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    57ワンドロライ 第57試合『猫〜Cat〜』
    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi

     父、孫悟空にそっくりだと言われていた悟天が髪を切った。いわゆる最近の若者風になった悟天は思春期らしい少年から青年へと進んでいるわけで、それを理解するものもあり、少し勿体ないと思うものもいる。

    「お母さんは前で、兄ちゃんは後ろだね」
    「へぇ、なんか意外だな。悟天のお母さんって悟空さんのことすごく好きだから悟空さんそっくりな悟天はそのままでいてほしがるかとか思ってたよ」

     西の都、カプセルコーポレーションのトランクスの部屋。部屋の主であるトランクスから渡された清涼飲料水を遠慮なく受け取る悟天は、ハイスクールからの帰りの寄り道中だ。

    「兄ちゃんが父さんっ子だったから、僕が生まれる前の色々で父さんに似てる僕に色々思うところあったんだろうってお母さんが言ってた。反対にお母さんは父さんによく似てるけど、別の人って根っこから分かってるって感じだったみたい」

     ぼやきとも聞こえる声色に幼馴染にも色々思うところはあるのだろうとトランクスは思う。彼とて、別の未来を進んでいる自分と出会うこともあったし、ベジータとブルマの息子ということで様々な声を聴くこともある。似ていないところも多いが、何かしら共通するものを持っている幼馴染の関係がありがたいことも多かった。

    「悟天、今日って金曜だろ。どうせなら泊まっていかないか? 最近お互いテストだなんだであんまり話せてなかったし」
    「あー、嬉しいかも。僕もそろそろウチからちょっと出た方がよさそうかなーって思ってたし」
    「? ……悟天、なんか困ってるのか?」
    「いや、大したことじゃないよ。ウチのお父さんがさ、最近修行から帰ってきたんだよね」
    「それはいいことだよな?」
    「一応ね」
    「一応って…悟天ってドライだなぁ」
    「いやだってさ、うちの父さん、お母さんのことスキ過ぎるからさ」
    「は?」

     トランクスの部屋のガラステーブルに肩肘をつき手のひらに顎を乗せる悟天の表情は小さく唇を尖らせていて、幼少のころの癖がまだ抜けていない。トランクスの母、ブルマ曰く、その表情が小さい頃の孫君にそっくりということらしいが、それは幼馴染のために言わないでおこうと思っているトランクスである。

    「僕がウチにいると父さんがお母さんとイイことできないから、なんかこう居心地悪くなるんだよね。お母さんはフツウなんだけど、父さんの方からなんていうの? 圧があるっていうかさぁ」
    「ご、悟空さんってそうなんだ……」
    「トランクスくんのところは平気? そういうのない?」
    「うちはそういうのはないかな…、多分」
    「まぁ、トランクスくんのうちおっきいもんねぇ。ベジータさんもブルマさんもふたりきりになろうと思ったらできちゃうのがいいのかも」
    「ご、悟天…?」

     何やら雲行きが怪しくなってきた気がする…。
     トランクスが悟天の名を呼ぶが彼の眼はどこか遠くを見つめている。が、いつの間にか部屋に入ってきた黒猫のタマが悟天の脚に身体を擦り寄せたことで彼の視線がタマへと行き、トランクスは空気が変わることを期待した。

    「タマが部屋に来るのは珍しいな。お腹がすいてるかもしれないし、ちょうどいいから僕達も何か食べにいこうか」
    「ねぇトランクス君」

     ひょいっと猫らしい身軽さでテーブルの上に乗ったタマの頭を撫でる悟天が口を開く。

    「僕ね、うちのお父さんが生き返って一緒にくらすようになってしばらくしてからさ、ウチの近くに猫がいるって思ってた時期があったんだよね」
    「猫?」
    「そ。猫。でも不思議なもんでさ、鳴き声しか聞いたことなかったんだよ。しかも夜にだけ鳴き声が聞こえることがあるの」
    「…………」
    「ちっちゃいころはさ、その猫を探してウチで飼えたらなーと思って父さんやお母さんに話したらまぁ見事にお母さんの平手打ちが父さんにクリティカルヒットしてさ」
    「ご、悟天。悟天っ、今日から日曜日くらいまでうちに泊まれっ。お前ちょっと多分なんか疲れてるんだよっ」

     そう。多分幼馴染は疲れている。
     孫悟天の父、孫悟空は修行大好き武闘家気質の天真爛漫で何物にも縛られないようでいて、ちょっとばかり厄介な愛妻家である。
     家族としての情は深い男だが、妻の夫であることと、妻の視線と意識を自分に向かないことを嫌う傾向があると気付いたのは、ブルマの何気ない呆れの混ざった日常会話と成長していく自分の感性からだ。

