、内容はさっぱり頭に入ってくれなかった。
呆けたままの串田はその後、ナギナタに手を引かれて洗面所に連れて行かれ、うがいと手洗い消毒を済ませてからソファーの席に座らされた。
串田の隣にナギナタも座った。普段は肌身離さず持ち歩いているチェーンソーナギナタは彼の手元になく、それどころか服すらなかった。ポンチな吸血鬼にやられたんじゃない。ここは、そういう店なんですよと困ったような笑みを浮かべるナギナタの頭の上には、白い兎の耳の形をしたカチューシャが付けられていて、首は襟だけしかなく、胸元はハート型のニップレスで隠された乳首以外、全て露出していた。申し訳程度に腕は薄いアームカバーが付いていたが、ほとんど丸見えだった。下半身はビキニパンツに丸いふさふさした尻尾が付いている。太腿は網タイツですらりと綺麗なナギナタの脚を覆っていた。
「俺みたいな男がこんな格好をして、滑稽ですよね」
眉を下げてナギナタが自身の腕で胸元を隠す。
「恥ずかしいから、そんなに見ないで下さい。串田さんのすけべ……」
そう言われて慌てた串田が彼の胸元からパッ! と目を逸らすと、今のは冗談ですとナギナタは胸元を隠していた腕を外して、見たかったらもっと見てもいいですよと串田に顔を近付けて耳元でソッと囁いた。
串田の顔に血が集まった。普段、串刺し調査になるとヒャハハーーッ!とハイテンションでチェーンソーナギナタを振り回す滅茶苦茶な人が、しっとりと落ち着いた声で串田の欲を刺激する。
「店の照明が暗くなったら、触ってもいいですよ」
カッ! と顔だけでなく、串田の下半身にも血が集中した。誘われるがまま、彼の胸元に手を伸ばす。女性のようなたわわな乳房がないのに、鍛えられた筋肉でむっちりとしたナギナタの胸はしっとりと串田の手に吸い付き、思わずむにむにと揉み込んでしまった。
「あっ! そこは……乳首はッ、弱いから、だめ……」
駄目と言いながら、まるで強請るように、ナギナタの腕が串田の首に絡み付く。引き寄せられて、至近距離で潤んだ瞳を覗き込んでしまい、そのまま串田は彼と唇を合わせた。ちゅっ、ちゅっと柔らかな感触を味わい、とろりとした唾液を纏った舌が、串田の唇を舐める。その舌を味わいたいと口を開けた瞬間、店内の照明がパッ! と明るくなった。
「……はい、おしまい」
これはサービスですと、最後にチュッともう一度だけキスをされた串田は、終了のお時間ですとお会計を促されて、ふらふらしながら席を立った。
「串田さん、もうこんな所に来ちゃ駄目ですよ」
ばいばいと手を振って串田とは違う客の所に行こうとするナギナタを、串田は店から誘拐した。