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    ちまき

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    ステバキ。学パロ。第13話
    片思いスティーブ×無自覚バッキー

    冬休み明けの話。SS三本立て。

    #stucky
    #ステバキ
    stevaki

    すれ違う廊下冬休みが終わり、雪がまだ残る校舎の裏庭を抜け、スティーブとバッキーは並んで寮へと戻ってきた。
    手にはそれぞれ、実家から持ち帰った荷物。少し重たいけれど、肩を並べて歩くこの時間が、楽しくもあった。

    ドアを開けると、二人の部屋は数週間前と変わらずそこにあった。
    スティーブがバッグをベッドに置きながらちらりと視線を向けると、バッキーの手元の鍵にふと目が留まる。

    黒革に《B》の刻印が入った、あのキーチェーン。
    スティーブが年末、少し緊張しながら渡したプレゼントだった。


    「……ちゃんと、つけてくれてるんだ。」
    思わずこぼれた言葉は、自分でも気づかないくらい小さな声だった。

    けれど、すぐそばにいたバッキーには、しっかりと届いていたようで。

    「当たり前だろ。」

    振り返った彼の声はいつも通りで、それが逆にスティーブの胸をあたたかくする。

    「お前こそ、俺があげたマフラー気に入ってくれたんだな。よく似合ってる。」


    マフラー。
    今も首元にふわりと巻かれている、青地に赤のラインが入ったそれを、スティーブはふいに指先でなぞった。
    褒められるなんて思ってなかった。嬉しくて、けれど素直には返せなくて、照れ隠しに小さく笑ってしまう。

    「ありがとう、バック。」

    言葉はそれだけだったけど、部屋の空気はどこかほんのりと甘かった。

    新しい季節、新しい日常。
    再び始まった寮生活の中で、二人の距離はまた少しだけ近づいた気がした。




    ━━━━━━━━━━━━━━━

    《アイツが笑ってた》 バッキー目線。


    新学期が始まってからというもの、スティーブは以前よりもずっとクラスに馴染んでいた。
    最初こそ物静かで真面目な印象だったが、今では廊下でも教室でも、誰かに話しかけられては笑顔を返している。
    ――そんな様子を、バッキーは少し離れたところから見ることが増えた。


    この日もそうだった。昼休み、忘れ物を取りに教室へ戻る途中。
    廊下の端で、スティーブがクラスメイトのペギー・カーターと話しているのを見かけた。
    ふたりは何か楽しそうに笑っていて、スティーブはペギーの言葉に肩をすくめながら、頬を赤らめていた。

    (……なんだ、あの顔)

    スティーブがあんな風に照れて笑うのは、自分の前ではあまり見たことがなかった。
    声をかけようとした足が止まり、バッキーはその場で立ち尽くしてしまった。

    (……そうか、ああいう子が…)

    不意に心の奥がきゅっと締め付けられた。自分の知らない表情、自分の知らない会話。
    胸の奥で小さな、でも確かなモヤが芽生えた。

    ふと数日前のスティーブの様子を思い出す。

    ──《気になる人の心を掴むには》なんて特集の載った雑誌を、真剣な顔で読んでいた。

    (……そうか、あいつにも、好きなやつができたんだな)

    妙に納得してしまった自分がいた。
    だからこそ、最近自分に妙に優しかったことも、やたらと気が利く行動も、どこか合点がいった。

    (だからあんな雑誌、読んでたんだな……)

    思わず、小さく息をつく。
    胸に浮かぶのは少しの寂しさと、ちょっとした納得。

    「……がんばれよ。スティーブ。」

    独り言のように呟いて、バッキーは荷物を取り元来た道を静かに帰って行った。





    ━━━━━━━━━━━━━━━

    《大切な相談》 廊下話、スティーブ目線。


    賑わっている昼休み。
    スティーブは先日の出来事をペギーに話していた。

    「……へぇ、それって“親友”に贈るプレゼントの範囲、超えてない?」
    そう言って、ペギーはからかうように笑った。

    「いや!彼はたぶん …そ、そういう意味じゃ……!」

    スティーブは顔を赤くして言葉に詰まる。
    けれどペギーはそんな様子に驚くでもなく、ただニヤリと口角を上げた。

    「でも、嬉しかったんでしょ。キーチェーン、ちゃんと付けてくれてたんでしょ?」
    「……うん。見た時、正直すごく嬉しかった」

    食い気味に答えた自分に、自分でも驚く。
    でも、事実だった。マフラーも、キーチェーンも。
    何より、「また映画行けたらいいな」――その一言が、スティーブにとってどれだけ希望になったか。


    しかし、

    「……バッキーのやつ、まだ気づいてくれないんだ」


    ぽつりとこぼしたスティーブの声に、隣で寄り添うペギーが思わず目を見開いた。

    「えっ、あんなにアプローチしてるのに!? 私から見たら丸わかりよ?」

    「うそ。…え、ペギー、気づいてたの!?
    はぁ……気づいて欲しい相手には全然手ごたえないのにな……」
    スティーブは思わず壁にもたれ、重いため息をついた。

    「俺なりに頑張ってるんだけど……貢ぎ物(主にお菓子とか)も、忘れ物をそっと用意するのも、アイツ普通に“ありがとう”で終わるし……」

    「そりゃもう、ただの"親友"で終わってるわね」
    ペギーは苦笑しながらも、真剣なまなざしでスティーブの肩に手を置いた。

    「……どうしよう、ペギー!」
    情けないほど素直に頼るスティーブに、彼女は小さくため息をつきながらも、きっぱりと言った。

    「こうなったら、“当たって砕けろ”よ。次の映画の日に告白しなさい」

    「砕けたら困るんだけどなぁ……」

    弱々しく返しつつも、スティーブの心にはその言葉が真っ直ぐに届いた。
    ペギーの後押しで、ようやくその決意に少しずつ火が灯っていく。


    (……次の映画の日。今度こそ、ちゃんと伝えるんだ!スティーブ!)


    ━━━━━━━━━━━━━━━









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