水も滴るなんとやらナックルシティにある閑静な住宅街。綺麗に整えられた庭木に囲まれた中庭では、大きめの滑り台までついたビニールプールが二つ。一つには並々と水が張られ、もう片方には赤褐色の砂が同じように盛られていた。
「大きいプール、買って良かったな。即席の砂場も、簡易的だが結構楽しんでくれていて安心した」
「ほんと、買って良かったわ」
今年のガラルの夏は、例年以上の気温を日々叩き出しており、日差しがキツい日は暑さを好むコータスですら少しへばっている様子があった。ジュラルドンに至っては、熱によって体の表面温度が上がりすぎてしまい、下手に触れると火傷の危険があるレベルだった。そのせいか、生まれたばかりのまだ幼いポケモン達は、日中あまりボールから出たがらなくなる子が増えてしまった。
ボールの中は確かに快適ではあるが、そこに篭りきりでは成長にも宜しくない。しかし、暑い中でただ動くというのもまだまだ小さなポケモン達には酷な事で。そこで考えついたのが今回のプール作戦だった。
日陰に砂の入ったプール。日向には水の入ったプールを置いて遊ぶように促してみると、最初は様子を伺っていた彼らも、すぐにそれぞれの好みに合った方ではしゃぎ始めた。
「冷たいぜ!」
「眼福かよ…ロトム、写真頼むわ」
「お任せロト!」
キバナがホースを片手にポケモン達へと水をかけてやっている横で、ダンデも大はしゃぎでポケモン達と水のプールの中に入っていた。水着一枚だと日に焼けすぎてしまうからと心配したキバナによって、彼のラッシュガードを着せられているが、キバナの方が体格が大きいために、ダンデが羽織ると少し大きすぎる印象となってしまっている。
ただ、少しだぼっとした袖口や裾から出る手足が、キバナにとって予想以上にくるものがあり、ダンデがはしゃいでキバナの方を見てないことをこれ幸いにと、しっかりと網膜に焼き付けていた。一応キバナにだって、小さなポケモン達の教育上良くないことはしないようにしようと我慢した上での、ギリギリラインの行為だった。
「キバナ!見てみろ!ヌメラが水吸ってこんなにぷやぷやしてる…可愛いぜ!」
「可愛いな」
「スナヘビは…顔だけちょこんと出して寝ているのか。あまり普段は見れない姿だから面白いな」
「そうだな、可愛いな」
「小さな子達が遊び終わったら、夕方くらいに他のポケモン達も部屋から出してみないか?その頃ならジュラルドンも体温がそこまで上がらないだろうし」
「そうだな、可愛いな」
会話が噛み合っているようで、噛み合っていないような2人は、その後もはしゃぐポケモン達に囲まれて夕方頃までそれぞれの夏を楽しむのだった。