チチはお菓子作りも得意だ。
子供達へのおやつや、世話になっている人々へのお土産として作ることが多く、意外にも悟空の空腹を満たすものとして作るということは少ない。小腹がすいたと甘えてくる夫に出すのは肉まんなどの点心のようなものが多くなる。
「おめぇさの小腹満たすなら砂糖菓子より肉っ気だべ?」
「いや、まぁ、そうかもしんねぇけど……」
蒸されてほかほかの肉まんにかぶりつく悟空はなぜか不満そうである。
チチとしてはハロウィン用の菓子を作りながら肉まんを蒸すという作業をしたので、そこで唇を尖らされているのは誠に遺憾である。
「おらは悟空さの嫁だけんど、悟飯や悟天のおっかあで、ブルマさとはありがたくもママ友だ。喜んでもらえるお菓子には腕を振るうってもんだべ。そこも悟空さが独り占めしちまうのはどうかと思うだよ」
「……独り占め、は、我慢すっから、オラもそれ食べたい」
「んだ。聞き分けのイイ子にはちゃあんとお菓子をあげるだよ」
にっこりと笑うチチは妻として夫をなだめられたと満足そうではあるが、菓子よりも甘い甘い、食欲よりも深いものを満たすものを虎視眈々と狙っている夫の真意までは気付くことができないでいた。