「可愛い親子だね」
そんな言葉を悟空の耳が捕らえて、瞬時に握っていた手に力が籠った。
自分の息子達よりずっと幼く孫娘よりも年下に見える容姿の孫悟空だが、その中身は妻であるチチとふたりの子を成し、先に述べた孫もいる身である。そして宿す力も容姿から想像するものよりははるかに強く、ともすれば女性の骨をも握り砕いてしまいそうな感情の沸騰も、相手がチチであるということから半ば本能的に抑えられたのは行幸だった。
「悟空さ、どうしたべ?」
「……なんでもねぇ」
「なんでもねぇって感じのお顔じゃねぇべなぁ。拗ねちゃっただべか」
繋いだ手の位置よりもずっと高い場所に、チチの視線がある。
パオズ山の家を度々不在にはしていたけど、彼女の元に帰っていくと自分よりも下に彼女の目線があったのに慣れている分、今の状況はやはり「違う」のだと痛感させられる。
子供の姿でチチの元に戻るとやはり泣かれてしまったけど、感情を一時的に高ぶらせはするがチチは対応型の人なので受け入れざるを得ないと理解すればすとんと落ち着く。そこは長男、悟飯曰く、セルとの闘いの後死者からの生還を望まなかった悟空に対しての感情も少し時間はかかったがそうだったらしい。
「悟空さが生きているなら、どんな悟空さでもおらは嬉しいだよ」
チチの方から悟空の小さな手をぎゅっと握りこんでくる。
あたたかいけど肌触りに違和感がある。でも、まごうことなき大好きなチチの手だ。
「夫婦には到底みれねぇし、親子がせいぜい。ひょっとしたらおらがばーちゃんに見えるかもだけんど、悟空さはおらの旦那様だべ」
「……やっぱおらチチにはかなわねぇなぁ」
「そりゃあおめぇさの嫁だもの。強くはねぇけんど、こうでもしなきゃやっていけねぇだ」
「チチはすげぇよ。元に戻る方法も探すけどさ、一緒にオラすっげぇめっちゃくちゃオトナになれるようにしてくっから、チチにおいついて夫婦に見られるようにしてくっぞ」
「おとなになる…、ふふ、悟空さならそれもできそうだべ。楽しみにしてるだよ」
「おう!」
笑う彼女のもとに、つま先ひとつでふわりと飛び上がって頬に口付ける。
周囲に人がいる中だったので、驚いたチチから窘める声が発せられたが、悟空はにっかりといつもの笑みを浮かべてチチの手を引き、買い物の続きへと促していった。