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    よるのなか

    二次創作文字書き。HRH🍣右、🍃右中心。

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    よるのなか

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    キスブラ。初めてブさんがキさんに和食を振る舞ってもらう話。
    いつ頃とか深くは考えてないです。
    キさんが作ったものをブさんが食べるというシーンが好きで、皆様のを読み漁るし、定期的に自分でも生産したくなります。

    #キスブラ
    kissBra

    初めて作ってみた キースに呼び出されたブラッドは、仕事を終えてイエローウエストにあるキースの家に向かっていた。明日も仕事だったが、そんなに時間は取らせないという。では何の用事なのかと聞いたが、それは着いてからのお楽しみと言われてしまった。
    「それで、何の用だ、キース」
    「まぁまぁ、とりあえずここ座ってくれ」
     家に入るなりそう聞くブラッドに、キースはにやりと笑いながら、ダイニングテーブルに案内する。言われるままに席につくと。
    「そのまま大人しく待ってろよ〜」
     そう言って、キッチンに向かっていく。ブラッドが首を傾げていると、程なくしてトレイに何かを載せたキースが戻ってきた。黙ったまま様子を見守っていると、キースが順番にそれをテーブル上に並べていく。

     白飯。
     味噌汁。
     お新香。
     鯖の味噌煮。

     ブラッドは、呆然とキースを見た。
    「お前が…作ったのか」
    「まぁ、な」
     キースが照れ臭そうに目を逸らす。ブラッドは、まだ驚きから戻っていなかった。何故なら。
    「お前、和食は面倒だと言って一度も作ってくれなかったではないか」
     思わずそう言うと、キースはブラッドに視線を戻し、力一杯頷いた。
    「面倒だったぜ〜。味噌汁はちゃんと花鰹から出汁取ったし、鯖も臭味取るところからやったんだぜ」
    「では、何故」
     ブラッドが重ねて問うと、再びキースは目を逸らす。
    「そりゃあ……お前に作ってやりたいと、思ったから」
     お前の喜ぶ顔が見たくなったんだよ、そうぼそぼそとキースは続ける。

    *****

     遡ること、数時間前。
     自らの家のキッチンに立つキースの前には、鯖の切り身等の食材が並べられていた。
    「さあオレ。もう後戻りはできねぇぞ」
     そう呟いて、食材に手を伸ばす。
     和食を作ろうと思ったのはほぼ衝動的だった、と言って良い。これまではどんなにリクエストされても断っていた。手間がかかる、理由はこれに尽きる。
     だが、ブラッドに惚れて恋人同士となり、あのカタブツがほんの少しでも表情を緩める瞬間が嬉しいと思うようになってからは、何度でも喜ぶ顔が見たいと思うようになってしまって。
     食材の買い物中に和食用の材料を目にした時、これで和食を作ったら喜ぶだろうか、そう考えてしまった。そして気が付いたら、今日一日で準備できそうなメニューを考えて必要な食材を手に取っていたのだ。

     食べる相手の事を思いながら料理を作ることが、これ程楽しいものだとは、知らなかった。

    *****

     ブラッドは、暫く呆然とキースを見ていたのだが、やがて。
    「キース」
     側に立つキースの手を、そっと握った。
    「嬉しく、思う」
     精一杯の感謝を込めて、そう伝える。この喜びは、伝わっただろうか。
    「おぅ……冷めないうちに食べろよ」
     キースはぶっきらぼうにそう言うが、どうやらかなり照れているようで。伝わったのだろうと、思う。
     和食だからと、ブラッドは日本の流儀で手を合わせた。

    「いただきます」

     この言葉には、様々なものを『いただく』という意味が込められていると、聞いたことがある。
     食材の命を。
     食材が販売店に並ばれるまでに携わった者達の時間を。
     そして、作ってくれたキースの時間を。
     キースの想いを。
     ブラッドは感謝の心を込めて言い、箸を取った。
     
     まずは味噌汁を一口。なめこと、絹豆腐だ。きのこの味わいと豆腐の滑らかさのバランスが良い。
     お新香は白菜の浅漬だ。程良い塩分であっさりとしていて、口をさっぱりと清めてくれる。
     そして、鯖の味噌煮。
     じっくりと煮込まれた身は、箸がすっと通った。一口ずつ、口に運ぶ。それは口の中でほろほろと崩れ、溶けた。甘い味噌の風味が口一杯に広がる。

    「……美味い」
    「なら、良かったよ」

     言葉を交わしたのはそれだけ。その後ブラッドは黙々と食べ進め、キースは、それを穏やかに見守る。

     心地良い沈黙が、部屋全体に満ちていた。
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    よるのなか

