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    カリフラワー

    @4ntm_hns

    🐓🐺・🥴🐺
    作品はすべて全年齢向けです。

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    カリフラワー

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    マ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「キス」
    キスの日に乗じる安定のルス🐓
    ルスマヴェよ、何が起きてもお互いの元へ帰ってくれ、そしてキスを重ねてお互いの存在を実感してくれ…

    #ルスマヴェ
    rousmavet
    #roosmav
    #TGM

    I’m home, baby ドタバタと響き渡る足音。音が聞こえるのは玄関からで、足音の主は体格が良いようだ。そして、かなり急いでいる。
    マーヴェリックはキッチンカウンターに座って近づく足音を聞きながら、頬杖をついて笑い目を閉じた。足音にも勝る大きな声は、その主がマーヴェリックの元へ辿り着くか、マーヴェリックが返事をするまで彼を呼び続けた。
    「マーヴ、マーヴ!」
    キッチンへと飛び込んだ足音の主・ルースターは、荷物も下ろさずマーヴェリックの向かいでカウンターに身を乗り出した。その肩を上下させながら。
    「…息があがってるけど、ちゃんと車を運転して帰ってきたんだよね?」
    「え? うん、そうだけど」
    はあ、と最後の大きな一息をついて、ルースターはようやく荷物を下ろした。
    「走って帰ってきたみたいに見えるよ」
    マーヴェリックは笑いながらもわずかに身を引き、目を見開き瞬きすらしない恋人から距離をとった。
    「急いでたんだよ」
    「どうして?」
    「どうしてって、」
    ルースターはマーヴェリックに向かって更に顔を寄せ、"本日の最重要事項"を発表した。
    「俺たち大事なこと忘れてたんだ!!今日キスの日だったんだって!!」
    沈黙が二人の間を漂い、行き場もなく周回を続ける。これに触れずに日付など越えられるか、と意気込むルースターの向かいで、カウンターチェアの座面を握るマーヴェリックの手からは力が抜けた。
    「…それ、昨日も言ってたよね」
    昨日も彼は急いでいた。
    「うん、言ったね」
    そしていつも開き直るのが早い。
    「キスの日って数日続いたりするものなの?」
    「うん」
    いや、そんなはずはない。知らない人間が適当に決めた記念日が三日三晩も続くわけがない。その日にかこつけて好きな相手にキスをしたいなら、一日限定の方が価値はあるだろう。マーヴェリックは初日こそルースターに気圧され、"キスの日"という存在そのものに素直に驚いてはいたが、二日目にして彼の意図が読めてしまった。しかしどうだろう、目の前で悪意のない嘘をつくルースターにわざわざそれを言う必要があるだろうか。マーヴェリックは本人が思うよりルースターの"おふざけ"を気に入っている。
    「…それで、昨日の君はここで『今日の分のキスを取り返そう』と言ってたよね」
    「先に言わないでよ」
    不貞腐れた態度を見せるルースターだが、その目は微かに笑っている。ここでいじければ、マーヴェリックはより素直になってくれそうだ。ルースターはマーヴェリックにとって何十人目かの恋人だが、彼が成長した愛し子の手放しの甘えに弱いと知っている。
    「よしマーヴ、もう夜だし、そろそろ今日の分のキスを取り返すよ」
    「取り返すもなにも、今朝いってらっしゃいのキスをしただろう?」
    「…それも昨日聞いた」
    ルースターは苦々しく呟いた。この人はわかってやっている。
    「マーヴはそれで足りるの?」
    「足りる足りないの問題じゃないよ」
    マーヴェリックは腕を組んだ。ルースターは彼の交差する前腕に目をやり、不服そうに口元を歪ませる。
    「俺は足りない」
    「そう」
    ふふん、と笑うマーヴェリックに言葉が詰まる。さっきの態度ではマーヴェリックの牙城は崩せなかったのだろうか。
    「…マーヴ、こうなったら今日は趣向を変えていくよ」
    「何をする気だ?」
    マーヴェリックは組んだ腕をカウンターに乗せ身を乗り出した。ルースターがマーヴェリックの隣までカウンターを回り込んで来る。彼はまだ今朝家を出た時の格好のまま、波が崩れた髪を揺らして座った。そして彼を伺うように見つめるマーヴェリックを見据え、小さく咳払いをして答えた。
    「マーヴはどんなキスが好きか、俺に教えて」
    「好きなキス?」
    「そう」
    マーヴェリックの頭がすっぽり収まる大きな手は、期待に満ちた様子でカウンターを撫でたり太ももを擦ったりしている。自分に身体を向けたマーヴェリックが腕を解き考えるのを待っているのだが、彼の頭上には疑問符が浮かんでいる。
    「うーん…僕にとってはおかえりのキスが特別かなあ…」
    「俺が言いたいのはそういう意味ではないんだけど…ほら、どこにキスされると気持ちいい、とかさ…」
    まあいいか、と言いかけたところで、マーヴェリックが蕩けるように笑って続けた。
    「君が今日も無事に帰って来てくれた、しかも他の誰でもない僕の元に。それを実感する時、僕は嬉しくて仕方ないんだ」
    そう言ってマーヴェリックは眉を下げ、愛し子の頬に触れた。彼の指の動きははまるで綿雲が頬を掠めるようだった。
    ルースターは再び言葉に詰まった。柔らかな笑顔を向ける恋人には、笑うたびに少しずつ刻まれてきた皺が見える。それはもはや表情を変えても消えることはなく、ルースターより多くの月日を生きてきた証となっている。
    「俺、マーヴ以外の人のとこには帰らないからね」
    その皺が刻まれるまで、ルースターはマーヴェリックの心を去っていた。マーヴェリックは、いつか彼が帰って来ることを期待して過ごしていただろうか、それともとうの昔に諦めていただろうか。ただいまとおかえりのキスなど、同じ屋根の下で暮らす恋人同士であれば珍しいことではない。今までもこれからも、一日も欠かすことはないだろう。しかしマーヴェリックにとって何がそのキスを特別なものにしているか、ルースターは理解しつつあるのだ。
    「マーヴは俺からのただいまのキスだけを待っててね」
    「うん、僕はいつまでも、ここで君を待ってる。…頬を差し出してね」
    マーヴェリックは冗談めかして付け加え、ふふっと笑った。
    「唇じゃなくて?」
    「うーん…どこでもいいよ」
    「お、言ったな?」
    「あー…っと…」
    「マーヴ、俺まだただいまのキスしてなかったや。どこでも、していいんだよね?」
    ルースターはマーヴェリックの手を優しく握った。今まで交際した誰よりも歳の離れた恋人を迎え入れようと、年嵩の男は静かに頷き相手の唇を目で追った。
    「ただいま、マーヴ」
    ルースターがキスをしたのは頬だった。首を傾げマーヴェリックの顔を覗き込むと、彼は小さく息を吐き優しく呟いた。
    「…おかえり、ブラッドリー」
    頬の次はどこがいいだろうか。マーヴェリックの唇はルースターのそれを捉えた。握っていた手はルースターの首筋に添えられている。挨拶に相応しい軽いキスの後、マーヴェリックは口髭の感覚が残る唇を舐め、ルースターの耳元で囁いた。
    「君の望み通り、今日の分を取り返そうか」

