AM11:00 瞼が開く。あまりにも軽くはっきりとした目覚めに、少なくとも早朝ではないだろうと考える。しかし腕の中にはまだ、ネロがいた。
俺の腕の中に潜り込むようにして目を閉じているネロは、普段であれば俺より早く起きて朝食を作っている。
さて、今は何時か。答え合わせをしようと手探りでスマートフォンを探していると、ネロが小さく唸ってうっすらと目を開けた。
「……はよ」
「おはよ」
「あんた全然起きそうにねえから、遅めの飯にしようと思って二度寝したんだよ」
その言葉を聞きながら、手に触れたスマートフォンを手繰り寄せスリープを解除する。時間は正午まで一時間を切っていた。
「何時?」
聞かれ、画面を見せる。
「うお、寝過ぎた。ブラッドあったけえからさ」
「確かに空気が冷てえな」
「朝はもっと寒かったよ。冬来てるなって感じ」
もそもそとネロが体を起こし、布団の中に空気が入る。ほんの数日前までとは鋭さが違う空気だ。
一緒に起きて、伸びをする。深呼吸も一つ。馴染みのある空気が近付いている気配がした。
「すぐ飯食うよな」
「おう!」
俺より一足先に、ネロが洗面台へ向かう。その後をついていきすがらキッチンを覗いたが、まだ料理の形跡はない。
「まだ何も作ってねえよ。これからだともう昼飯だな」
続く足音が途絶えたことに気付いたネロが振り返ってそう言う。返事の代わりにきゅる、と腹が鳴って、前を行く男が小さく笑った。
「すぐ作るから、待ってなよ」