    「勝手に長い修行に出たくせにさー、ふらっと戻ってきて妻補充したいとかなんっつー我儘かって話だよねー」

     ぼやく悟天の手元で、真っ黒な黒猫のタマが小首をかしげて「にゃあ」と短く鳴いた。
     
     
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    TRAINING悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第1試合 『空』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge
    #悟チチ #Gochichi
    チチは亀仙流の使い手であり、その武は亀仙人も認める達人の域であった。
     まぁ今は孫もいる身であり、全盛期と比べればゆるやかに力量は落ちてはいるがちょっとした暴漢をこらしめるくらいは未だに朝飯前のことだ。

     とはいえ、チチは気は読めないし、気弾も打てない。夫や子供達が得意とするかめはめ波も打てないし、舞空術も使えない。

     舞空術については、悟飯からそれを学ぶ際に一緒にできるようになろうとねだらた。それよりもっと前には、悟天が生まれて少し落ち着いたころによければと、悟飯からも舞空術が使えるようになることを勧められたこともある。
     だがチチは穏やかに辞退した。
     舞空術は確かに身に着けることができれば便利だろうが、気を感じる、気を読むなどのセンスはどうも自分にはないと思ったし、夫が遺した筋斗雲があればチチだって空を移動できる。

     子供達はチチのそれに少し残念そうであったけど納得もしてくれたことがありがたかった。

     筋斗雲に乗って、空を行く。
     朝はまだ少しひんやりした空気の中。昼は、眩しい陽射しの中。夜は満点の空を見られる。
     それが自分の身ひとつでできれば、解放感はひとしおかもしれ 1609

    eastdragon_DB

    TRAINING悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第6試合 お題『アイス〜ICE〜』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi
    孫家の日常は多分どちらかといえば慌ただしいイメージかもしれない。

     それは確かに事実でもある。
     なにせ、パオズ山は緑豊かといえば聞こえはいいが、実際は大型肉食獣も住まう辺境という言葉が相応しく、人が住む場所といえば限られていて村と呼べる存在は山の麓の方にあり、そこから町、都会へとなるとずっと遠くなりそれなりの移動手段が必要だ。

     そんな場所で暮らしているものだから、ハイスクールへの登校にも時間がかかってしまう。孫家の長男、悟飯は時間にルーズではないがやはり朝はばたばたしがちだし、悟飯や悟天の父親である孫悟空が現世の人として戻ってきたため家事(主に食事面)が増えたため子供達の母であり、悟空の妻であるチチも所々は慌ただしい。
     しかしながら、子供達が成長すれば各々時間の使い方はうまくなっていくし、悟空に至っては修行に出てしまえば家を不在にする時間も長くなり心配はするものの家事の負担は減る。

     あと、これは知るものは孫家の面々くらいだが、農作業が終わり昼食も終わったあとの孫家は意外とのんびりとした時間が流れる。

     茶を淹れて、ゆっくりと飲む時間。
     それはチチがひとりで家を支えてい 2050

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    TRAINING悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第3試合 『春 〜Spring〜』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge
    #悟チチ #Gochichi
    茄子に胡瓜にトマト。アスパラ、カブ、ピーマン、春菊―――。

     春に種まき、ないしは苗植えを行う作物のことを考えながら、チチは起こされて湿り気を含んだ独特の匂いのする土の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。 

     トラクターで掘り起こされた土は黒々としていて、春の陽射しをぐんぐんと吸いこんでいるのが分かる。この、畑の「目覚める」様子がチチはとても好きだ。
     もちろん冬にも幾つか作物は育てていたが、やはり秋までに比べれば幾分縮小させていたし、この春に備えて手入れをし、休ませていた畑もある。

     雑草などで作った堆肥を含んだ土に器具を入れてひっくり返すときにわくわくすると言うと夫である悟空に笑われてしまったが、それはマイナスな意味ではなく「チチらしい」という明るくてどこか嬉しそうなそれであった。
     
     もう二度と会うことは叶わないと思っていた夫が現世の人となり、チチが生業として選んだ「農業」に加わったことで、孫家の農業はぐんと幅を広げた。
     トラクターなどを使って畑を耕していたとはいえ、パオズ山の土地はその内に大小様々な土をはらんでいることも多いし、また土も農作物を育てるにはまず土を育てて整えて 1425

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    TRAINING悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第2回戦 お題『マフラー』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi
    年齢を重ねてきたことで、ようやく見えてきたことがある。
     自分の中に流れる戦闘本能については純血のサイヤ人のそれということでどうしようもないとしても、闘いがない日常でもそれなりに生きていけて、それを悪くないと思えるのは「地球人」としての自分の一面で、近しい者に危害が加わることは良しとはしないあたり、色濃いことだ。

     穏やかな昼下がり。
     最近自分から望んでやるようになった農作業も終えての、自由時間。悟空には瞬間移動があるので西の都にでも行ってベジータと組手などすることも多いのだが、この日はパオズ山の自宅に居る。

