誇りの味 出来立ての料理を前にした時、客は色々な表情を見せる。
黙って覗き込み、へぇ~という面をする奴や、隣の客とお喋りしたままナイフとフォークを手に取る奴。
提供したネロの顔を見「やるじゃねえか」と偉そうな顔をする奴に、腹が減っているくせに無表情に努める奴。
その誰もが一口料理を口に含んだ瞬間には、はっと目を見開いてそのまま食べ続けるのだから面白い。注文の際にはうるさいほどにお喋りな奴も、一回食べ始めてしまえば無口な奴に早変わりだ。
忙しないランチタイムであっても、ネロは彼らのそんな表情を眺めるのが好きで、愛しく思っていた。
ネロが営む麦穂の本日のランチメニューは皮をパリパリに焼いた鶏肉のグリルに、ビーツで彩りを加えたトマトとミートボールの具沢山スープ。
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