キャンプといえばカレー。作り方は難しくないし、量も調整しやすく、おいしい。
悟空も幼い悟飯と一緒のキャンプでのメイン料理はカレーだった。
あまり難しい料理を普段しない者でも失敗が少ないのでメニューとして選ばれるそれだが、そもそも料理ができるチチが野外でカレーを作っている様子はなんだか不思議だが、同時にわくわくもする。
「なんか手伝うか?」
「いんや、大丈夫だべ。火を熾してもらえたから大分楽だべよ」
お外でこういう料理は慣れてないから失敗するかも、と心配げなチチだが、悟空から見れば自分がするよりも手際はいいし火力調整も鍋の位置をずらすなどをして行うなど細やかなところに関心している。
悟空はチチを誘ってキャンプに来た。悟天や、孫娘達は今回一緒ではない。
誘えば来ただろうが、悟空はチチと一緒に来たかった。
「ふたりだけでこんなお外でご飯作ったりするの、なんかちょっと不思議な感じがするだな」
あとは少し煮込むとなったカレーに、ようやくチチは一息つけるようになったらしい。
悟空が差し出した冷えた茶を受け取りおいしそうに飲む姿は、テントを設営した場所自体が木陰であるにも関わらずどこか彼には輝いて見える。
「なんかチチとゆっくりしてぇなぁって思ってよ。あー、でも都に行くとかの方がよかったか?」
「んー、それもきっと楽しいかもだけんど、こういうのもおらは好きだべ。てきぱきテントやってくれる悟空さとかカッコいいだよ」
「チチもな。ウチで作ってるみたいにあれこれできるの、すげぇかっこいい」
カレーが煮込まれるくつくつという音の中、穏やかな夫婦の会話を楽しむ。
自宅でもできることではあるが、木洩れ日やそよ風の中で少しだけいつもと違う空気がカレーと同じくらいご馳走だ。