    「ん。大丈夫だべ、ビーデルさ。ちゃあんと出来てるだよ」
    「本当ですか…?」
    「んだ。やり始めたばかりのおらよりも、ずうっと上手だ」

     この時間は窓から入ってくる陽光で陽だまりになるソファに、ビーデルとチチが並んで座っている。
     ビーデルの手には鈎針が握られていて、彼女はいつもは勝気な眉を少しばかりハの字にしながら手を動かし、ソファ前のテーブルの上に乗せられた籠の中の紫の毛糸玉がゆっくりと回る。編み物をしているのだ。

     ビーデルは悟飯のハイスクールのクラスメイトだが、それ 1835

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    第2回戦 お題『マフラー』

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    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi
    年齢を重ねてきたことで、ようやく見えてきたことがある。
     自分の中に流れる戦闘本能については純血のサイヤ人のそれということでどうしようもないとしても、闘いがない日常でもそれなりに生きていけて、それを悪くないと思えるのは「地球人」としての自分の一面で、近しい者に危害が加わることは良しとはしないあたり、色濃いことだ。

     穏やかな昼下がり。
     最近自分から望んでやるようになった農作業も終えての、自由時間。悟空には瞬間移動があるので西の都にでも行ってベジータと組手などすることも多いのだが、この日はパオズ山の自宅に居る。

    「ん。大丈夫だべ、ビーデルさ。ちゃあんと出来てるだよ」
    「本当ですか…?」
    「んだ。やり始めたばかりのおらよりも、ずうっと上手だ」

     この時間は窓から入ってくる陽光で陽だまりになるソファに、ビーデルとチチが並んで座っている。
     ビーデルの手には鈎針が握られていて、彼女はいつもは勝気な眉を少しばかりハの字にしながら手を動かし、ソファ前のテーブルの上に乗せられた籠の中の紫の毛糸玉がゆっくりと回る。編み物をしているのだ。

     ビーデルは悟飯のハイスクールのクラスメイトだが、それ 1835

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    TRAINING悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第4試合 『牛〜Cow〜』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge
    #悟チチ #Gochichi
    農家には農家のための情報誌や、ネットサイトがある。
     そのどちらもチチは確認するが、紙媒体をお茶を飲みながらのんびり眺めるのが好きだ。

     畑仕事を終えて、昼食後の後片付けも終わっての夕方までにある少しの落ち着いた時間に珈琲と軽い菓子をお供にダイニングテーブルで情報誌を拡げていると、向かいの席に悟空が座った。彼は市場から戻ってきたところでチチが持たせていた弁当の外に軽い軽食をとった後にシャワーを浴びたのでハーフパンツにタンクトップというかなりラフな格好でいる。

    「お、牛」
    「んだ、牛だな」

     首からタオルを下げた夫はチチが見ている雑誌にでかでかと掲載されている写真を見て眼を輝かせている。動物が好きな人だからなとチチは思ったが、なにやら期待に満ちた眼でこちらを見ているものだからチチは小首をかしげて見せた。

    「牛、飼うんか?」
    「飼わねぇだよ」

     短いこのやり取りであからさまにがっかりするものだから、その感情の分かりやすさに少し吹き出してしまう。

    「たまたまこの雑誌が酪農の特集もしてるだけだべ。そりゃあ興味がないことはねぇけんど、うちはふたりだけだしなぁ、牛や鶏とかの世話までは考 1013

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    TRAINING悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第9試合 お題『夢』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi
    思えばずっと、自分は彼女に待たせているばかりだった。

     幼い約束を信じて、少女から乙女となるまで待ち続けた彼女。
     天下一武道会の武舞台で夫婦となりパオズ山で生活はし始めたけど、修行のために家を出れば一人きりの朝と夜を迎えさせたのは片手どころか両手、両足の指を使っても数えきれないほど。それで泣かせてしまったのも数として口にすると後ろめたさでいたたまれなくなるのだが、そこに死別が割り込んでくるとなると、もうなんともさすがの悟空とて申し訳ないどころでは済まされないと反省したくなる。
     二度の死別から現世の人となり、そこから先で、また彼女の元から離れた。

     背中にかけられた声にまともに返せなかったのはともすれば彼女を道連れにしてしまいかねなかったからだ。
     今の孫悟空という存在はこの世、あの世、どちらの存在とも言い難く、地球という星と共に在るが、個として明確であることは短い時間でしか今は保てない。

     そうなることは悟空自身の意思であるし、悔やんではいない。
     自慢の息子達が家庭を持ち、仲間達のそれぞれの人生、可愛い孫娘が孫の世話をする時の流れを穏やかに、なつかしさと羨望のまなざしで見守 1238