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    第47回/ジュン茨ワンドロワンライ
    @ juniba_1h

    お題:水彩絵の具🎨🩵+1h

    ※遅刻どころの騒ぎではないので、上記のような記載にしております💦
    何か問題などありましたら消します…!

    成人済みです。ジュンの思い出に触れた茨が、今度は二人の思い出を作りに行くお話です。
    ⚠︎過去など色々と捏造していますので、ご注意ください。

    #ジュン茨
    junThorn

    『水彩絵の具』 バサっと音を立てて眼前に広がったのは、眩いほどの青い空と青い海。
     真新しい白い壁の前、両手に持ったその青はそれはもうよく映える。
     
    「茨ぁ〜、こっちの箱は片せましたよ〜」
      
     のんびりと穏やかな声がして茨が目を向けると、隣の部屋へと続く扉からひょこっと飛び出したのは、またしても青だ。
     
    「あれ、どうしたんです?なんか見つけました……アッ?!」
    「ちょっと、いきなり大きい声出すな、ってオイ!」
       
     そうして飛び込んできたジュンは、茨が手にしていたそれを勢いよく取り上げたかと思うと、サッと後ろ手に持ちなおした。不審な目を向ける茨に、ジュンはそのまま顔も背けていく。
     
    「……なんで隠すんです?」
    「それは……だって、その、」
     
     何か不都合なのか、あうあうと言い淀む姿に痺れを切らした茨がひと睨みすると、ジュンは観念したように口を開いた。青い横髪のかかった頬がじわりと赤く染まる。
     
    「下手くそ、だし……」
    「え?それ、ジュンが描いたんですか?」
    「エッ」
     
     そこで、ジュンは自身が墓穴を掘ったことにようやく気付いたようだった。ヘナヘナと座り込むと、手にしていたそれもぱさりと床に滑り落ち、今度は茨の足元へと青が広がる。
     茨はそれを拾い上げ、今度こそじっくりと眺めると、そのままくるりと裏返した。
     
    「あぁ、確かに。ふふ、随分と豪快な字ですねぇ」
     
     ところどころ青が透けるそこには、鉛筆で『5年1組 漣ジュン』と書かれていた。
     ざらざらとした画用紙が書きづらかったのか、それとも当時は端からこうだったのか。少し形が崩れたそれは、今書き慣れているであろうものとは大違いの、不恰好なジュンのサインだった。
     
    「い、茨ぁ、あんまりまじまじと見ないでくださいよぉ」
    「どうしてです?この歳ぐらいの字なんて、みんなこんなものでしょう」
    「それはそうですけど……」
    「それに、空も、海も。自分は下手だとは思いませんでしたよ」 
    「へ?」
     
     たしかに、凪砂が気まぐれに見せてくる、誰だか知らない画家が描いた風景画なんかとは、きっと比べ物にならないのかもしれない。
     しかし、箱から何だと取り出して広げたそれを、茨は一目見て、綺麗な青だと思ったのだ。
     それこそ、ジュンによく似合いそうな、柔らかでいて、どこか溌剌とした青だと。
     
     茨はその場に腰を下ろすと、改めて両手に持つ画用紙をじっくり眺めはじめた。
     ふと左に気配を感じてそちらを見やると、座り込んでいたはずのジュンがすぐ側まで寄ってきていた。
     肩と肩が触れるほどに茨へと近付いたジュンは、するりと手を伸ばしたかと思うと、茨の手を覆うようにしてそっと海に触れ、そのまま茨の肩に頭を預けた。
     
    「……図工の授業で、今まで見た中で一番好きな景色を描けって言われて」
    「はい」 
    「それでオレ、思い浮かぶ景色なんて、それこそ灰色でしか描けないようなものしかなくて」
    「……はい」
     
     ぽつぽつとゆるやかに話を始めたジュンに、茨もひそやかに相槌をうつ。
     ちょうどふたりを包み込むように、昼下がりの暖かな陽が、まだカーテンの掛かっていない大きな窓から柔らかく差し込み、絵の具で描かれた空も海も、光を反射してより一層きらきらと眩しく輝く。
     穏やかな空気が流れる中、ジュンは続ける。
     
    「ただ、昔……佐賀美陣がさ、海辺のステージでライブしてた映像を見たことがあって、それが画面越しにすげぇ眩しかったのを思い出して」
    「……うん」
    「その時に、オレも、いやオレの方が真っ青な空と海を背景に、輝いてやるって思ったんです」
    「それで、この景色を……?」
    「はい。だから……実際に見た景色じゃなくて、これは子供の頃のオレが、いつか立ちたいって考えた夢の中の景色」
     
     ジュンはそう言うと、ざらざらとした画用紙を優しく撫でた。
     茨よりも少しだけ大きなその手の下、画面いっぱいに描かれた青い青い景色。
     この青は、まさしくジュンのためのステージなのだった。
     
     今考えると課題には思いっきり反してますねぇ。
     そう言って、ジュンはフハッと噴き出して笑う。そんなジュンを横目で見て、また画用紙へと視線を戻すと、今度は茨がかつてのジュンが描いた海をさらと撫でた。
     