    少なくとも、マーヴェリックはもう一度ルースターに"ただいま"と声をかけられることを望んでいたはずだ。彼がそれをいつか叶うと期待していたにせよ、叶わぬ夢と結論づけていたにせよ。ルースターはそう信じている。だって、この人はこんなにも嬉しそうじゃないか。
    ただいまのキスは、まだまだ終わらない。唇の次はどこだろう。二人の視線が身体中を飛び回る。
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    カリフラワー

    MENU12/17新刊サンプルです。『今日の同棲ルスマヴェ』ツイート群をSSにしたものの第1巻です。(来年作る予定の『同棲ルマ』ツイログ本とは別物になります)
    ・『Past Ties, Present Love / The Diary of Roosmav 1』
    ・A5/62ページ/全年齢向け
    ・400円(予定)
    ・ほぼすべて書き下ろし
    本になっても変わらず低ハードルでご覧ください。
    12/17新刊サンプル3※連続した日々の記録ではなく、ある一日を日付を特定せず抜き出したもの(という設定)です。
    ※二人の薄い設定としては、ルスはノースアイランドでトップガンの教官をし、マーヴは退役後乗り物の知識と趣味が高じて車やバイクの修理店でバイトしている(免許とか取りそうだし…)…みたいな感じです。

    ※上記の設定は完全に筆者の趣味であり、設定を無視しても問題なく読み進められる内容になっていますので、どうしても二人の設定が気になる!という方はご参考までにどうぞ…笑

    ↓以下本文↓


    ―マーヴとの生活は、言ってしまえばとりとめのないものだ。愛する人と生活しているからといって、毎日重大なことが起こるわけではない。ただ、何も起きない日にもマーヴはここにいて、何も始まらず何も終わらない日々にマーヴという唯一の奇跡が光るのだ。
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