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    araito_00

    @araito_00

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    18↑腐/風七/七風/七風七/

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    araito_00

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    最高企画に参加させて頂きました!
    みんな…書いて…!!

    同棲して何年目かの二人、社会人
    (安定の文字数オーバー)

    #七風食堂
    sevenWindsCanteen

    「おかえり」
    「…ただいま」
     七ツ森の顔には疲れが見えた。彼はここ暫く残業続きで、土曜出勤は常。繁忙期だから仕方がないと割り切ってはいるものの、心身の消耗は激しい。今日も休日出勤を終わらせてきたところで、平日よりは早く帰れているがそれでも時刻は21時をまわっていた。
    「飯?風呂?」
    「ふろ、」
     絞り出した声に被さるように、きゅるる、と間抜けな音がする。風真は思わず吹き出して笑った。
    「身体は正直なようで」
    「…でも、これから準備してくれるんデショ?待ってるのも何か急かしてるみたいじゃん…」
     この頃は帰宅時間が読めず、帰るコールが出来るのは会社を出てからだ。職場まで自転車で五分程のこの環境は有難いが、食事を準備してくれている風真には申し訳ないと、常々七ツ森は思っていた。
    「すぐ出来るからいいよ。座ってな」
     七ツ森は促されるまま、カウンターチェアに腰掛けた。此処からだとキッチンに立つ風真の手がよく見える。炊飯器の蓋が開き、ふわ、と嗅ぎ覚えのある香りが部屋に広がった。甘いケチャップの、何処か懐かしくてほっとする匂い。
    「ケチャップライス?何で炊飯器から出てくるの?」
    「簡易的だけど、炊き込みご飯みたいな作り方もあるんだよ。お前、何時に帰ってくるか分かんないし直ぐに温かいもの食べられた方がいいだろ?」
     ふんわりと山なりに盛られたそれを横に置いて、フライパンに火をつける。冷蔵庫から取りだしたバターを、風真は少し悩んでから、ふた欠片、落とした。こんこん、と小気味良い音を響かせた後、卵がボウルに飛び込んでいく。更に少しの牛乳と、胡椒を数振り。菜箸がくるくると回って、白と透明と橙色の渦を作る。
    「とろとろ?」
    「…とろとろ」
     風真はくすりと笑って、卵液を温まったフライパンへ流し込んだ。軽くかき混ぜ、揺すり、直ぐに火を止める。チキンライスが盛られた平皿は美濃焼で、青い釉薬の濃淡が目立つ。風真はそこに半熟卵を滑らせた。空に浮かんだ月みたいだな、と七ツ森は思った。そして、先程まで外にいた筈なのに、今夜は月が見えたのか、満月なのか三日月なのか、そんな事も分からない事に気がついた。
    「出来たぞ」
    「サンキュ、いただきます」
     うるさい腹に急かされ、慌てて一口。そのたった一口で、いつもより淡い味のチキンライスとか、バターの強く香る卵とか、そういったものから風真の優しさが伝わってくるようだった。満月はあっという間に半月に、三日月に、そして新月になった。
    「早食いはよくないんじゃないのか?」
    「…美味すぎるんだもん」
     七ツ森は、空になった皿を受け取る風真をじっと見た。
    「なんだよ」
    「玲太、俺のお嫁さんにならない?」
     風真はたまらずまた噴き出した。そして、七ツ森の何度目か分からないプロポーズに、何度目か分からないキスで答えた。
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    むんさんは腐っている早すぎたんだ

    DONE七風リレー小説企画 第一弾ラストになります。
    お付き合いいただいた皆様ありがとうございました!!

    (なおラストはどうしても1000文字で納められなかったので主催の大槻さんにご了承いただいて文字数自由にしてもらいました💦今後もラストパートはそうなると思います)
    七風リレー小説⑥ 一度だけ響いた鐘の音に惹かれて風真は歩を進めていく。理事長の方針なのかは知らないが目的地までの道は舗装されておらず、人工的な光もない。すでに陽は沈みきってしまっているため、風真は目を慣らしつつ〈湿原の沼地〉を進んでいく。草木の茂る中ようやく着いた開けた場所にぽつんとあるそこは、予想はついていたが建物に明かりなどついておらず、宵闇にそびえる教会はいっそ畏怖さえ感じる。……大丈夫。俺は今無敵だから。そう心で唱えた後、風真は教会の扉に歩みながら辺りを見回して声を上げた。
     
    「七ツ森。いるのか?」
     
     ――返事はない。
     シン、とした静寂のみが風真を包み、パスケースを握った右手を胸に当てて風真は深くため息をついた。あれだけ響いた鐘の音も、もしかしたら幻聴だったのかもしれない。そもそもこんな闇の中、虫嫌いの七ツ森が草木を分けてこんな場所にくるはずもなかった。考えてみたらわかることなのに、やはり少し冷静さを欠いていたようだ。風真はそっと目の前の扉を引いてみる。……扉は動かない。
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    oredayo_mino

    DONE七風食堂:冷蔵庫の残り物でごはん作ってくれ……風真……。
    明日は買い出しへ買い物に行く日は週に一度と決めている。自宅から徒歩十五分のスーパーは金曜が特売日で、カードで支払うと5%値引いてくれる。一週間分買いだめした食材を小分けにして冷凍し、作り置きのおかずを作っていれば「主婦みたい」と緑の瞳がいつも笑う。
    食材がほとんど底をつく木曜は俺の腕の見せ所だった。すかすかの冷蔵庫の中にはシチューの残りとサラダに使ったブロッコリーの残り。冷凍庫の中には食パンとピザ用チーズ。戸棚の中には使いかけのマカロニ。
    今日の夕食は決まりだ。残り物を工夫してそれなりの料理に変化させるのは意外と楽しい。まず冷凍の食パンを常温に戻す。その間にシチューをあたため、マカロニを湯がく。マカロニは少し芯がある位でざるに上げ、グラタン皿に盛りつける。その上からブロッコリーを乗せ、常温に戻した食パンを一口サイズに切り、同様に皿に盛りつける。その上からシチューを流し込み、冷凍してあったピザ用チーズを振りかける。それからオーブントースターで約8分焼くだけ。すると、チーズのいい香りに誘われたのか、ふらふらと実がキッチンへやってくる。
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