    「茨?」
    「……ジュン、海、行きますか」
    「えっ?」
    「よし、行きましょう」
    「え、いやちょっ、ウワッ!」
     
     そう言っていきなり立ち上がった茨に、寄りかかっていたジュンはバランスを崩し、間抜けな格好のまま茨を見上げる。
     
    「ほら、早く立ってください」
    「い、いやでも茨!片付けも終わってないし」
    「そんなの、帰ったらまた二人でやればいいでしょう?明日もオフですし、なんとかなりますよ」
    「ほ、本当に行くんですか」
    「えぇ、今すぐ。ほら立って」
     
     ぐいと茨は画用紙を持っていない方の手で、ジュンの手を取り思い切り引き上げると、その手を握ったまま玄関へと足を向ける。
     その途中で、画用紙はくるりと巻いて元の状態に戻し、そっと段ボール箱へと戻された。
     
     玄関へと辿り着くと、茨は靴箱の上に置かれたキャップを、されるがままで引きずられてきたジュンの頭にぽすと乗せ、その青を一度隠した。自身もバケットハットを被ると、器用に足だけで靴を履き、ドアノブに手を掛ける。
     
    「さ、行きますよジュン」
    「ちょ、待ってくださいって!オレ靴履けてないから!」
    「はぁ……鈍臭いですねぇ」
    「いや茨が無理やり引っ張っるから!」 
    「なんなんですか、行きたくない?」
    「い、いやそう言うわけじゃねぇけど……!ホント、どうしたんすか茨ぁ」
     
     そう言いながらもワタワタと座って靴を履くジュンを見つめ、茨は自分でもらしくないことをしている自覚はあるのだ、とひとり思考を巡らす。
     それでも、先ほど茨の肩に頭を預け、切り取られた空と海を眺めるジュンを見て、その琥珀色の瞳いっぱいに、どこまでも広がる青を映し出す姿が見たいと、そう思ったのだ。
     都合の良いことに、最高の引っ越し日和だね!と今朝うえの二人から連絡があったように、今日は一日晴天。四月のはじめに海に行く人なんてほとんど居ないだろうから、昼過ぎとはいえ、きっと空も海も、茨とジュンのふたりじめだろう。
     
    「よ、よし。履けましたよ茨……て、どうしたんですか?今度は黙っちゃって」
    「……いえ、なんでもありません」
    「そうですか?よし、じゃあどうせ行くなら楽しみますよぉ〜!茨とふたりで海なんて、付き合ってからも行ったことねぇですし」 
    「まぁ、外に出かけること自体少ないですからね」
    「オレはお家デートも好きですけどねぇ」
    「……エロいことできるから?」 
    「ち、違います!それに、今日から家はデートって訳にいかないでしょ!」
    「それは確かにそうですね」
    「でしょ、じゃあほら」
     
     そうしてジュンは立ち上がると、ドアノブを握る茨の手を取り、自らガチャと音を立てて扉を開けた。
     外からの光が玄関に差し込み、振り返って茨を見やるジュンの瞳が微かにきらと輝く。
     
    「行くんでしょ、海!」
     
     そうして玄関を飛び出したジュンに、今度は茨が引っ張られる。
     手を引かれ、長い廊下をずんずんと楽しげに歩いていくジュンの後ろ姿を見て、茨はふと笑みをこぼした。
     
     あぁ、早く見たい。今は帽子に隠れた青が、風に揺れて波に混じるところを。前を見据える琥珀が、輝く空と海を映し、眩いほどの光に包まれるところを。
     
    「ねぇ、ジュン。絵の具と画用紙、買って行きましょうか」
    「え?」
    「俺も、一番好きな景色、描きたいなって」
     

     
     2023.05.06
     ジュン茨ワンドロワンライ
     お題:『水彩絵の具』
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    ・中夜

    DONEジュン茨ワンライ【ドレスアップ】

    王道クリスマスに浮かれるジュンくんと、同じく王道クリスマスに浮かれる茨さんの話。


    ※茨さんはアイドルじゃないときもメンズメイクをすることがあると思っています。顔面が効きそうな商談とか、何かの催し物にお呼ばれしたときとか…。なぜなら目的のためなら手段を選ばない人だから。
    雪に咲く華の、それはそれは朱きこと 綺麗な姿はいつも見ている。
     ファンデーションの上からまた何かの粉を叩いて普段からスベスベしている肌をより一層煌めかせ、目元にはジャケットに合わせたほんのりの青と、大きな瞳を引き締めるさりげないグレー。ばさばさ音を立てそうな睫毛は軽く流れを整えるだけでクルンと天を向き、仕上げにリップクリームをん〜ま…っと塗り込めば光の粒がぷるぷる弾けた。
    「……で? さっきからなんなんですか。鬱陶しい」
    「え〜。や、綺麗だなー…って」
    「は?」
    「なんでキレるんすか……」
    「いえ別に怒ってはいませんけど」
    「えぇ……。それにしちゃあ言葉の圧が強いっすよぉ〜?」
     共演者の女の人が持ち歩いているものよりはだいぶ小さなメイクポーチ、ポーチというよりは小銭入れにも見えるサイズのそれをポイッとハンドバッグに放り込んで、着込んだコートのボタンを留めながら茨は片眉を持ち上げた。
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