毎度『結婚』がトレンドワードになるオレたち テレビの向こうにあるモノなんて、全部虚像だと思っていた。作ったような笑い方だとか、善意に見せかけた綺麗事だけの言葉だとか。何考えてんのかもわかんねぇ人間の偽物に見えて、違う世界でも広がってるみてぇな感覚。
「君、背高いねぇ」
「は?」
一瞬、自分に声が掛けられてるんだと気付かなかった。
住ませてもらってるヘルスの手伝いで、スーツ着て店番してたその日。ゴミ捨てに店が入ってるビルの外に出たら、夜だというのに至るところで眩しいくらいにネオンが光っていた。向かいのビルに設置された大型ビジョンで名前も知らないアイドルグループが楽しそうに踊っているのをぼんやりと見上げていたところ、ふと隣に人の気配を感じてようやくオレに向かって言葉を発していたのだと思い至る。
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