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    むつき

    @mutsuki_hsm

    放サモ用文字書きアカウントです。ツイッターに上げていた小説の収納庫を兼ねます。

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    むつき

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    天然主4くん×どぎまぎシロウ

    #東京放課後サモナーズ
    tokyoAfterSchoolSummoners
    #シロウ
    #主シロ
    mainWhite

    「ふり」なんかできない 正面じゃなく、横から呼ばれて首をひねる。俺の顔を覗き込んでいた彼との距離は予想よりも遥かに近くて、思わず肩が跳ねた。慌てて距離を取ろうとするも、セーフハウスの壁際に座り込んで本を読んでいたのだ。壁に背中がぶつかって、どんと重い音を立てる。とっさに逃げられる場所なんてなかった。
    「お、俺の顔に何か……」
    「んーっとね」
     俺の動揺には気づいてすらいないのか、リラックスしきっているらしい彼はふんわりした口調だった。俺の横へぺたりと座り込み、ますます顔を寄せてくる。興味津々といったように目を覗き込んでくる彼の瞳には、肩をこわばらせる俺の姿が映っていた。
     鼓動がどくどくと鳴り響く。もっと顔が近付いてきて、唇が触れるだろうか。それとも、その前に手が伸ばされて、指を絡められるだろうか。ぴっとりと触れ合わされる感触、指と指のあいだをすべる皮膚の温度。
    「シロウって、まつげが長いよね」
     彼の一挙手一投足に神経を集中させていたというのに。彼が放ったのは、感心したような台詞だった。
    「よくこうやってめがねを押し上げてるでしょ。そのたびにレンズにまつげがぶつかってるから、長いなぁって前から思ってたんだよね。近くで見ると、それがよく分かるなぁと思ってさ」
     彼は俺の仕草を真似しつつ、楽しそうに話している。屈託のない笑顔だ。変に意識していたのが恥ずかしくなって、勢いよく顔を伏せた。
    「あまりからかわないでくれ」
     咳払いをし、読みかけの本の続きへ戻るべく文章を辿る。……違う、ここはもう読んだ一文だ。数行飛ばして進んで、けれどいま物語にどんな展開が起きていて、登場人物たちが何について話をしているのか、まるで頭に入ってこないのだった。
    「シロウ?」
     小さな声が横から投げかけられる。うん、と応えはしたけれど、俺は本のページから顔が上げられなかった。
    「せっかくなら、キスすれば良かったかな」
     小説の世界へ戻りかけた俺を、その一言が掴んで引き留めた。そっと盗み見た彼は、唇をとがらせている。
     別に今からだって遅くはないぞと言おうとして、でも今、俺は本を読んでいるふりをしているのだった。
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    むつき

    DONE両想い主シロ
    シロウ視点
    十七時三十八分 発車時刻三分前、急ぎ足で飛び込んだ車両にはまだいくらか空席があった。車両の中程に進むうち、二人掛けの座席が空いているのを見つける。
    「座るかい?」
     夕暮れ時にはまだ早い。明るく照らし出された窓際の席を、視線で示してみせる。
    「じゃあ、お言葉に甘えて」
     彼はそう言って、窓際にしずかに腰を下ろした。
     上体を軽く揺さぶる振動と共に電車がホームを離れていく。そのタイミングで、大きなため息が聞こえた。
    「本当に、お疲れさま」
     心からの気持ちを込めて言葉をかける。ちらりとこっちを見た彼は、表情をほどくようにして苦笑いをこぼした。
    「こっちへ来ると、いつもこうだよね」
     六本木のギルドマスター、及びギルド内屈指の有力者たちに用があって、放課後を待ってから駅へ向かった。そうやって二人で赴いた先、彼は熱烈な、それはもう文字通り熱烈な歓待を受けた。惜しみなく繰り出される愛の台詞を受け止め、手を取られては跪(ひざまず)かれ。そうこうしているうちに彼らの従者たちも飛び出してきて、上を下への大騒ぎになっていく。ようやく開放されたのは、用事が済んでから随分経ってからのことだった。
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