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    pie_no_m

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    POIPOI 17

    pie_no_m

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    お題「全部飲み込む」お借りしました。
    https://shindanmaker.com/590587?c=1
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    #ディノフェイ
    dinofacies

    両手に掬った恋心 休憩室でココアを一杯。右手に持った紙コップに口をつけながら、左手は携帯端末の液晶の上を滑らせる。新着のメッセージ件数は、この短時間では開いても開いても減らない。「彼女」たちとの関係を絶ったところで、DJとしてのフェイスの交友関係が狭まったわけではない。急ぎでないものの返信は基本的に後回しにせざるを得ない量だった。
     メールは一旦置いておいて、気になったのはSNSの通知である。フェイスは何気なく――とは言い切れないほどしっかりした予感を抱えつつ、数字の重なるアイコンをタップした。
     新しい投稿に目を通して最初に出てきたものは鼻から抜けるような溜息だったが、それは呆れなどの負の感情が原因ではなくむしろその逆で、画面を見てひとり和んでしまったことに対する、誰にとも言えない弁解に近かった。
     投稿者はディノだった。夕方からはオフである彼は、SNSを利用して仲間たちに集合を呼び掛けている。こういうことは初めてではない。ラブアンドピースが口癖の彼は、皆で集まることが平和への第一歩と考えているらしかった。フェイスも何度かディノ主催の会合に巻き込まれているが、ディノから直接呼びかけられたことは無かった。彼の中ではなぜか、フェイスの参加は絶対条件であり、フェイスには有無を言わさず、いつも最初から参加者一覧の中に名前を連ねられていた。手を挙げた覚えのない集まりにいつの間にか参加することになっている投稿を見つけたとき、フェイスが片手に持ったココアを溢さなくなったのは最近のことだ。
     勝手に予定を決められるというのは、言ってしまえば迷惑行為にほど近いが、勿論フェイスにこれを実行する義務はない。無視を決め込み、自由な行動をすれば良いだけだ。溜まったメールの返信や、集めているレコードの整理もしなければならない。けれどフェイスには、自分がこのココアを飲み切った後の行き先がわかっていた。そのことが不思議で可笑しくて、微笑む代わりに誤魔化すような溜息を漏らしてしまった。
     ディノが連ねた自分の名前に、「待っているから早くおいで」と言われているようで――このむず痒さは単純な喜びだということにフェイスは気が付いていたが、照れ臭さも戸惑いも、いまは残りのココアと共に飲み込むほかになかった。休憩室を後にする自分の足取りが軽いことも含め、まだはっきり伝えられるほど育った感情ではないのだと、自らに言い聞かせて。
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    Replies from the creator

    pie_no_m

    DONE
    日曜日の番犬 イエローウエストの夜。多種多様な人工灯に煌々と照らされた通りは一晩中眠ることを知らない。歓楽街としては魅力的だが、昼間と比べ物騒で、どこか後ろ暗く、自分の身を自分で守る術を持たない人間が一人で出歩けるほど治安が良いわけでもなかった。ひとつ裏の通りに入れば剣呑な雰囲気は特に顕著であったが、フェイスは気にした様子もなく、胸の前に大きな箱を抱えて歩いていた。一年のうち、もしかしたら半分は通っている道だ。警戒はしても、怯えはしない。その上、今夜は一人ですらない。
    「ごめんね、付き合わせちゃって」
    「気にしてないよ。明日はオフだし、むしろ体力が余ってうずうずしてるくらい」
    「アハ、ディノらしいね」
     歩を緩めて箱を持ち直したフェイスの少し後ろを、フェイスより大きな箱を抱えたディノがそれでも身軽にスキップする勢いで歩いている。箱の中身は、フェイスが懇意にしているクラブオーナーが貸し出してくれた音響機材だった。大きなものは業者に任せたが、いくつかは精密機器も含まれるので直接運ぶための人手が欲しいのだと頼んだところ、ディノは快く引き受けてくれた。『ヒーロー』としての業務終了後、そしてディノの言う通り明日は休日なので、【HELIOS】の制服は身につけていない。一般的な服を着た、背丈のある男が爛々と目を輝かせて歩く様は、この界隈で言えば異常だった。目を引いても絡まれないというのは、見た目のおかげで人種性別問わずエンカウントの多いフェイスにとって非常にありがたいことだ。最初にディノをクラブへと誘ったときも、似たような理由があったことを懐かしく思う。
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    pie_no_m

    DONE🐺🍕×🐈‍⬛🎧で👿🍣と💀🍺も出てくる。
    やりたい放題のファンタジーパロです。何でも許せる方向け。
    ラ リュミエール 息をひそめ、自らの気配を殺す。
     カーテンは閉め切り、電気を消していても、フェイスの目には部屋の中の様子がよく見えた。窓から射し込むランタンの灯りは、リビングの床に二人分の影を伸ばしては縮めていく。尖りきって壁にまで届きそうな三角の影は全部で四つ。フェイスの猫のようにぴんと立てた耳と、隣で膝を抱え背を丸めるディノの、フェイスのものより大きくてふさふさの毛が目立つ耳。そのシルエットがひくひくと落ち着きなく動くのを、フェイスは身動きもせずただじっと見つめていた。
     十月三十一日。外から子供たちの興奮した話し声や高い笑い声が聞こえる。きっと彼らは魔物や悪霊の姿を模して、通りの玄関の扉を順番に叩いては大人に菓子を要求している最中だろう。それではなぜ、そんな通りに面した部屋に住む自分たちはこうして身を隠すような真似をしているのか。フェイスはともかく、ディノは普段から街の人間と仲が良い。喜んで道行く子供たち皆に菓子を配りそうなものだが――明白な理由である三角形の影が、フェイスの見る前でまた一回ひくりと動いた。
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