一口で七年という年月は言葉で表せるが、実際に体感するとやはり長いものである。
死別していたその期間の間、孫悟空は界王星の元で修行に励んでいたわけだが、地球の孫家では次男悟天が生まれ、長男悟飯は勉学に励むなどの生活を送っていた。
それらの「日々」をチチは写真に撮り綺麗にアルバムに納めていたので、悟空はパオス山の我が家に帰ってきたあと息子らに説明されながら写真を見て、七年という自分がいない時間を、家族がどう送ったのかを知ることができた。
「これ、母さんが頭にのっけてんのって花かんむりか? なんか緑色だけど」
「ちがうよ、お父さん。それはね、オリーブのかんむりだよ」
「オリーブのかんむり?」
「そう! これはね、ボクの学校の運動会の写真。お母さんはホゴシャリレーでアンカーでね、バトンをもらったときは後ろの方だったんだけど、ぐんぐん、ぐんぐん他の人を抜いて行って一番でゴールしたんだよ。オリーブのかんむりは一等賞のしるしなんだよ」
「へぇ」
当時のことを思い出しているのだろう、悟天は頬を上気させ身振り手振りで、他の種目でも大活躍した母親のことを語る。それを微笑ましく思いながらも、やはり悟空としては少しばかり苦い感情を胸に覚える。
自分が選んだ死別だったとしても、やはり七年の間の出来事を自分だけが知らないのは地味にきつい。
「なにクチをへの字にしてるのかと思ったら、そったらなこと考えてたべか」
「そんなこととか言うなよぉ。思ったよりショックで、オラ自分でもびっくりしてんだぞ」
「悟空さ、意外と繊細だからなぁ。家族の中で自分だけ仲間ハズレな気持ちになったんだべ?」
「んー…」
「過ぎちまった時間はどうしようもねぇけんど、おら達にはこれからがあるだよ。悟空さ」
「これからか」
「んだ」
「ん。そうだな、これから一緒にいたらいいんだよな」
「んだべ」
会話と共に寝支度を終えたチチが、すでに悟空が横になっている寝台へと入ってくる。
悟空は、彼女の心根を表すようなすとんとまっすぐな黒髪に手を伸ばして触れた。
「かんむり」
「へ?」
「オリーブのかんむり、だっけか。似合ってたな」
「ああ、運動会のだべな。ほめてくれてるんなら嬉しいけんど、クチとがらせて言うセリフじゃあねぇだよ、悟空さ」
「だぁってよー、チチの黒髪に似合ってんだもんよぉ」
「はいはい。ありがとな。でも、おらは悟空さが作ってくれる花冠がいっとぅ好きだべよ」
「…………」
「そういうことだべ?」
「………おう」
その後、ちょっとした「スポーツ」が行われたのは言うまでもない。