Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    おもち

    気が向いた時に書いたり書かなかったり。更新少なめです。かぷごとにまとめてるだけのぷらいべったー→https://privatter.net/u/mckpog

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💞 💯
    POIPOI 288

    おもち

    ☆quiet follow

    PsyBorg。風邪っぴき🐏の話。

    #PsyBorg

    枕元に置かれたペットボトル、いつもそこに置いているスマホは視線を巡らすだけでは見当たらない場所にあるらしい。重い掛け布団のおかげか身体中が暑く、額に貼られている冷却シートの感覚に手を伸ばせば角が剥がれかけていた。
    「ん……ぁ、あー、……喉もやられたか」
    寝起きだから、だけの理由ではなく声が掠れている。喉に手を当てるとそこも熱を持っていた。体を起こして布団から上半身を出す。ひんやりとした冬の空気を感じて暖房のリモコンを探した。
    「……浮奇か?」
    ベッドの上には棚に飾っていたはずの小さなぬいぐるみが五つ、ふわふわのタオル、俺がプレゼントしたマフラー、栄養ドリンクとのど飴。さらに掛け布団にブランケットと上着が被せられている。
    部屋の中にその姿はないけれど浮奇がいたことは明らかだった。上着がここにあるということは違う部屋にいるのだろう。室温は変わっていないはずなのにぽかぽかと温かな気分になり、浮奇の顔を見たくてベッドを抜け出した。
    部屋の扉を開けると美味しそうな匂いが漂っている。なるほど、キッチンか。あまり力の入らない体でゆっくりと階段を降りていると、小さく鼻歌が聞こえてきて足を止めた。子守唄のような優しいメロディーのそれは、浮奇が時々口ずさむ知らない言葉の歌だった。歌詞の意味は少しも分からないけれどそれを歌う時の浮奇はいつもキスをしたくなるような柔らかい表情をしているから、きっと甘い歌なのだろう。
    「ベイビー、せっかくなら枕元で歌ってくれ」
    「っ! ふーふーちゃん、起きたの? 体調は?」
    「全快ではないな。浮奇は、どうしてここに?」
    「……勝手に来てごめんね?」
    「怒っているわけじゃない。むしろ感謝してるよ。買い物に行くこともできずに寝ていたから」
    「今朝電話した時に会いたいって言ってたんだ。寝惚けてるみたいだったしいつものふーふーちゃんなら言わない感じだったからどうしようかと思ったんだけど、でも、俺も会いたかったから来ちゃった。……ハグしてもいい?」
    「……全然覚えてないからその記憶は消しておいてくれ」
    「やだ」
    腕を広げた浮奇に一歩近づきその体を抱きしめる。ぐりぐりと額を擦り付けると浮奇は優しく頭を撫でてくれた。風邪を引いて甘える三十路なんて全く可愛くないことを理解しているが、浮奇の前でだけはいいんだ。髪に唇を押し付けると「キスしたくなるからだめ」と弱々しく伝えてくれる可愛い子。
    「体調が良くなったらいっぱいしよう」
    「ん……。ごはん食べられそう? スープ作ってみたんだ」
    「たべる。ありがとう」
    「ううん、これくらいしか出来ないし」
    「十分だよ。あ、そうだ、ベッドの上に色々置いてくれたのも浮奇だろう? ありがとう、可愛くて癒されたよ」
    「風邪の時って寂しいでしょう?」
    「浮奇は寂しいのか。覚えておく」
    「……俺のことはいいの。とにかく、癒されたなら良かった。本当はずっと俺が手を握ってあげたかったけど」
    ありがとうと大好きの気持ちを込めて額にキスをすれば全然力の入っていない手で肩を押された。風邪を移したくはないから唇へのキスはできない。でも言葉で表現するのが難しい俺の心を温める愛しさとか愛情とか浮奇がもたらしてくれる感情を浮奇に返してあげたいんだ。俺が独り占めするにはもったいないこの美しい感情を。
    「んん……ふーふーちゃん……」
    「ん……?」
    「ねつ、うつりそう……」
    「……ほんとうだ。顔が赤いな。空気感染するやつだったか?」
    「そうじゃないよ、おばかさん。……ふーふーちゃんのこと大好きだって言ってんの」
    「……もういっかい」
    「うん? ……大好きだよ。ずっと、ふーふーちゃんのことが大好き。こんなに甘やかして甘やかされたい人、他にいない。きみが一番。……ふふ、ちょっと照れちゃうな。本音でこんなこと言うのふーふーちゃんにだけだからね?」
    「ん……」
    「……ふーふーちゃんも照れちゃった? 顔が赤いよ」
    「熱のせいだ」
    「へへ、オーケー、そういうことにしといてあげる」
    ツンとつつかれた熱い頬を隠すようにもう一度浮奇を抱きしめて、無意識で擦り寄ってしまってからわずかに後悔する。照れて甘えるなんて、キャラじゃない。……けど、やっぱりそれも、浮奇の前ならいいか。
    「うき」
    「うん? なぁに、ふーふーちゃん」
    「一緒にいてくれてありがとう」
    「……俺こそ、一緒にいさせてくれてありがとう」
    「……クソ」
    「ベイビー、泣いてもいいよ? 熱のせいにしてあげるから」
    グスッと鳴ってしまった鼻の音を無視して浮奇の耳をかぷりと噛んだ。戯れるようなそれじゃ浮奇は誤魔化せず、意地の悪い男は背伸びをして俺の頬にキスをする。唇の端に触れるそれに耐えきれなくなり、俺は顔を動かし唇を重ねた。ごめんな、風邪が移ってしまったら、俺がずっと一緒にいてやるから。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💝😍💖👏🙏😭🌋🎁💯☺☺☺☺☺🙏🙏🙏🌋💖😭☺👏💖🙏💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖🙏🙏🙏💖🙏🙏☺😭💖👏💖👏☺💖💘💘💘💘💯💯💯💯😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works