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    水月 千尋

    @arukurein

    短すぎるものは恥ずかしいのでフォロワ限。
    R18はリス限。
    一部、支部に置いてあるものとかぶってる。

    マイタグを細かく付けたので
    少しは作品を探しやすいといいなぁ……
    と、思っている。


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    水月 千尋

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    #ritk版深夜の60分一発勝負 (ワンライ)の
    お題『嘘』をお借りして書いたものです。
    [所要時間:2h+10m]

    また屋上かよ!!!!

    #類司
    RuiKasa
    ##ワンライ
    ##類司

    【嘘つきナイト】


     基本的に僕が昼食を摂る場所は決まっていない。確率的に屋上や中庭が多いのは作業をしながらだったりするからで、昼食とその後のゴミを持ってうろうろするのが面倒な時は、教室で適当に胃に流し込んでしまうこともある。
     そして、今日もそのパターンだ。
     僕はタマゴサンドを手早く胃に納めて、作業道具や作りかけの小さめのロボットが入った黒いバッグを手に屋上へと急いだ。
     通い慣れた階段をかけ上がって屋上のドアを開くと──頭上に広がっていたのは抜けるような青空だった。くわえて、熱くも冷たくもない風が心地よく吹き抜けていくそこはくつろぐのに絶好の場所だったのだろう。暖かな日差しをやわらかく跳ね返す見慣れた金の髪が、こっくりこっくりと舟を漕いでいた。……司くんだ。

    (珍しいこともあるものだね)

     彼の食事場所も、その日その日で変わる。本人曰く『優雅なランチタイムを過ごせる場所が変わるのは当たり前だろう』だそうだけど、最近は屋上で僕と食べることが多い気がする。それにしたって、食後にこんな風に眠ってしまっているのは中々珍しい姿だった。
     ──彼が来ていたならここで食べても良かったな。
     今さらそんな後悔をしつつ、足音を忍ばせて彼の隣まで辿り着く。ゆっくりと腰を下ろして、中身的に音が鳴りやすい手荷物もそっと下に置いた……が。

     ──カチャンッ──

     何かの金具同士がぶつかるような小さな音が響いた。しまった、と胸中で失態をぼやきつつ、慌てて彼の寝顔を覗き見た僕は……驚きで息を飲んだ。
     しっかりと閉じられた両のまぶた。
     そのどちらの目の端からも、涙がつうっと伝い落ちていたからだ。

    「……っ……!?」

     一瞬、起きているのかと声をあげかけたものの、それ以外に彼に目立った反応はない。どうやら夢を見て泣いているらしい。悲しい夢を見ているなら起こしてあげるべきかと思ったが、夢の内容次第では、変に起こすと目が覚めた後で不快につきまとわれるかもしれない……。
     起こすべきか、起こさざるべきか。そんな二つの選択肢の間で揺れていると、校舎内に鳴り響く予鈴が少しくぐもった音で聞こえてきた。
     しかし、それでも司くんは目を覚まさない。時々リズムを乱しながらも、すぅすぅと寝息を立てて眠ったままだ。かなり熟睡してしまっている。

    (これは……夢の良し悪しを抜きにしても起こしたくないな)

     よし、と心を決めた僕は、じりじり彼との距離を詰め。ぴったりとくっついた所で彼の肩を抱き寄せた。度々揺れていた頭はいとも簡単に僕の肩へこてんと寄りかかってくる。その衝撃で薄く開いた彼の口から、ん、とかすかな声がもれたが、さらりと額を流れた淡い色の髪に軽く唇を落として優しく頭を撫でた。

    「……大丈夫だよ。まだ寝ておいで」

     と。数秒の間をおいて、また寝息が聞こえ始める。その目からもう涙が出ていないのを見て、僕はほっと胸を撫で下ろした。

    「こんな嘘をつく僕を、君はどう思うんだろうね」

     僕と違って、司くんは真面目に授業を受ける人だ。目が覚めて午後の授業が始まっているとわかったら、なぜ起こさん、と怒るかもしれないし──むしろそんな姿だけが実に容易に想像できた。
     それでも、


    「今は……君の眠りを守るナイトでいさせて欲しいんだ」


     いつも皆の先頭で頑張る君が、少しの間だけでも心安らげますように──祈りを込めて。こめかみにそっと唇を押しあてる。
     紡がれる穏やかな寝息は変わることなく。凪いだ風に、繰り返し溶けていった。
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    水月 千尋

    DOODLE参謀🎈×将校🌟。(モブ参前提)
    単話調にタイトルついてますが、実質4話目。

    まだ完結してませんが、以降の話は作成中。


    ========


    【前話】
    →https://poipiku.com/599411/10134333.html
    【すれちがいの午後】
     暖かな陽気。穏やかな風に、やわらかい日射し──。前日の肌寒さが嘘のように、今日は朝から春めいた良い天気だった。屋敷前の木々へ羽を休めに来たらしい小鳥のさえずりも、心なしか賑やかだ。
     そんな変化は窓の外だけにとどまらない。普段は日当たりが良いとはいえないこの執務室にも陽光が射し込んできていた。ささやかな恩恵程度ではあるが、窓際に飾った一輪挿しの花瓶越しの光が今座っている机の所まで届くのは初めて見る。もう少し暖かくなってきたらこの部屋のまた違う一面を見られるのかもしれないと思うと、それはそれで楽しみだ。
     一方で、机の端に積んだ要望書の量は昨日や一昨日と何ら変化はなかった。放置しているのではない。処理出来た分と同じくらいの枚数が翌朝に届く為、一向に減っていかないのだ。作業自体は一枚一枚に目を通して可否のサインをしていくだけではあるものの、その可否を決めるのに手間取る案件も当然混在していて気も抜けない。
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    3iiRo27

    DONEritk版深夜の60分一発勝負
    第二十三回 お題:「お隣さん」「嘘」
    司視点 片想い
    途中で視点が変わります
    カチャカチャと音を立てながら、手早く混ぜていく。

    カップに入れる生地の量は、綺麗に均等に。

    オーブンの余熱も忘れずに。


    オーブンから取り出した出来立てのそれに、思わず笑みが溢れた。






    「…今日の練習は終わり!お疲れ様でした!」
    「「「お疲れ様でしたー」」


    終わりの挨拶を済まし、帰るかと思った時、渡していないそれのことを思い出した。


    「…ああ、そうだ!今日もお隣さんからお裾分けを頂いたんだ!持ってくるな」

    「わーい!今日は何のお菓子だろー?」
    「段々と上達してきてるもんね。私も楽しみ」
    「そうだね」

    3人の声を尻目に鞄に急ぎ、綺麗にラッピングされたそれを取り出す。



    「今日は抹茶とホワイトチョコのマフィンだそうだ!この前の改善点をしっかり見直したと言っていたぞ」
    「ありがとー!お隣さんにもよろしくね!」
    「私からも、よろしく」
    「僕からもお願いするよ。…それにしても、今回のも美味しそうだねえ」

    ドキ、と高鳴る胸を3人に見えないように抑える。
    幸い、それに同調したえむによって見られはしなかったようだ。よかった。




    ……お隣さんからの貰い物と称して、 1883