    DONE幻想水滸伝webオンリーイベント「星の祝祭Ⅵ」のWEBアンソロ企画参加作品です。
    キャラ「2主人公とジョウイ」で、お題「緑」お借りしました(CPなし)
    ミューズ和議決裂後のどこか(設定はふわふわ適当)で、偶然二人だけで会うことになる2主とジョウイの話。
    ハーンとゲンカクも戦時中に酒を酌み交わしていたらしいし、二人にもそんな時があればいいのに、と想像した結果です。
    2主人公の名前→ミラン
     時折、一人になりたくなる時がある。城から出て、誰にも会わずに、ただ一人でぼうっと自然を眺める時間。勿論長時間そんなことをするわけにはいかないので、ごく短い間だけれど。そんな衝動に駆られた時は、ミランはこっそりビッキーを訪ねてどこかに飛ばしてもらい、一人の時間を過ごした後で鏡を使って戻っていた。
     今日も、そのつもりだったのだ。飛んだ先で、思わぬ人物に会うまでは。
    「やっばり、今の時期は緑が綺麗だと思ったんだよな。うん、ここにして良かった」
     そう呟いて、ミランは両の手を天に伸ばし一つ深呼吸をした。澄んだ空気と青々とした空の下で、鮮やかな緑が生い茂っている。乾いた風に揺られて緑が揺れる、その合間からきらきらと漏れる光が綺麗だ。人気のない山の中腹。少し歩けば、故郷が見えてくる。幼い頃冒険と称して、ナナミやジョウイと何度か訪れた場所だった。今日はどこで過ごそうか、そう考えていた時にふと頭の中に浮かんだのが、この場所だった。昔、ちょうどこの時期にも訪れたことがあり、その時に木々の緑がとても美しく感じたのを思い出したのだ。本来ならば今は訪れることは叶わない地であるが、こんな山奥に兵を置く程の余裕はハイランドにもないはずであり、ビッキーの転移魔法と鏡の力で、ほんの僅かな時間ならば滞在は可能だろうと判断して今に至る。勿論これが仲間に知られれば大目玉を食らうことは確実なため、こっそりと。
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    よるのなか

    MOURNINGキスブラ。酔っぱらって暴君極まりないブさんです。ブさんが大分いけいけどんどんおかしなことになってます、すみません…キさんを暴君振りで振り回すブさんが急に書きたくなりまして。
    書いててとても楽しかった。
    割増暴君『三十分後、お前の家』
     受信したメッセージには、それだけが表示されていた。理由も状況もさっぱりわからねぇが、とりあえず三十分後に家にいろ、ということだけはわかったから、ディノにそれを告げてオレは自宅へ足を向ける。ちょうどパトロールが終わったところだから三十分後に着けるけど、これタワーで受け取ってたら三十分後に着けるかなんてわからねぇぞ、とそこまで考えて、いや、パトロール中だとわかっていたんだな、と思い直した。あの男のことだ、それくらい把握済みで送った指示なんだろう。
     ぴったり時間通りに着くと、既にブラッドは玄関先に立っていた。
    「……来たか」
     そう言って、オレをじっと睨んでくる。来るなり睨まれても、とオレは思わず後退りしそうになって、それからよくブラッドを観察した。どうも、目が据わっているように見える。なのにどこか覇気がなくて、それから目元や首筋、頬など全体的に妙に赤いような。
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    みぃ☆

    DONE2020→2021 甘々キスブラで始まります♡

    第8回キスブラワンライ「年の瀬」からお読みいただけると、より楽しめると思います!
    『3・2・1……Happy New Year!!』

    おめでとう。
    今年もよろしく!

    タワー内のあちらこちらで新年を祝う声が聞こえてくる。

    「夜勤をしている者もいるというのに……はしゃぎすぎだ」
    けしからんと言わんばかりに眉間に皺を寄せたブラッドも、今夜はグラス片手に談話室で皆の輪から外れたところに佇んでいる。
    先ほどまで、ジェイやリリーと新年の挨拶を交わしていたが、二人もセクターのメンバーや教官仲間たちの元へと戻り楽しそうに酒を酌み交わしていた。
    ブラッドはサウスメンバーと挨拶を交わした後、持て余し気味のグラスを片手に皆の輪から抜けたところだった。
    狭い会場の中心では、お祭り騒ぎの大好きなディノが、2021の形をした眼鏡をかけ、人々の間を楽しそうに歩き回っているのが見え、苦笑と共に小さなため息を尽いた。
    「まったく……明日、いやもう今日か。任務がある者もいるだろうに」
    そう零すブラッドの口元は緩いカーブを描き、言葉とは反対に穏やかな表情でパーティー会場を見つめていた。
    一人壁の花に扮するブラッドを気にするオスカーの視線を感じたが、今夜くらいはオスカーも楽しむべきだと、敢えてその視 3894